著者
辻 あゆみ いとう たけひこ
出版者
心理科学研究会
雑誌
心理科学 (ISSN:03883299)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.29-48, 2023 (Released:2023-06-28)
参考文献数
43

本研究では、発達障害児者の母親を一人の主体として捉え、その人生を家族や教師などの社会的関係から一考することを目指した。そのため、テキストマイニングと質的内容分析の併用による混合研究法を用いて10名の母親と元園長(支援者)との振り返り面接の記録を分析した。その結果、第一に、母親は家庭や教師をはじめとする人と社会的な関係を形成しながら生きていること、第二に、障害のある子どもを通しても人生を肯定的に意味づけるようになること、第三に、子どものみならず、社会に対しても願いを抱くようになることが示された。発達障害児者の母親は、子どもの幸せを願いながら、障害のある子どもを介して様々な人と出会い、多様な体験していることが明らかになった。旧知の関係にある元園長との対話を通しても、子育てにまつわる出来事を意味づけ、自己成長を見せると考察された。
著者
辻 あゆみ 高山 佳子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.335-344, 2004-12-20 (Released:2017-07-24)

幼児期の自閉症児とその母親とのシャボン玉遊び場面を観察し,対象児が「自分-もの-母親」との間で三項関係を成立させる過程を分析した。シャボン玉遊びの中で,対象児は,三項関係を成立させ,母親の吹く行動を真似るに至るまでに,物ならびに母親に対して39項目の行動を表出させた。初回のやりとりにおいて,対象児は物に働きかけることが多く,母親に対して働きかけることは少なかった。また,対象児が母親に対して働きかけた場合においても,母親を見ることはなかった。最終回のやりとりにおいて,対象児は,母親を見ながら母親に働きかけることが多くなり,物と母親との間で視線を移動させるようになった。対象児は,シャボン玉遊びを介したやりとりを通して,物を操作している母親を理解するようになり,その結果,母親の行動を真似ることが可能になったと考えられた。他者と相互主体的なやりとりを展開することが困難な幼児期の自閉症児に対して,他者を意識できるような遊びを展開できるように支援することが,必要であると考えられた。