著者
赤澤 史郎
出版者
立命館大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

本研究の成果は、三部に分かれる。第一部は「第二次大戦後の戦争犠牲者の補償問題」であり、戦後初期から1980年代末までの民間人戦争犠牲者の補償問題の推移を追ったものである。ここでは、日本における戦争犠牲者の補償が民間人をも含めた国民平等主義に立たなかった理由として、その補償政策の立案と実施が1950年代の逆コースの状況の中でおこなわれたためであったことを指摘している。とはいえ1960年代には民間人戦争犠牲者への補償要求運動が生じ、この運動は1970年代には一定の盛り上がりを見せて,議会にも野党の提案で戦時災害援護法案が上程されるが、1980年代に運動は退潮に向かうと述べられている。第二部は「名古屋空襲訴訟」であり、戦争末期の名古屋空襲で負傷した三人の民間人女性が、民間人に対して補償がないのは法の下の平等に反すると訴えた裁判について論じたものである。この裁判は1976年から1987年まで続いたものだが,ここでは訴訟の経過を記すとともに、その争点の性格を説明し,さらに訴訟の歴史的な位置づけに言及している。第三部は「戦時災害保護法小論」であり、第二次世界大戦中から戦後初期にかけて、民間人戦災者に対する援護法として存在した同法を扱ったものである。ここでは戦時災害保護法がその運用状況からすると、事実上補償主義に傾斜した性格であることを説明し、さらに戦災への補償の性格の強い給与金として、膨大な金額が支払われていた事実を指摘している。以上の三部によって,第二次世界大戦中から1980年代までの民間人戦争犠牲者の補償問題の推移を、全体的に明らかにしようとしたものである。
著者
徐 勝 赤澤 史郎 生田 勝義 市川 正人 大久保 史郎 松本 克美
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

07年度は、本研究課題にかかわり、2回の日韓共同研究会および過去3年間にわたる共同研究の成果刊行を行った。まず、07年6月22、23日に第5回日韓共同研究会「現代日本と韓国の情報化・情報通信技術(IT)の発展と法的問題」(立命館大学BKCエポック21)を開催した。本共同研究は、1990年代半ば以後の日韓の情報化の到達点と法的諸問題を総合的に検討することを目的に、以下のような日韓の研究者が報告・討論を行った.第一部「インターネットにおける表現の自由と制限」(22日)では、(1)市川正人(立命館大学)「ネットワーク社会における表現の自由」、(2)黄ソンギ(東国大学校)「韓国のIT発展と民主主義」など、第二部では杉村豊誠(日本電信電話株式会社)「日本のIT企業の法的対応」、朴ソンホ((株)nhn)「韓国社会のIT発展と企業の対応」など、第三部では、(2)園田寿(甲南大学)「わが国におけるサイバー犯罪と刑事法制」、(3)黄承欽(誠信女子大学校)「インターネットポータルサービスによる名誉毀損の被害救済システム」など、2日間で計11本の報告を行い、資料集を作成・配布した。08年2月14日には第6回日韓共同研究「現代韓国の民主主義の新展開」(韓国・ソウル大学校湖厳会館)を開催した。本共同研究では「現代韓国の民主主義の評価」として李国運(ハンドン大学校)「盧武鉉政権下の民主改革の法的評価」、丁海亀(聖公会大学校)「盧武鉉政権下の民主改革の政治的評価」などの報告を行い、また05年〜07年度までの本共同研究の総合的評価を行うとともに、継続研究の今後の展望および計画について議論・検討を行った。また『立命館国際地域研究』26号(08年2月)に特集として第4回日韓共同研究の報告論文4本などが掲載された。成果刊行としては、過去5回の日韓共同研究会で報告された45本の論文から15本を加筆・修正した上で編集し、『現代韓国民主主義の新展開』(御茶の水書房、08年3月)として出版した。第5回共同研究会の成果刊行は、08年秋に刊行予定である。