- 著者
-
赤川 元章
- 出版者
- 慶應義塾大学
- 雑誌
- 三田商学研究 (ISSN:0544571X)
- 巻号頁・発行日
- vol.34, no.6, pp.1-29, 1992-02-25
19世紀後半,オスマン帝国から独立したセルビアとブルガリアは,いずれも小規模営農中心の農業国であり,資本制的生産様式確立以前の原蓄段階にあるヨーロッパ後進国であった。両国は,農産物の輸出と工業製品の輸入とによって世界市場へと編成され,蓄積元本不足の下方,産業振興政策を採用したため,両国の工業化は,結局,急激な財政悪化とヨーロッパ先進国資本への依存を強めることとなった。これらの国では,通貨制度の整備と同時に,国家主導で中央銀行を創立し,農業主体の金融構造を形成する。だが産業金融については,国内資本のみでは不充分であり,この部面では外国銀行の進出が行われる。ドイツ金融資本は,セルビアにBerliner Handelsgesellschaft,ブルガリアにDisconto-Gesellschaftおよびその系列下のBanque de Creditの活動が行われたが,いずれの国でも,フランス銀行資本との競争でイニシアティブを確立しえなかった。