著者
鍋師 裕美 堤 智昭 植草 義徳 蜂須賀 暁子 松田 りえ子 手島 玲子
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.133-143, 2015-08-25 (Released:2015-09-03)
参考文献数
12
被引用文献数
13 19

平成23年3月に発生した福島第一原子力発電所事故(以下,原発事故)によって環境中に放出された放射性核種の1つである放射性ストロンチウム(90Sr)の食品中濃度の実態を調査した.その結果,セシウム(Cs)134および137がともに検出され,原発事故の影響を受けているとされた放射性Cs陽性試料(主に福島第一原子力発電所から50 ~250 km離れた地域で採取)では,40試料中25試料で90Srが検出された.一方,134Csが検出下限値未満であり,原発事故の影響を受けていないとされる放射性Cs陰性試料においても,13試料中8試料で90Srが検出された.今回の調査における放射性Cs陽性試料の90Sr濃度は,放射性Cs陰性試料の90Sr濃度や原発事故前に実施されていた環境放射能調査で示されている90Sr濃度範囲を大きく超えることはなかった.本研究の結果からは,放射性Cs陽性試料の90Sr濃度は過去のフォールアウトなどの影響と明確に区別ができない濃度であり,原発事故に伴う放射性Cs陽性試料の90Sr濃度の明らかな上昇は確認できなかった.
著者
手島 玲子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.134, no.1, pp.33-38, 2014-01-01 (Released:2014-01-01)
参考文献数
22
被引用文献数
3 6

In Japan, two patients who had been primary sensitized to hydrolyzed wheat protein (HWP) present in facial soap and subsequently experienced wheat-dependent exercise-induced anaphylaxis (WDEIA) after the ingestion of normal wheat products were reported in 2009 as first cases. Since that report, more than 1900 patients with such an allergy have been reported (through June 20, 2013) from various institutes all around Japan. Importantly, the majority of the patients used the same facial soap (Cha no Shizuku®) containing acid-hydrolyzed wheat protein (acid-HWP). The commercial acid-HWP contained in the facial soap (Glupearl 19S®, average molecular weight of 30-50 kDa) was produced from gluten after partial hydrolysis with hydrogen chloride at 95℃ for 40 minutes. In this presentation, I would like to summarize the mechanism of the induction of immediate hypersensitivity by HWP which has been reported by us and other European groups.
著者
植草 義徳 鍋師 裕美 片岡 洋平 渡邉 敬浩 蜂須賀 暁子 穐山 浩 堤 智昭 松田 りえ子 手島 玲子
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.43-48, 2016 (Released:2016-04-28)
参考文献数
10

The concentration of uranium (U-238) in various foods containing radioactive cesium (Cs-134 and Cs-137) derived from the Fukushima Daiichi nuclear power plant accident was determined using inductively coupled plasma mass spectroscopy. U-238 concentration in the foods that Cs-134 concentration was below the limits of detection and that was obtained before the accident, were also investigated. U-238 was detected in all 87 samples investigated and the concentration ranged from 0.038 to 130 mBq/ kg. In addition, no correlation was observed between the concentration of radioactive cesium and U-238. The range of U-238 concentration observed in the post-accident food samples was similar to that in the food samples that Cs-134 concentration was below the limits of detection and that in the pre-accident food samples, and to the literature values in foods previously reported. These results suggest that the U-238 concentration was not significantly different in the foods between before and after the accident.
著者
鍋師 裕美 堤 智昭 植草 義徳 松田 りえ子 穐山 浩 手島 玲子 蜂須賀 暁子
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.45-58, 2016-02-15 (Released:2016-02-15)
参考文献数
19
被引用文献数
10

牛肉,山菜類,果実類,キノコを用いて調理前後の放射性セシウム濃度を測定し,除去効果を検討した結果,調味液へ浸漬してから牛肉を乾燥させた場合や山菜類をあく抜きした場合では,調理前の80%以上の放射性セシウムが除去され,調味液への浸漬やゆで調理,及びこれらの工程後の水さらしが放射性セシウム除去に有効であることが示された。しかし,牛肉及び果実の単純な乾燥,果実類のジャム,焼きシイタケ,山菜類のてんぷらでは,放射性セシウムはほとんど食品から除去されなかった。調理法によっては,放射性セシウムの総量に変化はないものの,水分除去等により濃度が上昇することがあるため注意が必要である。
著者
小口 太一 大西 真理 近川 幸恵 児玉 貴志 鈴木 えみり 笠原 正輝 穐山 浩 手島 玲子 布藤 聡 日野 明寛 古井 聡 橘田 和美
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.41-46, 2009-02-25 (Released:2009-03-26)
参考文献数
5
被引用文献数
2 14

