著者
斎藤 尚生 三澤 浩昭 佐藤 夏雄 赤祖父 俊一 Sun W. Deehr C. S.
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.233-258, 2009-11-30

地磁気嵐とその発生起源である太陽現象をペアとして捉える太陽・地球電磁関係物理学の手法に従い,従来のフレア型急始(Sc)嵐,コロナホール型緩始(Sg)嵐,フィラメント消失型Sc嵐のほかに,本研究では新たに次のような赤道横断磁気ループ型Sc嵐が見出された. 太陽の赤道を跨ぐ大きな磁気ループ(Transequatorial loop:TELと略称)が急激に膨張,爆発して,大規模なコロナ質量放出(CME)を発生させる事実は半世紀以上前から観測され,太陽のふち(limb)現象として,太陽物理学分野で大きく注目されてきた.このTEL型爆発は太陽のふち(limb)で頻繁に観測されるからには,太陽正面でも発生するはずであると推定して調べたところ,ディスク中心付近でかすかな線条構造が認められてから数日後に,地球で磁気嵐が発生していることが見出された.この線条付近ではフレアもフィラメントもコロナホールも認められなかったことから,これは新しいTEL型Sc嵐であると認定した.このようなTELは南北両半球にある黒点群または黒点消滅後の残留磁域とつながっているので,磁気ループの軸磁場の方向が求められる.この軸磁場は惑星間磁場(IMF)の強いBz成分を生むので,その地磁気嵐構成への影響について調べた.TEL型Sc嵐については,将来様々な興味深い研究成果が期待されるが,現時点で考えられる様々な課題についての提言がなされた.