著者
植草 義徳 鍋師 裕美 片岡 洋平 渡邉 敬浩 蜂須賀 暁子 穐山 浩 堤 智昭 松田 りえ子 手島 玲子
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.43-48, 2016 (Released:2016-04-28)
参考文献数
10

The concentration of uranium (U-238) in various foods containing radioactive cesium (Cs-134 and Cs-137) derived from the Fukushima Daiichi nuclear power plant accident was determined using inductively coupled plasma mass spectroscopy. U-238 concentration in the foods that Cs-134 concentration was below the limits of detection and that was obtained before the accident, were also investigated. U-238 was detected in all 87 samples investigated and the concentration ranged from 0.038 to 130 mBq/ kg. In addition, no correlation was observed between the concentration of radioactive cesium and U-238. The range of U-238 concentration observed in the post-accident food samples was similar to that in the food samples that Cs-134 concentration was below the limits of detection and that in the pre-accident food samples, and to the literature values in foods previously reported. These results suggest that the U-238 concentration was not significantly different in the foods between before and after the accident.
著者
片岡 洋平 渡邉 敬浩 林 恭子 穐山 浩
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.269-274, 2018-12-25 (Released:2019-01-09)
参考文献数
21
被引用文献数
3 5

チョコレートとココアは,カカオ豆から作られる主な製品である.これらの製品は,土壌などの環境に由来するカドミウム(Cd)を含むことが知られている.Cd濃度を調査するために,国内流通していたダークチョコレート,ミルクチョコレート,ホワイトチョコレート,ココア粉末製品を購入した.分析には誘導結合プラズマ質量分析計による妥当性確認された分析法を用いた.チョコレートおよびココア粉末中のCd濃度は,それぞれ0.00021~2.3および0.015~1.8 mg/kgの範囲であった.各製品のCd濃度を製品のラベルに記載されているココア固形分の含有量に基づき評価した結果からは,Cd濃度とココア固形分の含有量との間に弱い正の相関があることが示された.調査した180種類のチョコレート製品のうち8製品,140種類のココア粉末製品のうち26製品中のCd濃度は,EUが設定した基準値を超過していた.
著者
渡邉 敬浩 菊地 博之 松田 りえ子 林 智子 赤木 浩一 手島 玲子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.69-76, 2015-06-25 (Released:2015-07-08)
参考文献数
6
被引用文献数
1 7

魚介類のメチル水銀濃度には,一部の魚種を除き,食品衛生法により暫定的規制値が設定されている.われわれは,この暫定的規制値への適合判定に用いることが可能なメチル水銀定量法として,フェニル誘導体化を介したGC-MS法を開発し報告した.本論文では,試料の脱脂操作の追加,フェニル誘導体化条件の変更,またPEG200との共注入を主とする大幅な改良を加えることにより,より操作性が高くGC-MSへの負荷が小さな分析法を開発した.改良した分析法の性能は,認証標準試料(4種)ならびに鮮魚(2種)を基材とする添加試料を,2機関に所属する分析者3名が計画的に分析して得た分析値に基づき評価した.その結果,全試料と分析者3名の組合せを通じ,本分析法の真度は85~98%,室内精度(RSD%)は1.6~8.1%と推定され,これらの推定値が厚生労働省のガイドラインに示された目標値を満たすことから,妥当性を確認した.
著者
穐山 浩 五十鈴川 和人 張替 直輝 渡邊 裕子 飯島 賢 山川 宏人 水口 岳人 吉川 礼次 山本 美保 佐藤 秀隆 渡井 正俊 荒川 史博 小笠原 健 西原 理久香 加藤 久 山内 淳 高畑 能久 森松 文毅 豆越 慎一 村岡 嗣朗 本庄 勉 渡邉 敬浩 坂田 こずえ 今村 知明 豊田 正武 松田 りえ子 米谷 民雄
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 = Journal of the Food Hygienics Society of Japan (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.120-127, 2004-06-25
参考文献数
16
被引用文献数
2 12

