著者
太田 朝子 林 真未 宮﨑 明子 前田 哲生 越智 沙織
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.187-193, 2022 (Released:2022-12-07)
参考文献数
13

症例 1 は81歳,男性。下腿の貨幣状湿疹に対して外用加療中であった。COVID-19 ワクチン初回接種翌日に瘙痒を伴う顔面紅潮や躯幹四肢の紅暈を伴う漿液性丘疹が出現,既往の下腿湿疹が増悪し,血清 TARC 値は 1,383 pg/ml であった。抗ヒスタミン薬内服とステロイド外用 2 週間後に皮疹は治癒し,血清 TARC 値は正常化した。症例 2 は22歳,女性。初診 3 週間前より両側足首の湿布接触皮膚炎に対する外用治療中,COVID-19 ワクチン 2 回目接種後に足背の瘙痒と紅斑が出現,顔面・躯幹四肢に播種状紅斑丘疹が拡大し,血清 TARC 値は 2,090 pg/ml であった。プレドニゾロン 15 mg/日内服,ステロイド外用10日後に紅斑はほぼ色素沈着となり,血清 TARC 値は正常化した。症例 3 は74 歳,女性。喘息の既往あり。急性胆管炎に対し抗菌薬を投与した10日後,COVID-19 初回ワクチンを接種し, 2 日後に接種部位同側の四肢に瘙痒を自覚,躯幹四肢に播種状紅斑が出現,血清 TARC 値は 3,862 pg/ml であった。ステロイド外用 3 週間後に紅斑は退色し,血清 TARC 値は正常化した。 過去にワクチン接種後に TARC 高値を伴った皮疹の報告例はなく,本症例は患者背景やワクチンが関与し,Th2 優位な皮膚免疫応答を誘導した可能性が示唆された。 (皮膚の科学,21 : 187-193, 2022)
著者
越智 沙織 寺前 彩子 進藤 翔子 田原 真由子 高橋 彩 深井 和吉 鶴田 大輔 片山 一朗
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.266-273, 2017 (Released:2018-01-06)
参考文献数
14

乾燥性皮膚疾患に対して,肌着が皮膚病変・自覚症状・生活の質に与える影響を主観・客観的に解析した。乾燥性皮膚疾患を有する20歳以上の患者33名を対象とし,被験試料はグンゼ株式会社が販売している完全無縫製の肌着(メディキュア®)を使用し,開始後14日後および28日後に評価した。紅斑・乾燥・掻破痕は14日および28日後共に有意な改善が認められた。結節・苔癬化は28日後に有意な改善が認められた。経表皮水分蒸散量は28日後に有意に減少した。そう痒による VAS score は14日および28日後に,疼痛による VAS score は28日後に有意に減少した。DLQI score は14日後・28日後に有意に減少した。研究終了まで明らかな有害事象は認められなかった。本研究品の肌着を着用後,各皮膚病変はいずれも有意に改善し,また,経表皮水分蒸散量・VAS・DLQI score も有意に低下した。以上の結果より,本研究品の肌着が,皮膚との摩擦を軽減することで,バリア機能を改善させ,その結果,乾燥によるそう痒や疼痛・皮膚病変も軽快し,患者の日常生活の満足度が高くなったと考える。よって,乾燥を有する皮膚には,日常のスキンケアに加え,縫い目や肌着の素材などを考慮し,刺激の少ない肌着を選ぶことが重要であることが示唆された。(皮膚の科学,16: 266-273, 2017)
著者
越智 沙織 髙橋 彩 片山 一朗
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.274-283, 2018 (Released:2019-03-30)
参考文献数
14

高齢者の乾皮症に対する化粧品保湿剤の影響を解析した。2017年 2 月から 4 月の間,大阪大学医学部附属病院を受診した60歳以上の乾皮症患者30例を対象とし,常盤薬品工業株式会社が販売しているノブ○R スキンクリームD(以下,保湿クリーム),コントロールとして白色ワセリン(以下,ワセリン)を使用した。左右の下腿に,保湿クリームとワセリンを塗り分け,外用開始前および 4 週間外用後に評価した。 4 週間外用継続できた29例は明らかな有害事象を認めなかった。外用 4 週後の皮膚病変スコア・瘙痒 VAS は外用前と比較して,両群ともに全項目で有意に低下した。外用 4 週後の角層水分量は保湿クリーム・ワセリン群ともに外用前と比較し有意に増加し,ワセリン群と比較し保湿クリーム群で有意に高値であった。外用 4 週後の経表皮水分蒸散量は保湿クリーム群のみ有意に低下した。次に 250 Hz および 5Hzの経皮的電気刺激に対する知覚応答性閾値は保湿クリーム群がワセリン群と比較して有意に高値であった。さらに角層における SH 基染色強度と重層剥離度は保湿クリーム群のみ有意に減少した。以上より,保湿クリームは皮膚病変・瘙痒だけでなく,バリア機能・角層機能を有意に改善させた。保湿剤は多様化しているが,医薬品だけでなくノブ○R スキンクリームDのような化粧品も保湿効果が高く,使用感が良ければ,乾皮症の治療効果を高めることが示唆された。 (皮膚の科学,17 : 274-283, 2018)