著者
松井 奨吾 徳永 正浩 吉川 慎一 長谷川 千紘 近藤 篤史 西浦 伸子 井上 慎也 冨永 信彦 前田 哲生
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.1513-1519, 2022 (Released:2022-12-08)
参考文献数
15

症例は34歳男性で,特記すべき医学的背景はなし。1回目のmRNA-1273 COVID-19ワクチン接種4日後に発熱が出現した。SARS-CoV-2 PCR検査は陰性で,抗生物質で改善を認めず。接種10日目に好中球・血小板減少および肝機能障害により紹介入院となった。フェリチンと可溶性IL-2レセプターの上昇も認めた。活動性ウイルス感染症は否定的で,CTでは感染巣はなく肝門部リンパ節腫脹と軽度の肝脾腫を認め,血液培養は陰性であった。骨髄検査で血球貪食像を認めたがリンパ腫細胞の浸潤はなし。血球貪食性リンパ組織球症と考えてmethylprednisolone(2 mg/kg)を入院当日に開始し,発熱は速やかに消失し,検査値異常も改善後に再燃を認めず。他の誘因がなく接種直後に発症したことからワクチンによる二次性血球貪食性リンパ組織球症と最終診断した。極めて稀ではあるがCOVID-19ワクチンの種類によらず報告されており,致命的となりうるため早急な診断と治療が重要と考える。
著者
太田 朝子 林 真未 宮﨑 明子 前田 哲生 越智 沙織
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.187-193, 2022 (Released:2022-12-07)
参考文献数
13

症例 1 は81歳,男性。下腿の貨幣状湿疹に対して外用加療中であった。COVID-19 ワクチン初回接種翌日に瘙痒を伴う顔面紅潮や躯幹四肢の紅暈を伴う漿液性丘疹が出現,既往の下腿湿疹が増悪し,血清 TARC 値は 1,383 pg/ml であった。抗ヒスタミン薬内服とステロイド外用 2 週間後に皮疹は治癒し,血清 TARC 値は正常化した。症例 2 は22歳,女性。初診 3 週間前より両側足首の湿布接触皮膚炎に対する外用治療中,COVID-19 ワクチン 2 回目接種後に足背の瘙痒と紅斑が出現,顔面・躯幹四肢に播種状紅斑丘疹が拡大し,血清 TARC 値は 2,090 pg/ml であった。プレドニゾロン 15 mg/日内服,ステロイド外用10日後に紅斑はほぼ色素沈着となり,血清 TARC 値は正常化した。症例 3 は74 歳,女性。喘息の既往あり。急性胆管炎に対し抗菌薬を投与した10日後,COVID-19 初回ワクチンを接種し, 2 日後に接種部位同側の四肢に瘙痒を自覚,躯幹四肢に播種状紅斑が出現,血清 TARC 値は 3,862 pg/ml であった。ステロイド外用 3 週間後に紅斑は退色し,血清 TARC 値は正常化した。 過去にワクチン接種後に TARC 高値を伴った皮疹の報告例はなく,本症例は患者背景やワクチンが関与し,Th2 優位な皮膚免疫応答を誘導した可能性が示唆された。 (皮膚の科学,21 : 187-193, 2022)
著者
加藤 恭郎 渡辺 孝 前田 哲生 垣本 佳士
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.745-751, 2011-06-01 (Released:2011-06-21)
参考文献数
12

わが国においてスターチ腹膜炎についての認識は低く,パウダーフリーの手術用手袋の普及も進んでいない.今回,虫垂切除後にスターチ腹膜炎を発症し,その後の経過を長期に観察しえた1例を経験したので報告する.症例は16歳女性で,1994年,虫垂炎に対し虫垂切除を行った.術後9日目から小腸通過障害をおこし,12日目に腹腔鏡下癒着剥離術を行った.黄色混濁腹水と腹膜小結節を認めた.腹水の培養は陰性であった.術後発熱と高い炎症反応が続いた.CTで腹水の貯留と腸間膜の肥厚を認めた.手袋のパウダーでの皮内反応が陽性であった.スターチ腹膜炎と判断しステロイド投与を行ったところ炎症反応は低下し,腹水も消失した.その後も小腸通過障害,複数回の腹痛があったがいずれも保存的に軽快した.スターチ腹膜炎が長期にわたり患者のQOLを悪化させた可能性があった.今後パウダーフリーの手術用手袋を普及させる必要があると思われた.
著者
加藤 恭郎 渡辺 孝 前田 哲生 垣本 佳士
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.745-751, 2011

