著者
安岡 良文 栗田 隆志 小竹 康仁 赤岩 譲 野並 有紗 元木 康一郎 宮崎 俊一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.SUPPL.3, pp.S3_69-S3_73, 2012 (Released:2013-09-25)
参考文献数
2

症例は動悸を主訴とする46歳,男性.発作時の心電図でnarrow QRS tachycardiaが記録されている.EPSではS1=600ms,S2=330msの心房期外刺激にて心室に2:1伝導する上室性頻拍が誘発された(心室の周期650ms,心房の周期320~350ms).房室伝導のブロック部位はHis束より近位で,心房興奮の最早期はCS入口部であった.2:1伝導の頻拍は連結期440~570msの範囲に限定されたPVCにより心房がリセットされずに1:1房室伝導に変化した.頻拍停止後の右室ペーシングにて頻拍中と同じsequenceで逆伝導を認めた.Para-Hisian pacingはAV nodal patternであった.頻拍はfast-slow型AVNRTであり,房室結節の下位共通路で2:1ブロックされていたものと診断した.PVCによる1:1伝導への変化は適度な連結期を有するPVCが下位共通路に侵入し,同伝導路内で順行性伝導とcollisionすることでERPの短縮が生じたため出現したと考えられた.
著者
小林 聖幸 野村 貴子 赤岩 譲 扇喜 智寛 扇喜 真紀 石川 賀代 小野 正文 正木 勉
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.194-200, 2023-04-01 (Released:2023-04-13)
参考文献数
22

症例は50歳代男性.全身倦怠感,皮膚掻痒感,褐色尿を主訴に受診し血液検査で総ビリルビンや肝胆道系酵素の上昇を認めた.肝炎ウイルスマーカーや自己抗体は陰性であった.第5病日に入院時はみられていなかった皮疹が四肢体幹に出現し,入院時の梅毒反応定性が陽性であったため,再度詳細に病歴を聴取したところ,入院2カ月前の性風俗産業利用歴が判明した.早期梅毒第2期及び早期梅毒性肝炎と診断したが,患者が近日中に転居予定で長期入院や頻回な外来通院は困難であったことから,2022年1月から本邦で使用可能となった早期梅毒には単回投与での治療が認められているベンジルペニシリンベンザチン水和物(BPB)筋注を用いた.皮疹や肝障害は速やかに改善し,梅毒は治癒した.本邦において早期梅毒性肝炎の治療にBPB筋注が用いられた報告はみられず,有効な治療法と考えられたため,文献学的考察を加えて報告する.