- 著者
-
越智 沙織
髙橋 彩
片山 一朗
- 出版者
- 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
- 雑誌
- 皮膚の科学 (ISSN:13471813)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, no.5, pp.274-283, 2018 (Released:2019-03-30)
- 参考文献数
- 14
高齢者の乾皮症に対する化粧品保湿剤の影響を解析した。2017年 2 月から 4 月の間,大阪大学医学部附属病院を受診した60歳以上の乾皮症患者30例を対象とし,常盤薬品工業株式会社が販売しているノブ○R スキンクリームD(以下,保湿クリーム),コントロールとして白色ワセリン(以下,ワセリン)を使用した。左右の下腿に,保湿クリームとワセリンを塗り分け,外用開始前および 4 週間外用後に評価した。 4 週間外用継続できた29例は明らかな有害事象を認めなかった。外用 4 週後の皮膚病変スコア・瘙痒 VAS は外用前と比較して,両群ともに全項目で有意に低下した。外用 4 週後の角層水分量は保湿クリーム・ワセリン群ともに外用前と比較し有意に増加し,ワセリン群と比較し保湿クリーム群で有意に高値であった。外用 4 週後の経表皮水分蒸散量は保湿クリーム群のみ有意に低下した。次に 250 Hz および 5Hzの経皮的電気刺激に対する知覚応答性閾値は保湿クリーム群がワセリン群と比較して有意に高値であった。さらに角層における SH 基染色強度と重層剥離度は保湿クリーム群のみ有意に減少した。以上より,保湿クリームは皮膚病変・瘙痒だけでなく,バリア機能・角層機能を有意に改善させた。保湿剤は多様化しているが,医薬品だけでなくノブ○R スキンクリームDのような化粧品も保湿効果が高く,使用感が良ければ,乾皮症の治療効果を高めることが示唆された。 (皮膚の科学,17 : 274-283, 2018)