著者
宇野 宏幸
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.479-491, 2003-01-30
被引用文献数
1

近年、行動抑制の欠如という観点から、注意欠陥多動性障害(ADHD)が理解されつつあり、今後、そのプロセスの解明が期待されている。本論文では、そのプロセスに注意の欠陥から直接的にあるいは注意欠陥によって認知処理がうまくできないために行動抑制ができない場合と、情動制御の失敗によって生じる衝動性の2つがあることを述べる。さらに、この2つのプロセスに対応するメカニズムが大脳皮質の前頭前野に存在し、これらが実行的注意の中枢で統合されていることを説明する。以上の知見をふまえて、ADHDの行動抑制障害に関して階層的な認知神経心理学的モデルを提案する。
著者
三島 美砂 宇野 宏幸
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.414-425, 2004-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
22
被引用文献数
7 2

小学校高学年の児童に, 1学期と学年末の2回,「教師認知」と「学級雰囲気」についての調査を実施し, 教師が学級集団や学級雰囲気に如何に効果的に影響を及ぼすかということを検討した。因子分析の結果,「教師認知」因子として,「受容・親近」,「自信・客観」,「怖さ」,「罰」,「たくましさ」が,「学級雰囲気」因子として,「認め合い」,「規律」,「意欲」,「楽しさ」,「反抗」が抽出され, 重回帰分析の結果, 学級雰囲気と強い関連性をもっているのは, 教師認知因子「受容・親近」,「自信・客観」の2つであることが示唆された。「受容・親近」は主に「意欲」・「楽しさ」の2つの雰囲気に影響を与えており, 早期よりその効果が顕在化していた。それに対し,「自信・客観」は1学期にはどの雰囲気とも関連が認められなかったが, 学年末の学級雰囲気「認め合い」に正の,「反抗」に負の大きな影響力をもつことが示された。
著者
三島 美砂 宇野 宏幸
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.414-425, 2004-12-30
被引用文献数
2 2

小学校高学年の児童に, 1学期と学年末の2回, 「教師認知」と「学級雰囲気」についての調査を実施し, 教師が学級集団や学級雰囲気に如何に効果的に影響を及ぼすかということを検討した。因子分析の結果, 「教師認知」因子として, 「受容・親近」, 「自信・客観」, 「怖さ」, 「罰」, 「たくましさ」が, 「学級雰囲気」因子として, 「認め合い」, 「規律」, 「意欲」, 「楽しさ」, 「反抗」が抽出され, 重回帰分析の結果, 学級雰囲気と強い関連性をもっているのは, 教師認知因子「受容・親近」, 「自信・客観」の2つであることが示唆された。「受容・親近」は主に「意欲」・「楽しさ」の2つの雰囲気に影響を与えており, 早期よりその効果が顕在化していた。それに対し, 「自信・客観」は1学期にはどの雰囲気とも関連が認められなかったが, 学年末の学級雰囲気「認め合い」に正の, 「反抗」に負の大きな影響力をもつことが示された。
著者
圓山 勇雄 宇野 宏幸
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.51-61, 2013 (Released:2015-02-18)
参考文献数
19
被引用文献数
1

小学6年生の発達障害児の示す「登校しぶり」という状態に対して、母子関係の再調整を中心とした包括的支援を実施した。母親へのコンサルテーションでは、「生活リズムの調整」をもとに、関係の再調整として、「母親の心理的安定」「適切な対応の仕方」をアドバイスし、「登校への動機づけ支援」として「トークンエコノミー法」「パワーカードストラテジー」等の導入を図った。個別指導では、人との関わり方について学習するねらいで、ソーシャルスキル学習に取り組んだ。また、学校への提案として、対象児に対する「個別的配慮」「登校への興味関心」「友だち関係の調整」を行った。これらの結果、母親の対象児への見方や接し方が変化するに伴い、対象児に対する気持ちもポジティブに変化し、母子関係の改善が図られた。動機づけ支援による効果は限局的であった一方、母子関係の改善、学校での個別的配慮などにより、対象児の登校しぶりは減少し、主体的に登校するようになった。母子関係の再調整を中心とした包括的なアプローチの重要性が示唆されたが、中学校入学後の支援の継続が課題として残った。