著者
田所 智子 谷 丈二 琢磨 慧 中原 麻衣 大浦 杏子 藤田 浩二 三村 志麻 小野 正文 森下 朝洋 正木 勉
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.107-119, 2022-03-01 (Released:2022-03-08)
参考文献数
27

免疫チェックポイント阻害薬(Immune Checkpoint Inhibitors;ICI)による免疫関連有害事象(immune-related Adverse Events;irAE)では従来の化学療法と異なるマネジメントが要求され,特に肝障害においてはステロイドや免疫抑制剤の開始時期や難治例への対応など様々な問題がある.当院においてICIを投与された370症例を対象としirAE特にirAE関連肝障害の臨床的特徴について検討した.全irAEの頻度は41.1%,Grade2以上のirAE関連肝障害の頻度は5.1%で,良好な腫瘍縮小効果を認め,他のirAEを合併した症例が多かった.ガイドラインに準拠した治療にて多くの症例が軽快したが,死亡例および難治例もあり,これらの治療過程ではサイトメガロウイルス感染症が問題となっていた.難治例について症例提示し,当院での治療方針について報告する.
著者
田所 智子 大浦 杏子 琢磨 慧 中原 麻衣 藤田 浩二 三村 志麻 谷 丈二 森下 朝洋 小野 正文 樋本 尚志 正木 勉
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.25-30, 2024-01-01 (Released:2024-01-10)
参考文献数
17

症例は50代女性.B型肝硬変,肝細胞癌に対して肝切除術後.術後15カ月頃より貧血(術前Hb10.9 g/dl→5.8 g/dl)および白血球数減少(術前7550 /μl→1160 /μl)の急激な増悪を認め,末梢神経障害も呈するようになった.全身薬物療法の施行歴はなく各種スクリーニング検査や骨髄検査を行うも原因不明であった.経過で血清銅低値,血清亜鉛高値が判明,他科にて亜鉛製剤が術後より長期処方されており亜鉛製剤による銅欠乏症と判断した.薬剤中止に加え純ココアによる銅補充を行い,術前と同程度への血球回復と末梢神経障害の改善を認めた.肝硬変患者における亜鉛補充療法は一般的となりつつあるが,亜鉛製剤は多量継続摂取により銅欠乏症の誘因になり得る.銅欠乏により生じる血球減少は鑑別が困難なことが多く,神経障害は非可逆性となる可能性がある.亜鉛製剤投与中の血清銅測定の必要性を周知する必要がある.
著者
小林 聖幸 野村 貴子 赤岩 譲 扇喜 智寛 扇喜 真紀 石川 賀代 小野 正文 正木 勉
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.194-200, 2023-04-01 (Released:2023-04-13)
参考文献数
22

症例は50歳代男性.全身倦怠感,皮膚掻痒感,褐色尿を主訴に受診し血液検査で総ビリルビンや肝胆道系酵素の上昇を認めた.肝炎ウイルスマーカーや自己抗体は陰性であった.第5病日に入院時はみられていなかった皮疹が四肢体幹に出現し,入院時の梅毒反応定性が陽性であったため,再度詳細に病歴を聴取したところ,入院2カ月前の性風俗産業利用歴が判明した.早期梅毒第2期及び早期梅毒性肝炎と診断したが,患者が近日中に転居予定で長期入院や頻回な外来通院は困難であったことから,2022年1月から本邦で使用可能となった早期梅毒には単回投与での治療が認められているベンジルペニシリンベンザチン水和物(BPB)筋注を用いた.皮疹や肝障害は速やかに改善し,梅毒は治癒した.本邦において早期梅毒性肝炎の治療にBPB筋注が用いられた報告はみられず,有効な治療法と考えられたため,文献学的考察を加えて報告する.
著者
平島 光臣 仁木 敏朗 正木 勉
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.30, no.172, pp.SJ55-SJ64, 2018-01-25 (Released:2018-01-25)
参考文献数
62

Galectin-9(Gal9)/Ecalectinは細胞由来の好酸球遊走因子として同定された。Gal-9はアレルギーモデル動物やアレルギー患者の好酸球集積や活性化に置いて役割を示している。なぜならGal-9はin vitroおよびin vivoで遊走活性を示すとともに色々な局面で活性化の機能も示すと考えられる。最近の研究では好酸球に限らず種々の細胞に対して分化・成熟、凝集、接着、細胞死などでの機能を果たしていることが示されている。現在、我々を含む多くの研究者によって生理的および病的な状態におけるGal-9機能について研究が進められている。本稿では種々の疾病モデル(過剰免疫や免疫低下状態など)でGal-9が治療的効果を示す結果を紹介するが、このことはGal-9が恒常性を保つことで優しい生理活性物質としての役割を演じていると予想される。