特定原材料である牛乳タンパク質測定のELISA法の確立のために10機関による検証評価試験を行った.カゼイン,β-ラクトグロブリンおよび牛乳タンパク質を測定する3種類のELISA法とも同時再現性はおおむねCV値10%以下と良好であった.10機関で牛乳標準溶液を添加した5食品の各食品抽出液を分析した際の平均回収率は,3種類のELISA法とも数種類の食品抽出液を除きおおむね40%以上であった.しかしカゼインキットでは,回収率が極端に低いソースの抽出液の場合,抽出液のpHを中性に調整した後に測定すると回収率が改善された.また牛乳エライザキットでは,クッキー,シリアル,パスタソースの抽出液において,回収率が低かったが,プレート上の抗体量を増加させることにより改善された.3種類のELISA法の検出限界は,測定溶液の濃度で1 ng/mLであった.
著者
山口 昭弘 清水 香織 三嶋 隆 青木 信太郎 服部 秀樹 佐藤 秀隆 上田 信男 渡邉 敬浩 日野 明寛 穐山 浩 米谷 民雄
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.146-150, 2006-08-25 (Released:2008-08-04)
参考文献数
9
被引用文献数
8 11

遺伝子組換え(GM)パパイヤの同定においてわが国の公定法のPCR法を改良し,簡便かつ迅速な検知法を開発した.凍結乾燥処理を省略し,生果肉から直接シリカゲル膜タイプの市販キットを用いてDNAを抽出した.GMパパイヤ特異的遺伝子およびパパイヤ内在性のpapain遺伝子を同時に増幅するduplex PCR法を開発するために,papain遺伝子に対する公定法のPCR増幅産物(211 bp)の内側に,新たなプライマーペア papain 2-5'/3' を設計した.GMパパイヤ検出用のプライマーペアには公定法と同一のものを用いた.これらのプライマーペアを同一チューブ内に共存させて増幅させる duplex PCR 法を行った後,増幅産物をアガロースゲル電気泳動またはマイクロチップ電気泳動により同時検出した.本法により簡便,迅速なGMパパイヤの同定が可能であった.
著者
戸渡 寛法 宮﨑 悦子 赤木 浩一 中牟田 啓子 片岡 洋平 渡邉 敬浩
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.86-94, 2020-06-25 (Released:2020-07-01)
参考文献数
12

多くの魚に複数の種類の有機ヒ素化合物が含まれているが,化学形態ごとに毒性が異なることから,長期摂取による健康影響のリスクを評価するためには,形態別に濃度を定量する必要がある.本研究では,魚中のモノメチルアルソン酸(MMA),ジメチルアルシン酸(DMA),トリメチルアルシンオキサイド(TMAO),テトラメチルアルソニウム(TeMA),アルセノベタイン(AB),アルセノコリン(AC)を対象としたLC-MS/MSによる分析法を開発し,妥当性を確認した.また,福岡市内に流通する魚10種(計50試料)について総ヒ素濃度および各有機ヒ素化合物濃度を調査した.その結果,総ヒ素はすべての試料から0.53~25 mg/kgの範囲で検出され,カワハギからは8.3~25 mg/kgの範囲で検出された.イワシを除く9種においては,総ヒ素濃度に占める各化合物濃度のうち,AB濃度の割合が最も高かったが,イワシにおいてはAB濃度よりDMA濃度の割合が高く,総ヒ素濃度のうち16~24%を占めていた.養殖マダイにおける総ヒ素,ABおよびACの濃度は天然マダイより低かった.
著者
渡邉 敬浩 片岡 洋平 荒川 史博 松田 りえ子 畝山 智香子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.7-16, 2020-02-25 (Released:2020-04-24)
参考文献数
15
被引用文献数
1

トータルダイエットスタディ(TDS)は,食事を介した化学物質の摂取量推定に有効な方法論であり,有害物質の摂取量推定にも用いられる.TDSにおける試料の分析には,摂取量推定の目的に合致した方法を選択すると同時に,その妥当性を確認することが勧告されている.しかし,妥当性確認に必要な具体的な考え方や方法論は示されていない.そこで本研究では,まず摂取量推定の目的で使用される分析法の性能を評価可能な試料(Samples to estimate methods performance; SEMPs)を開発した.次いでヒ素やカドミウム,鉛を含む元素類の摂取量推定の目的で使用する一斉分析法の妥当性を確認するために,SEMPsにおける各元素濃度を明らかにした.さらに,明らかにした各元素濃度を考慮した添加量を決定し,添加試料と未添加試料のそれぞれを5併行分析した結果から真度と併行精度を推定する,分析法の性能評価方法を確立した.性能評価によって推定した真度と併行精度をCodex委員会のProcedural Manualに収載されているガイドラインに基づき設定した性能規準と比較した結果,検討した一斉分析法が対象とする14元素と14食品群の組合せの多くで性能規準の値を満たしたことから妥当性を確認した.
著者
片岡 洋平 渡邉 敬浩 林 恭子 穐山 浩
出版者
[日本食品衛生学会]
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.269-274, 2018 (Released:2019-05-27)

