著者
青野 允 伊藤 丈雄
出版者
道南医学会
雑誌
道南医学会ジャーナル (ISSN:2433667X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.7-10, 2018 (Released:2019-02-27)
参考文献数
9

近年我が国の出生率は減少の一途をたどる一方高齢者が増加して、少子・超高齢社会となった。このような状況下で119番通報を受けた救急隊員が現場に到着すると、傷病者は心肺停止状態(CPA)にあるにもかかわらず、心肺蘇生法(CPR)を開始しようとすると拒否(DNAR)される場合が増加しつつあり、問題視されている。そこで今回、当道南地区の実態を調査した。その結果、119番通報数の約1.4%の事例で心肺停止状態と認められ、かつその約1.0%前後で心肺法実施を家族などに拒否された。その対策としては、①小学生時代から、「人の一生(生死)」について理解し、②医療従事者には死の診断は医師・歯科医師のみに課された専権事項であることを認識させる必要があると考えられた。
著者
本田 進 木村 中 渡部 将伍 山口 瞳
出版者
道南医学会
雑誌
道南医学会ジャーナル (ISSN:2433667X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.39-42, 2023 (Released:2023-06-01)
参考文献数
13

症例は53歳男性。4年前より背部に疼痛、腫脹、色素沈着があり、排膿することがあった。慢性膿皮症の診断にて他院で外用薬の塗布と抗菌薬の内服による治療を行っていた。改善がないため当院皮膚科を受診し、手術治療の適応と判断され当科に紹介となった。初診時、背部に大きさ11cm×9cmの範囲で点在する茶色の色素沈着と膨隆を認めた。全身麻酔下に病変部を切除し、皮膚欠損に対しては分層植皮術を施行した。病理結果はTufted angioma(房状血管腫)であった。術後8か月、再発はなく経過は良好である。Tufted angiomaは比較的稀な血管内皮細胞性腫瘍である。報告では大半が幼少期に発症するが、成人での発症例もみられる。今回われわれは成人のTufted angiomaの1 例を経験したため、文献的考察を踏まえ報告する。
著者
久保 公利 早坂 秀平 田中 一光
出版者
道南医学会
雑誌
道南医学会ジャーナル (ISSN:2433667X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.29-33, 2023 (Released:2023-06-01)
参考文献数
10

【背景】「ピュアスタット®」は消化器内視鏡治療における漏出性出血に対して使用される吸収性局所止血剤(自己組織化ペプチド技術を用いた透明なペプチド溶液)であり、血液と反応しハイドロゲルを形成することにより出血点を物理的に塞いで止血するのが特徴である。2021年12月に保険適用が開始され、安全性が高く簡便であることから当院では2022年2月に導入した。【目的】当院におけるピュアスタット®を用いた止血の現状について検証すること。【対象】2022年2月から2022年8月までに使用した34例を対象として、1)リスク因子、2)適用部位、3)適用疾患、4)出血の程度と止血方法、5) 止血率について検証した。【結果】34例のうち,男性は19例,女性は15例で,平均年齢は75.4歳であった。1)抗血栓薬の服用 18例、肝硬変 1例、透析 1例であった。2)胃 16例、大腸 9例、十二指腸乳頭 5例、十二指腸 3例、胃管 1例であった。3) 内視鏡治療中出血 16例(EMR 7例、ESD 5例、Precut 3例、Cold polypectomy 1例)、消化性潰瘍 8例(胃 3例、十二指腸 3例、直腸 2例)、内視鏡治療後出血 4例(Precut 2例、胃瘻造設術 1例、ESD 1例)、胃癌出血 3例、胃粘膜出血 2例、胃静脈瘤破裂 1例であった。4) 漏出性 27例(単独 12例、クリップ併用 12例、止血鉗子併用 3例)、噴出性 5例(クリップ併用 3例、止血鉗子併用 2例)、拍動性 2例(クリップ併用 2例)であった。5)97.1% (33/34)であった。【結語】ピュアスタット®は漏出性出血のみならず拍動性/噴出性出血に対する止血方法の選択肢として有用であり、他の止血方法(クリップ、止血鉗子)と組み合わせて使用すると有効である。
著者
佐藤 千代子 加藤 元嗣 西川 有佳 今村 佳奈 松本 健太郎 松本 和加子 福原 直美 阿部 千里 井川 敬子 間部 克裕
出版者
道南医学会
雑誌
道南医学会ジャーナル
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.35-37, 2018

上部消化管内視鏡検査では、苦痛なく検査が施行できるよう咽頭麻酔が行われる。咽頭麻酔の方法はキシロカインビスカス法、アイスドロップ法、スプレー法等があるが、今回効率的かつ患者満足度の高い咽頭麻酔導入を目的として、当院の従来法(アイスドロップ法)とスプレー法を比較検討したため、報告する。
著者
久保 公利 松田 宗一郎 間部 克裕 加藤 元嗣
出版者
道南医学会
雑誌
道南医学会ジャーナル (ISSN:2433667X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.39-43, 2019 (Released:2019-06-03)
参考文献数
10

