著者
高橋 史昭 一條 俊浩 高橋 千賀子 中村 行雄 上田 一之 足立 吉數
出版者
日本家畜衛生学会
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.123-129, 2011 (Released:2012-12-06)

黒毛和種繁殖牛飼養農場2戸において、イベルメクチン製剤(アイボメックトピカル(R); IVMT)を用いた消化管内線虫症駆虫による損耗低減プログラムを計画した。先ず、牛群全頭にIVMT0.5mg/kgを一斉に投与してから3カ月後に投与した。母牛には分娩1カ月前に1回、育成子牛には生後1ヵ月と6ヵ月齢の2回投与した。駆虫プログラム実施後に子牛においては、1)生時体重の増加傾向、2)生後2週齢までの下痢、生後30日前後からのコクシジウムによる血便の発生の減少が認められた。また、3)生後3ヵ月前後からの呼吸器疾患の発症も減少した。これに伴い4)牛群全体の病傷事故発生数の減少と、それにともなう支払共済金も減少した。即ち、母牛および子牛に対する計画的イベルメクチン製剤投与駆虫の実施によって子牛における下痢および呼吸器疾患の発生を抑制させることができた。
著者
高橋 史昭 一條 俊浩 高橋 千賀子 渡邊 昭夫 沼津 敬治 中村 行雄 上田 一之 足立 吉數
出版者
日本家畜衛生学会
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.157-163, 2009 (Released:2011-03-05)

黒毛和種牛繁殖農家2戸において、イベルメクチン製剤(アイボメックトピカル(R);IVMT)を用いた駆虫プログラムを実施した。駆虫プログラムは、(1)先ず、牛群全頭にIVMTの推奨量を一斉投与してから一定期間経過後、(2)母牛には分娩1ヵ月前に1回、(3)育成子牛には生後1ヵ月齢と6ヵ月齢の2回投与とした。駆虫プログラム実施後は、1)2戸の農家ともに、乳頭糞線虫の汚染が大幅に改善し、他の蠕虫卵も糞便検査で検出されず、コクシジウムの汚染のみが観察された。2)また、駆虫プログラム実施後、子牛の消化器疾患の罹患数および平均診療回数の減少が確認された。3)生産性については、母牛では空胎日数の短縮および2産目までの人工授精回数の減少傾向が観察された。また、子牛では3ヵ月齢の子牛の体高が標準値を上回り、素牛出荷時における体重の増加傾向が観察された。4)子牛の血清アルブミン値は150-249日齢において対照群より有意に高値を示した(P<0.05)。これらの結果から本駆虫プログラムの実施により消化管内線虫がコントロールされ母牛および子牛の生産性が向上することが示唆された。
著者
石関 沙代子 足立 吉數 鈴木 優香 小針 大助 安江 健 金澤 卓弥 青柳 陽介 阿部 由紀子 秋葉 正人 楠本 正博
出版者
日本家畜衛生学会
雑誌
家畜衛生学雑誌 (ISSN:13476602)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.85-90, 2013-11

子牛の消化器病で大腸菌感染症は重要な感染症であり、特に哺乳中の子牛で大きな経済的な被害が発生している。Escherichia属は数種の菌種からなっているが、動物で重要な病原体はE. coliのみである。この菌種は子犬、子豚、子牛、子馬、子羊の敗血症の原因になっている。そして、すべての動物で日和見感染の原因菌とも考えられている。われわれは、腸管接着性微絨毛消滅性大腸菌が子牛の腸管上皮細胞に定着する仕方に2種類あることを示唆してきた。しかし、血縁関係にある子牛の下痢についてはよく知られていない。今回、農学部附属フィルドサイエンスセンター(FSC)で発生した哺乳子牛の消化器疾患が他の農場との交流がない閉鎖空間で発生したこと、および特定の血縁関係にある牛群において2002年から斃死する子牛が認められ、2012年まで続いていることから死因を調査し対策を講じることを目的に調査研究を行った。
著者
平野 孝一 足立 吉數 Bintvihok Anong 石橋 幸子 熊澤 教眞
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.567-569, 1992-06-15

肝臓からの効果的なアフラトキシンの抽出及びクリンアップの方法について検討した. 先ず, アフラトキシンを破砕した肝臓から遊離させるために, プロテイナーゼKで酵素処理を行った. その試料からの回収試験では, 鶏の肝臓の場合, 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で108.1±4.9%(平均値±標準誤差, n=3), 酵素免疫測定法(ELISA)で, 122.0±18.3%(n=3)であった. 豚の肝臓では, HPLCで111.8±5.2%(n=3)・ELISAで120.3±9.1%(n=3)であった. さらに, 幼雛へのアフラトキシンB_1(AFB_1)の投与試験を実施し, その肝臓からの回収試験を行ったところ, 投与後3時間目に高いAFB_1値が得られ, その値は時間とともに, すみやかに低下した. このことから, アフラトキシン汚染飼料を摂取した鶏においては, 少なくともアフラトキシン摂取後24時間以内ならば肝臓から検出可能との知見が得られた. この抽出及びクリンアップの方法を用いて, 血漿からアフラトキシンが検出された野外飼育採卵鶏の肝臓36検体と屠畜場から入手した豚の肝臓6検体及びそれらの豚が食べていた飼料6検体からアフラトキシンの検出を試みたが, いずれの試料からもHPLC及びELISAによってアフラトキシンは検出されなかった.