著者
辻 順行 辻 大志 辻 時夫
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.470-474, 2004-08-01
被引用文献数
2

平成13年12月から平成15年4月までの期間に痔瘻を染色するために作成したネジを痔瘻の二次口より挿入し,原発口の同定と瘻管の染色を試み以下の結果を得た.1).62%の症例で原発口より染色液の漏出を認め,位置の同定が術前に可能であった. 2).瘻管を染色すると病変の識別が術中の視診でも容易となり,必要最小限の切除が可能となった.また括約筋温存術の際中に瘻管に切り込んだ際も,染色液が漏れ出るためにすぐに切除方向の修正が可能となった. 3).原発口が判明しなかった症例に対して頻回にしかも無理に染色液を注入すると,正常な組織も染色され病変部の識別が難しくなり手術が困難となった. 4)染色併用下温存術の再発率は8%,従来の手術では7.7%でほぼ同様な結果であった.しかし肛門の手術に経験の浅い医師やseton法を行う場合には手術前に原発口の同定や瘻管の走行を視診で確認でき非常に有用であると思われた.
著者
辻 順行 辻 大志 辻 時夫
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.132-136, 2003-03-01
被引用文献数
3

平成11年8月から平成13年8月までに当院で手術を行った痔核298例の中で術後狭窄を来した23例を対象として分析を加え以下の結果を得た.1.結紮切除(LE)が1~4カ所の症例でそれぞれ0%,3.3%,7.0%,14.3%の頻度で術後の肛門狭窄が発生した.この症例をLE1~3カ所とLE4カ所の2群に分けて比較すると前者では6.2%,後者では14.3%で後者が有意に多かった.従ってLEは3カ所以下が適当であると思われた.2.嵌頓痔核の術後には肛門狭窄が非嵌頓痔核術後に比較し有意に多く発生した.従って術後狭窄から検討すると,嵌頓痔核は嵌頓状態の改善後に根治術を行うべきと考えられた.3.術前に狭窄を合併する症例では,術後も狭窄を来す可能性が高く,LEの数はより少なくそして術中広めの拡張術が必要であると判断された.4.術前の指診で肛門の緊張が高い症例では,術後も狭窄を来す可能性が高く,LEの数はより少なくし,拡張術も追加すべきと判断された.5.肛門狭窄は術後3カ月から6カ月の期間内に改善することが多く,全体の64.3%の症例が非観血的方法で改善した.