著者
渡邉 敬浩 菊地 博之 松田 りえ子 林 智子 赤木 浩一 手島 玲子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.69-76, 2015-06-25 (Released:2015-07-08)
参考文献数
6
被引用文献数
1 7

魚介類のメチル水銀濃度には,一部の魚種を除き,食品衛生法により暫定的規制値が設定されている.われわれは,この暫定的規制値への適合判定に用いることが可能なメチル水銀定量法として,フェニル誘導体化を介したGC-MS法を開発し報告した.本論文では,試料の脱脂操作の追加,フェニル誘導体化条件の変更,またPEG200との共注入を主とする大幅な改良を加えることにより,より操作性が高くGC-MSへの負荷が小さな分析法を開発した.改良した分析法の性能は,認証標準試料(4種)ならびに鮮魚(2種)を基材とする添加試料を,2機関に所属する分析者3名が計画的に分析して得た分析値に基づき評価した.その結果,全試料と分析者3名の組合せを通じ,本分析法の真度は85~98%,室内精度(RSD%)は1.6~8.1%と推定され,これらの推定値が厚生労働省のガイドラインに示された目標値を満たすことから,妥当性を確認した.
著者
赤木 浩一
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.197-200, 2004-08-25 (Released:2009-01-21)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

LC/MS/MSを用いたぶどう,ワイン,ジュース中のメピコートクロリドの迅速定量法を検討し,残留実態について調査した.試料の前処理は,抽出に水-メタノール (1 : 1) を,クリーンアップにはSDVBカートリッジを採用した.エレクトロスプレーイオン化ポジティブモードにより,プレカーサーイオンm/z 114 [N(CH3)2(CH2)5]+, プロダクトイオンm/z 98 [NCH3CH(CH2)4]+ により測定した. LC条件は,カラムにC18カラム (50 mm×2 mm i.d.), 移動相には,0.1% IPCC-MS7溶液-メタノール (60 : 40) を用いた.本法における添加回収率は5および50 μg/kgの添加で84.5~96.1%, 定量下限は1 μg/kgであった.ぶどう14検体のうち5検体,白ワイン14検体のうち3検体,赤ワイン36検体のうち1検体からメピコートクロリドが検出された.
著者
戸渡 寛法 宮﨑 悦子 赤木 浩一 中牟田 啓子 片岡 洋平 渡邉 敬浩
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.86-94, 2020-06-25 (Released:2020-07-01)
参考文献数
12

多くの魚に複数の種類の有機ヒ素化合物が含まれているが,化学形態ごとに毒性が異なることから,長期摂取による健康影響のリスクを評価するためには,形態別に濃度を定量する必要がある.本研究では,魚中のモノメチルアルソン酸(MMA),ジメチルアルシン酸(DMA),トリメチルアルシンオキサイド(TMAO),テトラメチルアルソニウム(TeMA),アルセノベタイン(AB),アルセノコリン(AC)を対象としたLC-MS/MSによる分析法を開発し,妥当性を確認した.また,福岡市内に流通する魚10種(計50試料)について総ヒ素濃度および各有機ヒ素化合物濃度を調査した.その結果,総ヒ素はすべての試料から0.53~25 mg/kgの範囲で検出され,カワハギからは8.3~25 mg/kgの範囲で検出された.イワシを除く9種においては,総ヒ素濃度に占める各化合物濃度のうち,AB濃度の割合が最も高かったが,イワシにおいてはAB濃度よりDMA濃度の割合が高く,総ヒ素濃度のうち16~24%を占めていた.養殖マダイにおける総ヒ素,ABおよびACの濃度は天然マダイより低かった.
著者
小西 友彦 赤木 浩一 畑野 和広
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.266-271, 2008-08-30 (Released:2008-09-11)
参考文献数
13
被引用文献数
3 5

LC/MS/MSによるヒト血清・尿中のヒヨスチアミンおよびスコポラミンの分析法について検討した.LC条件はODSカラムを用いて移動相に陽イオン分析用イオンペア試薬であるIPCC-MS3を添加し水-メタノール系でグラジエント分析した.イオン化はエレクトロスプレーイオン化ポジティブモードで行った.試料の前処理にはOasis HLBカートリッジおよびPSAカートリッジを用いた.血清・尿にヒヨスチアミンおよびスコポラミンを試料中濃度として0.2および10 ng/mLとなるように添加した場合の回収率は86.0~105%で,検出限界はいずれも0.02 ng/mLであった.本法を用いてチョウセンアサガオの喫食による中毒患者の血清4検体および尿3検体について分析した結果,血清からヒヨスチアミンおよびスコポラミンが0.45~3.5 ng/mL, 尿から170~670 ng/mLの範囲ですべての検体から検出された.
著者
赤木 浩一 畑野 和広
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.46-50, 2006-04-25 (Released:2008-08-04)
参考文献数
5
被引用文献数
20 23

LC/MS/MSを用いて,フグ組織およびヒト血清・尿中のテトロドトキシン(TTX)の迅速分析法を開発した.試料を2%酢酸で抽出し,フグ組織については水で希釈し,ヒト血清および尿については分子量分画5,000の遠心フィルターでろ過後,メタクリレート-スチレンジビニルベンゼンカートリッジを用いて精製した.フグ組織にTTXを0.1 mg/gと1 mg/g添加した場合の回収率は79∼90%,ヒト血清および尿に0.5 ng/mLと5 ng/mL添加した場合の回収率は93∼101%であった.検出限界は,フグ組織では0.01 mg/g,ヒト血清および尿では0.1 ng/mLであった.本法を用いて市販のフグの筋肉・皮・肝臓計30検体,フグ中毒による患者の血清7検体,尿5検体について分析した結果,すべての検体からそれぞれ0.04∼140 g/g,0.9∼1.8 ng/mLおよび15∼150 ng/mLの範囲でテトロドトキシンが検出された.