著者
越智 沙織 寺前 彩子 進藤 翔子 田原 真由子 高橋 彩 深井 和吉 鶴田 大輔 片山 一朗
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.266-273, 2017 (Released:2018-01-06)
参考文献数
14

乾燥性皮膚疾患に対して,肌着が皮膚病変・自覚症状・生活の質に与える影響を主観・客観的に解析した。乾燥性皮膚疾患を有する20歳以上の患者33名を対象とし,被験試料はグンゼ株式会社が販売している完全無縫製の肌着(メディキュア®)を使用し,開始後14日後および28日後に評価した。紅斑・乾燥・掻破痕は14日および28日後共に有意な改善が認められた。結節・苔癬化は28日後に有意な改善が認められた。経表皮水分蒸散量は28日後に有意に減少した。そう痒による VAS score は14日および28日後に,疼痛による VAS score は28日後に有意に減少した。DLQI score は14日後・28日後に有意に減少した。研究終了まで明らかな有害事象は認められなかった。本研究品の肌着を着用後,各皮膚病変はいずれも有意に改善し,また,経表皮水分蒸散量・VAS・DLQI score も有意に低下した。以上の結果より,本研究品の肌着が,皮膚との摩擦を軽減することで,バリア機能を改善させ,その結果,乾燥によるそう痒や疼痛・皮膚病変も軽快し,患者の日常生活の満足度が高くなったと考える。よって,乾燥を有する皮膚には,日常のスキンケアに加え,縫い目や肌着の素材などを考慮し,刺激の少ない肌着を選ぶことが重要であることが示唆された。(皮膚の科学,16: 266-273, 2017)
著者
林 綾乃 深井 和吉 小林 征洋
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.209-212, 2020 (Released:2020-05-21)
参考文献数
12

症例は28歳男性,製造業.昼食時琵琶湖の小鮎あめ煮®を2尾摂取直後に胃痛が出現し,胃薬を内服した.1時間後に顔面に瘙痒伴う発赤が出現し,呼吸困難となり救急搬送された.食材について皮膚テスト,血清検査による原因検索を行った.皮膚プリックテストでは琵琶湖のコアユ・エビ・カニ・イカに陽性を示し,一般的なアユや他の魚類は陰性であった.抗原特異的IgEではエビ・カニ・ダニ・ガ・ユスリカ・ゴキブリに陽性を示したが,rGad c 1(タラパルブアルブミン),rPen a 1(エビトロポミオシン)の各アレルゲンコンポーネントは陰性であった.またELISAではコアユ・アユ・マサバの抽出液およびマサバパルブアルブミン・マサバコラーゲンの反応はみられなかった.以上より琵琶湖のコアユによるアナフィラキシーと診断した.琵琶湖のコアユによるアレルギーは本症例が初めての報告である.コアユ特有の原因抗原が存在する可能性が考えられた.