食品・飼料としての利用を目的とした遺伝子組換えテンサイ品種が開発されている.本研究では,テンサイを原料とした加工食品を遺伝子組換え食品の検査の対象にすべきか評価するため,テンサイ糖製品におけるDNA残存の有無を調査した.複数のテンサイ内在性遺伝子配列を標的としたPCR分析の結果,テンサイに含まれるDNAは製糖過程の早い段階で分解され,テンサイ糖製品中から分析可能な質および量のDNAは回収できなかった.
著者
渡邉 敬浩 菊地 博之 松田 りえ子 林 智子 赤木 浩一 手島 玲子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.69-76, 2015-06-25 (Released:2015-07-08)
参考文献数
6
被引用文献数
1 7

魚介類のメチル水銀濃度には,一部の魚種を除き,食品衛生法により暫定的規制値が設定されている.われわれは,この暫定的規制値への適合判定に用いることが可能なメチル水銀定量法として,フェニル誘導体化を介したGC-MS法を開発し報告した.本論文では,試料の脱脂操作の追加,フェニル誘導体化条件の変更,またPEG200との共注入を主とする大幅な改良を加えることにより,より操作性が高くGC-MSへの負荷が小さな分析法を開発した.改良した分析法の性能は,認証標準試料(4種)ならびに鮮魚(2種)を基材とする添加試料を,2機関に所属する分析者3名が計画的に分析して得た分析値に基づき評価した.その結果,全試料と分析者3名の組合せを通じ,本分析法の真度は85~98%,室内精度(RSD%)は1.6~8.1%と推定され,これらの推定値が厚生労働省のガイドラインに示された目標値を満たすことから,妥当性を確認した.
著者
志田(齊藤) 静夏 根本 了 手島 玲子 穐山 浩
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.72-75, 2016-06-25 (Released:2016-07-15)
参考文献数
8
被引用文献数
1

GC-MS/MSを用いた加工食品中の殺鼠剤テトラメチレンジスルホテトラミン分析法を開発した.テトラメチレンジスルホテトラミンを試料から無水硫酸ナトリウムで脱水しながら酢酸エチルで抽出し,アセトニトリル/ヘキサン分配およびグラファイトカーボン/PSA積層ミニカラムで精製した後,GC-MS/MSで定量した.加工食品10食品(赤ワイン,インスタントラーメン,うなぎ蒲焼き,餃子,チーズ,白菜キムチ,バター,ハンバーグ,ピザおよびレトルトカレー)を用いて,添加濃度0.1 mg/kgで5併行の添加回収試験を行ったところ,真度85~96%,併行精度(RSD) 7%以下の良好な結果が得られた.いずれの食品においても選択性に問題はなかった.これらの結果から,本法は加工食品中の高濃度のテトラメチレンジスルホテトラミン分析法として適用できるものと考えられた.
著者
穐山 浩 坂田 こずえ SPIEGELHALTER Frank 古井 聡 中島 安基江 橘田 和美 手島 玲子
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.65-70, 2010
被引用文献数
5

リアルタイムPCRを用いた未承認遺伝子組換えトウモロコシDAS59132系統(E32)の検知法を8機関によるバリデーション試験により評価した.試験試料は0%,0.05%,0.1%の3濃度粉末試料と0.01% の抽出DNA溶液試料で,各濃度試料を2点並行により併行再現性や室間再現性などを評価した.トウモロコシ内在性遺伝子の検出試験ではすべての試料において良好な増幅曲線が得られ,陽性と判定された.E32検出用試験では,すべての 0% 試験試料と1機関において 0.01% 試験試料2点の内1試料で2反応並行の1反応が陰性であった以外は,良好な増幅曲線が得られ陽性と判定された.検出限界は約0.01%と判断された.本研究により,E32の検知法の妥当性が確認された.
著者
今村 正隆 鍋師 裕美 堤 智昭 植草 義徳 松田 りえ子 前田 朋美 曽我 慶介 手島 玲子 蜂須 賀暁子 穐山 浩
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.239-247, 2018-10-25 (Released:2018-11-14)
参考文献数
4
被引用文献数
1

