著者
久保 公利 松田 宗一郎 間部 克裕 加藤 元嗣 迫 康仁
出版者
道南医学会
雑誌
道南医学会ジャーナル (ISSN:2433667X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.44-46, 2019 (Released:2019-06-03)
参考文献数
9

【症例1】21歳,男性【主訴】虫体の排泄【現病歴】2018年6月末に排便時に紐状の虫体が排泄され,途中で断裂した。断端が肛門内に自然寛納されたために近医を受診した。便虫卵検査で広節裂頭条虫卵と診断され、駆虫目的に当院を紹介受診した。【既往歴】なし【職業歴】調理師【経過】問診により調理中の味見に伴うマス生食が原因と考えられた。入院翌日にプラジカンテル20mg/kgを投与し、3時間後にマグコロールPを投与した。虫体が排泄され、種の同定目的に旭川医科大学寄生虫学講座に発送した。Multiplex-PCR検査で日本海裂頭条虫症と同定された。【症例2】44歳,男性【主訴】虫体の排泄【現病歴】2018年7月末に排便時に紐状の虫体が排泄され,途中で断裂した。その後も2度排泄があり近医を受診し、駆虫目的に当院を紹介受診した。【既往歴】高血圧【職業歴】調理師【経過】問診によりマス生食が原因と考えられた。入院翌日にプラジカンテル20mg/kgを投与し、3時間後にマグコロールPを投与した。虫体が排泄され、種の同定目的に旭川医科大学寄生虫学講座に発送した。頭節が確認され、Multiplex-PCR検査で日本海裂頭条虫症と同定された。【結語】プラジカンテルで駆虫しえた日本海裂頭条虫症の2例を経験したので報告する。
著者
伊藤 亮 山崎 浩 中谷 和宏 高後 裕 中尾 稔 藤本 佳範 迫 康仁
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究における主要研究テーマは、現在地球規模で流行が深刻化しているエキノコックス症(多包虫症、単包虫症)に関する信頼性の高い免疫診断法(国際標準診断、早期診断、治癒判定法)の開発と実用化である。(1)現在、国際的に最も信頼性が高いと評価されている多包虫症特異診断抗原Em18を遺伝子組み換え抗原(RecEm18)として作成し、その過程でEm18の生化学的特性の解析がなされた。世界各国で別個に検索されてきた診断抗原の中でEm18のB cell epitope活性が最も高いことが判明した(Sako et al.2002.J Clin Microbiol 40,2760-2765)。(2)フランスとのブラインドテストによる共同研究から、RecEm18を用いる血清診断法はフランスにおける多包虫症と単包虫症を100%鑑別できることが判明した(Ito et al.2002.J Clin Microbiol 40,4161-4165)。現在、フランス、スイスにおいて認定された300例以上の多包虫症例の血清学的確認要請を受けている。(3)単包虫症の血清診断法についても遺伝子組み換えAntigen Bを作製した(Mamuti et al.2002.Clin Diag Lab Immunol 9,573-576;Mamuti et al.in prep.)。(4)血清診断上、最も交差反応が高い致死的寄生虫疾患、有鉤嚢虫症に関する遺伝子組み換え抗原を作製した(Sako et al.2000.J Clin Microbiol 38,4439-4444)。血清診断上鑑別を要する多包虫症、単包虫症、有鉤嚢虫症すべてに関する遺伝子組み換え抗原作製に成功し、国際的な評価を得た。現在、合成ペプチド抗原作製を試みている。(5)北海道を中心に、主治医から直接相談を受けた多包虫症疑診例において、Em18抗原を用いる血清検査で多包虫症と他の疾患を術前に100%鑑別し、術前確定血清診断法を確立した。国内での現行の血清検査が確定検査として機能していないことから、Em18を用いる血清検査の導入が望まれる。(6)ミトコンドリアDNA解析により、遺伝子診断法の開発が可能になった。遺伝子解析、遺伝子診断研究も含め、これらの研究成果は現在印刷中を含め国際誌に原著論文総説29編、国際会議録14編、著書5篇として発表した。和文総説、報告書も22編発表した。