- 著者
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高後 裕
- 出版者
- 一般社団法人 日本消化器がん検診学会
- 雑誌
- 日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
- 巻号頁・発行日
- vol.45, no.2, pp.161-171, 2007
消化器がん検診における遺伝子異常把握のメリットは, 多くの遺伝, 環境因子によって生じる遺伝子変化をとらえ, 癌の拾い上げと発癌リスクの評価をおこなえることにある。頭頸部がん, 食道がん, 胃がん, 膵管内乳頭粘液産生腫瘍などの消化器がんの発生には, Field cancerizationの概念があてはまる。これらの臨床例を蓄積し, その遺伝子変化を解析することにより, 高リスク群の拾い上げに役立つ分子マーカーを見つけることが重要である。その際, 検診という大きな手段を対象とする戦略では, 感度・特異度はもちろん, 処理能力, 経済性, 安全性のいずれもが十分満足することが要求される。現在, 個別検診でのみ可能な高コストの先進的診断法が, 将来的に機器開発の努力等により急速にコスト, 処理能力が改善され, 最終的に「集団」のそれに対しても応用可能となること期待したい。