わが国においてスターチ腹膜炎についての認識は低く,パウダーフリーの手術用手袋の普及も進んでいない.今回,虫垂切除後にスターチ腹膜炎を発症し,その後の経過を長期に観察しえた1例を経験したので報告する.症例は16歳女性で,1994年,虫垂炎に対し虫垂切除を行った.術後9日目から小腸通過障害をおこし,12日目に腹腔鏡下癒着剥離術を行った.黄色混濁腹水と腹膜小結節を認めた.腹水の培養は陰性であった.術後発熱と高い炎症反応が続いた.CTで腹水の貯留と腸間膜の肥厚を認めた.手袋のパウダーでの皮内反応が陽性であった.スターチ腹膜炎と判断しステロイド投与を行ったところ炎症反応は低下し,腹水も消失した.その後も小腸通過障害,複数回の腹痛があったがいずれも保存的に軽快した.スターチ腹膜炎が長期にわたり患者のQOLを悪化させた可能性があった.今後パウダーフリーの手術用手袋を普及させる必要があると思われた.
著者
上田 周二 弓指 孝博 吉田 謙 前田 哲生 烏野 隆博 手島 博文 平岡 諦 中村 博行 正岡 徹
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.464-467, 1997-05-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

Tsutsugamushi disease is widely spread throughout Japan. A case of tsutsugamushi disease was seen in October, 1996. A 64-year-old male developed typical symptons of tsutsugamushi disease with Rickettsia tsutsugamushi, after he returned to Japan from Cheju Island, Korea. Not only in Japan but also in other Asian countries including Korea, China, Taiwan, and Thailand, tsutsugamushi disease is one of the most important rickettsial diseases carried by ticks or mites.If a traveller returning from an Asian country has symptons such as high fever, skin eruption, and lymphadenitis, we should susupect that he is suffering from tsutsugamushi disease and should search if he has an eschar on any area of his body. We should not forget that tsutsugamushi disease is an imported disease. Patients of tsutsugamushi disease often have hematological disorders. They are sometimes referred to the hematological section of the hospital. Hematologists should be familiar with this disease.
著者
青 雲 金森 平和 黒川 峰夫 宮村 耕一 伊藤 俊朗 衛藤 徹也 片山 義雄 前田 哲生 小寺 良尚 飯田 美奈子 鈴木 律朗 山下 卓也 福田 隆浩 大橋 一輝 小川 啓恭 鬼塚 真仁 近藤 忠一
出版者
一般社団法人 日本造血細胞移植学会
雑誌
日本造血細胞移植学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.6-14, 2012
被引用文献数
2

造血幹細胞(骨髄,末梢血)ドナーの実態を把握し,将来におけるドナーの安全性,満足度を更に向上させる目的で,日本造血細胞移植学会ドナー登録センターに2006年4月から2010年3月までの間に集積された血縁ドナー年次アンケート結果の一部であるドナーの意見(ドナーの声)を解析し,満足度および不満の内容を,骨髄ドナー,末梢血ドナー間で比較した。提供に際しての,満足度(不満度)は両提供法に差は無かったが,不満を表明したドナーにおいてその不満が身体的なものに起因する割合は,骨髄ドナーに多かった。身体的不満の内主要なものは各種疼痛,特に疼痛の遷延であり,採取手技,使用機器(採取針のサイズ等),採取に際しての説明等に対する採取チームの配慮により改善可能と思われた。