【症例】80歳,男性【主訴】脱力感、歩行困難【現病歴】2017年9月末より大腿部の痛みを認め、近医整形外科に入院したが譫妄のため数日で退院となった。10月に近医精神科を受診し、アルツハイマー型認知症と診断された。その後脱力感が出現し歩行困難となったため、10月31日に当院入院となった。【既往歴】洞不全症候群(2007年)、腰部脊柱管狭窄症(2014年)、アルツハイマー型認知症(2017年)【経過】発熱と炎症反応の高値を認め、感染症を疑い抗生剤治療を行ったが解熱せず投与を中止した。抗核抗体、リウマチ因子、抗CCP抗体は陰性だった。Gaシンチグラフィで両側肩関節と右膝関節に集積が認められた。リウマチ性多発筋痛症を疑い,第24病日よりPSL20mgの投与を開始したところ翌日には解熱した。また入院時より幻覚、見当識障害、記銘力障害が認められたため、精神科を受診し内服加療が開始された。その後PSLを漸減し第94病日に退院となった。【結語】症状出現時から診断まで2ヶ月を要したリウマチ性多発筋痛症の1例を経験した。アルツハイマー型認知症を有する症例のため、自覚症状を正確に表現することが困難であり、診断に苦慮したが貴重な症例と考え報告する。
著者
久保 公利 松田 宗一郎 間部 克裕 加藤 元嗣 迫 康仁
出版者
道南医学会
雑誌
道南医学会ジャーナル (ISSN:2433667X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.44-46, 2019 (Released:2019-06-03)
参考文献数
9

【症例1】21歳,男性【主訴】虫体の排泄【現病歴】2018年6月末に排便時に紐状の虫体が排泄され,途中で断裂した。断端が肛門内に自然寛納されたために近医を受診した。便虫卵検査で広節裂頭条虫卵と診断され、駆虫目的に当院を紹介受診した。【既往歴】なし【職業歴】調理師【経過】問診により調理中の味見に伴うマス生食が原因と考えられた。入院翌日にプラジカンテル20mg/kgを投与し、3時間後にマグコロールPを投与した。虫体が排泄され、種の同定目的に旭川医科大学寄生虫学講座に発送した。Multiplex-PCR検査で日本海裂頭条虫症と同定された。【症例2】44歳,男性【主訴】虫体の排泄【現病歴】2018年7月末に排便時に紐状の虫体が排泄され,途中で断裂した。その後も2度排泄があり近医を受診し、駆虫目的に当院を紹介受診した。【既往歴】高血圧【職業歴】調理師【経過】問診によりマス生食が原因と考えられた。入院翌日にプラジカンテル20mg/kgを投与し、3時間後にマグコロールPを投与した。虫体が排泄され、種の同定目的に旭川医科大学寄生虫学講座に発送した。頭節が確認され、Multiplex-PCR検査で日本海裂頭条虫症と同定された。【結語】プラジカンテルで駆虫しえた日本海裂頭条虫症の2例を経験したので報告する。
著者
矢羽羽 雅行 松崎 幸司 吉原 真由美 小原 史生 大渕 信子 千葉 久美子 大間 依子 九嶋 圭子 船山 俊介 志田 和哉 佐々木 眞
出版者
道南医学会
雑誌
道南医学会ジャーナル (ISSN:2433667X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.17-26, 2018 (Released:2019-02-27)
参考文献数
2

CKD(慢性腎臓病)では腎機能に応じた腎排泄型薬剤の投与設計等が重要であるが、持参薬において医薬品が適正使用されていない事例が多くみられた。そこで、函館五稜郭病院腎臓内科医がCKD診断した患者のお薬手帳の表紙にCKDシールを貼付することで、病院‐診療所‐調剤薬局間で腎機能情報を共有化し医薬品適正使用を推進することを目的に、「函館五稜郭病院CKD病診薬連携」の構築・運用を開始した。運用開始後に医師及び薬剤師へアンケート調査を実施した結果、CKD病診薬連携による腎機能情報の共有化は、CKD患者への医薬品適正使用の推進に有用であることが示唆された。CKDシールは医師-薬剤師間の共通ツールであることから、薬剤師から医師への積極的な処方提案等が可能になることで、医師-薬剤師連携によるCKD患者への医薬品適正使用の推進が期待される。
著者
加藤 元嗣
出版者
道南医学会
雑誌
道南医学会ジャーナル (ISSN:2433667X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.1-6, 2018 (Released:2019-02-27)
参考文献数
10

函館市では保険福祉行政事業として、中学生のピロリ菌検査が2016年度から開始された。函館市内の中学2年生に対して、一次検査として尿中H. pylori抗体検査、二次検査として尿素呼気試験を行った。感染者は任意に協力医療機関で除菌治療を受ける。協力施設に対して中学生ピロリ検診についてアンケート調査を行った。アンケート調査は72施設から回答が得られ、回収率は91.1%であった。対象者6,312名のうち一次検査受検数は3,201名で受検率は50.7%であった。そのうち6.7%が抗体陽性で二次検査受診率は62.8%で、二次検査陽性者は56.3%で函館市の中学生の感染率は3.8%と推測された。除菌治療を受けたのは25名の32.9%に留まった。25名のうち22名は除菌に成功して3名は二次除菌の判定待ちである。副作用はペニシリンアレルギーの皮膚掻痒感と軟便の2例のみであった。メトロニダゾールを用いたレジメでは除菌率は95%(19/20)であった。今後は受検率の向上と二次検査陽性者の除菌治療への誘導を考える必要がある。