著者
日高 祥信 松元 光春 大迫 誠一郎 豊島 靖 西中川 駿
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.323-326, 1998-03-25
被引用文献数
15

遺跡出土骨同定のための基礎資料を得るために, 現生の鹿児島県産のタヌキとアナグマの上腕骨, 橈骨, 大腿骨および脛骨を用い, 骨幹中央部を計測学的ならびに組織計測学的に検索した.各骨の骨幹中央部の幅や前後径, 髄腔面積には種差がみられた.また, タヌキでは緻密骨の厚さと面積が, アナグマでは骨幹中央部の幅, 前後径および髄腔面積が, 全ての骨で雄が大きい傾向を示した.各骨間の組織構造に相違は認められなかったが, オステオン層板の形状に種差がみられた.即ち, タヌキでは3〜5層の層板からなるほぼ円形のオステオンが, アナグマでは3〜8層の層板からなる大小様々で, 円形もしくは楕円形を呈するオステオンがみられた.組織計測でオステオンの占める割合は, 全ての骨でタヌキが大きかった.タヌキ, アナグマの両種とも, 雄はオステオンの短径が大きく, オステオンの占める割合も大きい値を示した.一方, 雌ではオステオンの短径が小さく, その数は雄よりも多かった.以上の観察結果から, 両種の長骨の組織構造に種差および雌雄差のあることが分かり, 今後古代遺跡から出土する骨を同定する際の十分な基礎データになることが示唆された.
著者
高橋 均 豊島 靖子 山田 光則 小野寺 理
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

臨床的、病理組織学的にこれまで報告のない小脳変性症の3家系、3剖検例について臨床症状、および病理組織学的所見を検討した結果、それぞれが独自の臨床症状を呈し、中枢神経系の障害部位が明らかに異なり、1C2免疫染色によって陽性となる多数の核内封入体もまた、それぞれ特徴ある分布で存在していることを確認した。そのうち、1家系1剖検例でSCA17のホモ接合体であることが判明した。SCA17ホモ接合体の報告はこれまで全くなく、臨床病理学的所見と併せ、報告した。当研究所ではすでに、胎児脳cDNAライブラリーより単離された300個以上の新規クローンに基づく、増大CAG繰り返し配列を持つcDNAシークエンスとプライマーセットを開発しており、これを用いた未解明神経変性疾患の大規模スクリーニングシステムが確立している。未知の2家系についてはこれらのヒト脳で発現している増大ポリグルタミン鎖について増大の有無を確認したが、その異常伸長を認めたものはない。さらに未知の2家系中の1家系では通常のウエスタンブロッティング法により、1C2により染色される蛋白の存在を確認していたが、同サンプルの2次元電気泳動と2次元のウェスタンブロッティングを行うことで、原因蛋白(ポリグルタミンを有する)と考えられるスポットを複数同定するに至った。同定したいくつかのスポットを単離し、MALDI-TOF MS(当研究所備品)を用いてポリグルタミン鎖を持つペプチドの周辺アミノ酸配列を決定した。単離したスポットには短いポリグルタミン鎖を有する蛋白が含まれていた。