2 0 0 0 悪性黒色腫

著者
松島 誠 黒水 丈次 岡本 康介 長谷川 信吾 下島 裕寛 河野 洋一 香取 玲美 杉田 博俊 小菅 経子 鈴木 裕 鈴木 和徳 池上 雅博 栗原 聰元 大田 貢由
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.374-377, 2016-03-25

疫学 悪性黒色腫(malignant melanoma)は,神経堤起源細胞でメラニン産生細胞であるメラノサイト(melanocyte)に由来する悪性腫瘍である.そのほとんどは皮膚に発生するが,その他メラノサイトが存在する口腔,鼻腔,食道,胃や大腸・肛門などの消化管の粘膜や目の脈絡膜,脳軟膜,脊髄膜にも発生する.本邦における悪性黒色腫の罹病率は1.12人/10万人とされており,欧米での発生頻度は本邦に比べて高く,さらに増加する傾向にあるとされている. 原発部位別頻度をみると,消化管原発悪性黒色腫は,全悪性黒色腫の0.1〜2.5%と極めて少ない.本邦における消化管原発の悪性黒色腫は,1999年の嶋田ら1)による集計では,直腸肛門部300例,食道143例,小腸9例,結腸5例,胃2例で,海外の報告でも結腸原発悪性黒色腫は,全悪性黒色腫の0.4〜5.6%と極めて少ない.また,大腸悪性黒色腫の中では,歯状線を中心とした直腸肛門部に発生するものが最も多く(直腸肛門部は基底層にメラニン色素細胞を含む重層扁平上皮を持ち,悪性黒色腫の発生母地になると考えられている),結腸原発悪性黒色腫の約75%を占めると言われている.直腸肛門部原発悪性黒色腫は全肛門部悪性腫瘍の0.25〜3.9%である.直腸肛門部の悪性黒色腫は早期にリンパ行性,血行性転移を来しやすく,診断時既に70%の症例で転移を認めると言われている2).
著者
宮崎 道彦 黒水 丈次 豊原 敏光 竹尾 浩真 石橋 憲吾 皆川 紀剛 高野 正博
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.151-155, 2001-03
参考文献数
16
被引用文献数
2

平成4年12月から平成11年10月1日までに当院で手術を施行した「ホワイトヘッド肛門」16例の病態をretrospectiveに検討した.男女比は14:2,年齢は32~85歳(平均64.4歳).術前肛門管最大静止圧の平均値は60.8cmH<SUB>2</SUB>Oと低値であるが術前肛門管最大随意収縮圧の平均値は正常であった.観察期間は平均21カ月であった.年齢分布は60~69歳が最多で70~79歳がそれに続いて多かった.無症状期間は平均10.6年,病悩期間は平均26.6年であった.手術は16症例41病変に行った.そのうちわけはligation and excision,with sliding skin graft法(LE・SSG併用法)が21病変,ligation and excision法(LE法)10病変,sliding skin graft法(SSG法)4病変,McGivney rubber band ligation法(RBL法)6病変であった.術前症状としては出血,脱出,疼痛,分泌物付着の頻度が高かったがこれらの症状は手術治療により改善が認められた.しかし便失禁に関しては術後で症状の改善は認められなかった.
著者
辻 順行 黒水 丈次 豊原 敏光
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.1030-1037, 1999-10-01
被引用文献数
2

平成9年4月から平成11年3月までに当クリニックで行われたday surgeryの218例を対象として分析を加え, 以下の結果を得た. (1) 同時期にクリニックで手術が決定された症例の内訳をみると, day surgeryが59%, 短期入院手術が5%, 普通の入院手術が36%で, day surgeryが過半数を占めた.また希望の入院日数に関するアンケートをみるとday surgeryが41.2%, 1週間までの入院が56.9%で計98.1%を占めた.以上より肛門疾患の入院日数は今後ますます短くなると思われた. (2) day surgeryの麻酔 (仙骨硬膜外麻酔または局所麻酔) については施行時の疼痛の強さ, 施行の際の難易性, 合併症の頻度, 診療時間等を十分に検討した上で決定すべきであると思われた. (3) 術後の早期出血については術後の安静時間を十分に確保すること, 創面に対し止血綿を使用するなど十分な止血操作を加えることで防止は可能と思われた.また痔核の晩期出血については最低3週間は溶解しない吸収糸の使用, 根部結紮にゴム輪結紮の併用や口側粘膜下に硬化剤の注射, 排便指導等を行うことで極力減らせると思われた. (4) 術後の疼痛については閉鎖術式の場合, 半閉鎖の高さを浅くする, 上皮のみを縫合するなど肛門の緊張を上げない工夫をし, 術前より緊張の高い症例では術中に緊張を下げる操作を加える, 嵌頓痔核の手術はしない.また結紮切除の数は肛門の緊張が弱い症例を除いては2ヵ所までとし, それ以上は二期的手術, 短期入院手術とすること等で軽減できると思われた.またアンケートをとると術後の鎮痛剤として, 坐薬は患者の挿入時の不安が強く, 経口薬が適当であると思われた. (5) 費用の点でday surgeryと2週間入院手術症例の比較を痔核症例で行うとday surgeryは入院手術の約1/4であった.
著者
宮崎 道彦 豊原 敏光 黒水 丈次
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.267-272, 2004 (Released:2009-06-05)
参考文献数
16

当院で1991年から2001年の期間に外科的に治療した臀部膿皮症(慢性化膿性汗腺炎)18例をretrospectiveに検討した.再発は認めなかった.年齢は25歳から74歳で平均38±12歳,うち10例(56%)は40歳未満であった.病悩期間は5例(28%)が10年以上であった.5例(28%)は肛門周囲膿瘍または痔瘻を合併していた.痔瘻(肛門周囲膿瘍)の合併症例は複雑で病巣把握が困難であることが多く,手術回数(平均5回)や入院期間(平均95日)に影響をおよぼすため慎重に対処しなければならない.