著者
近藤 和也 門田 康正
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 = The journal of the Japanese Association for Chest Surgery (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.633-642, 2001-09-15
被引用文献数
23 13

1990年より1994年までの5年間に治療した胸腺上皮性腫瘍に関してアンケートを依頼した.呼吸器外科学会認定施設115施設より回答を頂き, 1, 320例の胸腺上皮性腫瘍を集計し得た.胸腺腫は1, 082例 (82.0%), atypical thymoma (well differentiated thymic carcinoma) は11例 (0.8%), 胸腺癌は186例 (14.1%), 胸腺カルチノイドは41例 (3.1%) であった.胸腺腫は女性優位であるが, 胸腺癌, 胸腺カルチノイドは男性優位である.胸腺癌の患者は胸腺腫に比べて有意に年齢が高い傾向を認めた.胸腺腫における合併症の頻度は, 重症筋無力症は24.7%, 赤芽球癆は2.6%, 低または高グロブリン血症は0.65%であった.胸腺腫の約70%が臨床病期IまたはIIであったが, 胸腺癌では約90%が臨床病期IIIまたはIVであった.胸腺上皮性腫瘍の治療は外科切除が中心であるが, 胸腺腫I期: 5.6%, II期: 43.5%, III期:<BR>74.4%, IVa期: 73-1%, IVb期: 66.7%, 胸腺癌: 58.6%, 胸腺カルチノイド: 53.7%の症例に追加治療がなされている.完全切除率は胸腺腫I期: 100%, II期: 100%, III期: 84.2%, IVa期: 40%, IVb期: 45.2%, 胸腺癌: 50.5%, 胸腺カルチノイド: 87.5%であった.再発率は胸腺腫I期: 0.9%, II期: 3.7%, III期: 27.3%, IV期: 33.3%, 胸腺癌: 51.2%, 胸腺カルチノイド: 64.3%であった.5年生存率は胸腺腫: 94.8%, 胸腺癌: 50.5%, 胸腺カルチノイド: 84.8%であった.胸腺腫臨床病期別ではI期: 100%, II期: 98.3%, III期: 89.2%, IVa期: 73.1%, IVb期: 63.5%であった.
著者
滝沢 宏光 近藤 和也 先山 正二 梶浦 耕一郎
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

術中の胸膜浸潤診断に自家蛍光を用いることで正診率が向上することを示した.蛍光内視鏡所見とHE染色標本の蛍光顕微鏡所見は,胸膜浸潤部位において同様の所見を呈しており,肺癌の胸膜浸潤部における自家蛍光減弱は癌の浸潤性を反映している可能性を組織学的に示すことができた.胸膜の自家蛍光の変化にcollagenⅠ, fibronectinが関与している可能性がある.肺癌切除症例を対象とした後ろ向き検討では,リンパ節転移は胸膜浸潤症例で有意に多く,胸膜浸潤症例にスキップ転移も多いことが示された. 術中に胸膜下に注入したICGの蛍光を観察することで,スキップ転移経路を可視化できる可能性も示すことができた.
著者
咸 行奎 沖津 宏 三好 孝典 先山 正二 近藤 和也 門田 康正
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.341-344, 2003-08-20
被引用文献数
3

背景.肺癌副腎転移は剖検例では高頻度に見られるが,治癒切除可能な症例は少なかった.しかし近年画像診断の進歩により転移発見動機が増加し,外科治療の結果長期生存が得られたとの報告例も散見される.今回,我々は肺癌手術後の副腎転移2例に対し摘出術を行ったので報告する.症例1. 68歳男性.66歳時,右上葉切除術を施行した.pT1N0M0,stage IA であった.1年3ヵ月後の定期的なCT検査にて左副腎腫瘍があり,転移と考えたが本人の希望で経過観察していた.その後他疾患で開腹術の際,同時に副腎摘出術を行った.病理診断で肺癌の転移と診断された.副腎摘出術後3年9ヵ月経過し,再発を認めていない.症例2. 65歳男性.64歳時,右中下葉切除術を施行した.pT1N2M0, stage IIIA であった.1年後,右側腹部痛があり,CTにて右副腎腫瘍を発見した.副腎単独転移と診断,摘出術を施行した.その7ヵ月後,胸部の広範囲に再発,最終的に副腎摘出術から1年3ヵ月後死亡した.結論.副腎単独転移の場合,摘出術によって長期予後が得られることがあり,可能ならば手術も積極的に選択すべきである.(肺癌. 2003;43:341-344)