チョコレートとココアは,カカオ豆から作られる主な製品である。これらの製品は,土壌などの環境に由来するカドミウム(Cd)を含むことが知られている。Cd濃度を調査するために,国内流通していたダークチョコレート,ミルクチョコレート,ホワイトチョコレート,ココア粉末製品を購入した。分析には誘導結合プラズマ質量分析計による妥当性確認された分析法を用いた。チョコレートおよびココア粉末中のCd濃度は,それぞれ0.00021~2.3および0.015~1.8mg/kgの範囲であった。各製品のCd濃度を製品のラベルに記載されているココア固形分の含有量に基づき評価した結果からは,Cd濃度とココア固形分の含有量との間に弱い正の相関があることが示された。調査した180種類のチョコレート製品のうち8製品,140種類のココア粉末製品のうち26製品中のCd濃度は,EUが設定した基準値を超過していた。
著者
片岡 洋平 渡邉 敬浩 白政 優子 松田 りえ子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.146-151, 2012-06-25 (Released:2012-06-30)
参考文献数
14
被引用文献数
3 3

市場に流通するタコ,イカ,ハマグリ,アサリおよびチョコレート中のカドミウム濃度の実態を調査した.食品中の金属に関する試験法の妥当性評価ガイドライン(食安発第0926001号)に従って妥当性を確認した方法により,分析を行った.調査した40試料の海産食品中,31試料から本調査で設定した定量下限の1/2濃度となる0.025 mg/kgを超えるカドミウムが検出されたが,Codexが定める基準値(2 mg/kg)を超過した試料はなかった.全調査試料中の最大濃度は,タコでは0.19 mg/kg,イカでは0.18 mg/kg,ハマグリでは0.38 mg/kg,アサリでは0.16 mg/kgであった.またチョコレートでは,30試料中21試料から0.025 mg/kg以上のカドミウムが検出され,最大値は0.54 mg/kgであった.
著者
片岡 洋平 渡邉 敬浩 林 恭子 小澤 蘭 滝澤 和宏 穐山 浩
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.275-280, 2017-12-25 (Released:2017-12-28)
参考文献数
9
被引用文献数
4

ミネラルウォーター類(MW)製品中の六価クロム分析法を構築し,その性能を評価し妥当性を確認した.さらに定量下限値を推定した本法を用いて,2016年に市場流通していたMW類150製品における六価クロム濃度の実態を調査した.実態調査に併せて分析した添加試料からは93~107%の範囲で回収率が得られ,妥当性確認した分析法の適用性が高いことが示された.調査した150製品のうち65製品から六価クロムが検出され,検出率は43%であった.また,検出された濃度の最小値は0.0001mg/L,最大値は0.0019mg/L,中央値は0.0003mg/Lであった.0.0001~0.0002mg/Lの範囲で六価クロムが検出される製品数が最も多かった.本研究において実施した実態調査では,食品衛生法により設定されている規格値(0.05mg/L)を超過する濃度で六価クロムが検出される製品は発見されなかった.
著者
渡邉 敬浩 笠間 菊子 和久井 千世子 渋谷 雅明 松木 容彦 穐山 浩 米谷 民雄
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 = Journal of the Food Hygienics Society of Japan (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.281-288, 2003-12-25
被引用文献数
10 12

遺伝子組換え(GM)食品定性検査方法を用いて得られる測定結果の信頼性確保には,精度管理が不可欠である.そこで当該検査方法を対象とした外部精度管理方法を検討することを目的とし試験を実施した.共通未知試料を同一時期に分析するよう14検査機関に依頼し,回収した報告を基に詳細な解析を行った.その結果,検査環境の保全が不十分であることが原因と考えられる擬陽性判定が認められた.また,NewLeaf PlusおよびNewLeaf Yを対象とした検査方法においては,増幅効率の差異や検出にかかわる諸条件が要因となり,擬陰性判定が下される可能性があることが示唆された.全体としてはおおむね解析結果が予想された結果に一致したこと,また対象検査法において結果に影響を与える要因について示唆することができたことから,本研究で用いられた試験方法が外部精度管理方法として適当であると考えられた.