2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故により,放射性物質による食品汚染が発生した.地方自治体による出荷前放射性物質検査の有効性を検証するため,放射性セシウムが検出される蓋然性が高い食品・地域を重点的調査対象とした買い上げ調査を行った.2014年度は1,516試料,2015年度は900試料,2016年度は654試料を調査した結果,一般食品における放射性セシウムの基準値を超過した試料数は2014年度では9試料(0.6%),2015年度は12試料(1.3%),2016年度は10試料(1.5%)であった.放射性セシウムが検出される蓋然性が高い食品・地域を重点的に選択したが,基準値超過率は1%程度であったことから,各地方自治体における出荷前の検査体制は適切に整備され,かつ有効に機能していることが確認された.原木栽培や天然のきのこ,天然の山菜,野生獣肉などは放射性セシウム濃度が高い試料が存在したことから,継続的な監視が必要であると考えられた.
著者
手島 玲子 穐山 浩 奥貫 晴代 佐久嶋 順一郎 合田 幸広 小野寺 博志 澤田 純一 豊田 正武
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.188-193, 2000-06-25 (Released:2008-01-11)
参考文献数
14
被引用文献数
33 50

世界的に遺伝子組換え技術を利用して開発された農作物の実用化が進んでいるが, 実際の商品は組換え作物の後代交配種由来であることが多く, そのような作物における動物の免疫系への影響, 特にアレルギーとの関連について調べられた報告はない. 著者らは, 今回, アレルギー高感受性のB10Aマウス及びBNラットを使った実験において, 除草剤耐性遺伝子 (CP4-EPSPS) が導入された遺伝子組換え (GM) 大豆摂取が, 動物の免疫系に影響を及ぼすか否かの検討を行った. 同等の栄養成分を有する近親の非組換え (non-GM) 大豆を対照として用いた. GM, non-GM混餌飼料を摂取させたマウス, ラットとも両群の体重及び餌の摂取量に有意差はみられず, 15週投与後の各種主要免疫臓器の病理組織像においても, 両群とも異常は認められず, また大豆抽出物に対するIgE, IgG抗体価とも両群において差はみられなかった.
著者
植草 義徳 鍋師 裕美 堤 智昭 蜂須賀 暁子 松田 りえ子 手島 玲子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.177-182, 2014-08-25 (Released:2014-09-11)
参考文献数
6
被引用文献数
1 6

本研究では,食品を介した放射性物質の摂取量の実態を把握することを目的とし,マーケットバスケット(MB)試料(平成24∼25年)および陰膳試料(平成24年)を用いて,放射性セシウムの一日摂取量(Bq/day)および1年当たりの預託実効線量(mSv/year)を推定した.MB試料および陰膳試料から推定された放射性セシウムの年当たり預託実効線量の最大値は,それぞれ0.0094および0.027 mSv/yearであり,福島県近辺地域においてやや高い値を示す傾向が見られた.しかしながら,いずれの試料においても,放射性セシウムによる年当たり預託実効線量は,平成24年4月より施行された新基準値を定める根拠となった1 mSv/yearと比較して極めて小さい値であることが明らかとなった.
著者
吉松 嘉代 河野 徳昭 川原 信夫 穐山 浩 手島 玲子 西島 正弘
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.132, no.5, pp.629-674, 2012 (Released:2012-05-01)
参考文献数
412
被引用文献数
2 3 1

Developments in the use of genetically modified plants for human and livestock health and phytoremediation were surveyed using information retrieved from Entrez PubMed, Chemical Abstracts Service, Google, congress abstracts and proceedings of related scientific societies, scientific journals, etc. Information obtained was classified into 8 categories according to the research objective and the usage of the transgenic plants as 1: nutraceuticals (functional foods), 2: oral vaccines, 3: edible curatives, 4: vaccine antigens, 5: therapeutic antibodies, 6: curatives, 7: diagnostic agents and reagents, and 8: phytoremediation. In total, 405 cases were collected from 2006 to 2010. The numbers of cases were 120 for nutraceuticals, 65 for oral vaccines, 25 for edible curatives, 36 for vaccine antigens, 36 for therapeutic antibodies, 76 for curatives, 15 for diagnostic agents and reagents, and 40 for phytoremediation (sum of each cases was 413 because some reports were related to several categories). Nutraceuticals, oral vaccines and curatives were predominant. The most frequently used edible crop was rice (51 cases), and tomato (28 cases), lettuce (22 cases), potato (18 cases), corn (15 cases) followed.