著者
大竹 孝明 高後 裕
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.109, no.9, pp.1535-1540, 2012 (Released:2012-09-05)
参考文献数
13

アルコール性肝障害の病態はエタノール代謝による肝細胞の生化学的変化から代謝異常を呈し,肝脂肪化,酸化ストレス,脂質過酸化がおきて発症,進行する.本稿では慢性飲酒にともなう脂質代謝を中心とした代謝異常,酸化ストレスの発現メカニズムを概説し,さらに酸化ストレスを促進する環境因子である食餌内容と病態との関連,肝障害に対する飲酒とメタボリック症候群との相加・相乗効果に関して述べる.
著者
高後 裕 大竹 孝明
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.59-65, 2015 (Released:2015-12-07)
参考文献数
19
被引用文献数
2

10 0 0 0 OA 2.鉄と発癌

著者
大竹 孝明 生田 克哉 高後 裕
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.6, pp.1277-1281, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
16

鉄は生体反応に必須の金属元素であるが,過剰状態では自由鉄分画が増加し活性酸素種産生を介して細胞毒性,DNA損傷ひいては発癌を誘導する.鉄は遺伝性ヘモクロマトーシスだけでなく,C型慢性肝炎の肝癌発生機序にも関与している.これに対し瀉血療法が発癌抑制効果をあげている.さらに鉄はアスベストによる胸膜中皮腫,子宮内膜症による卵巣癌の発症にも関与していることが示唆されてきている.
著者
高後 裕
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.161-171, 2007

消化器がん検診における遺伝子異常把握のメリットは, 多くの遺伝, 環境因子によって生じる遺伝子変化をとらえ, 癌の拾い上げと発癌リスクの評価をおこなえることにある。頭頸部がん, 食道がん, 胃がん, 膵管内乳頭粘液産生腫瘍などの消化器がんの発生には, Field cancerizationの概念があてはまる。これらの臨床例を蓄積し, その遺伝子変化を解析することにより, 高リスク群の拾い上げに役立つ分子マーカーを見つけることが重要である。その際, 検診という大きな手段を対象とする戦略では, 感度・特異度はもちろん, 処理能力, 経済性, 安全性のいずれもが十分満足することが要求される。現在, 個別検診でのみ可能な高コストの先進的診断法が, 将来的に機器開発の努力等により急速にコスト, 処理能力が改善され, 最終的に「集団」のそれに対しても応用可能となること期待したい。
著者
高後 裕
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.9, pp.2412-2424, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
56
被引用文献数
1
著者
藤谷 幹浩 高後 裕
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.11, pp.1900-1908, 2013 (Released:2013-11-05)
参考文献数
48

潰瘍性大腸炎では臨床所見を指標として活動性が評価される.しかし,臨床症状が改善しても,内視鏡的,組織学的に炎症が残存している例が多く,このような例では長期の寛解が得られない.そこで,粘膜に炎症所見が認められない状態,いわゆる粘膜治癒を治療エンドポイントとすることが提唱されている.これまでの研究から,粘膜治癒症例では,長期の寛解が維持され,腸管切除の頻度も低いことが明らかにされた.しかし現状では,粘膜治癒の定義や判定時期が明確ではなく,粘膜治癒が得られない例への対応も確立されていない.今後,粘膜治癒の定義を統一し,治療法別に経時的な粘膜治癒達成率を明らかにしていくと同時に,粘膜治癒が得られない例に対する新規治療法の開発が期待される.
著者
藤谷 幹浩 高後 裕
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.254-254, 2015 (Released:2015-10-25)

【目的】炎症性腸疾患(IBD)は原因不明の慢性炎症性疾患であり,その病態に免疫異常や腸内細菌叢の異常が関与しているとされる.本研究では,宿主に有益な菌である(プロバイオティクス)から産生される腸管保護活性物質を用いて,新規IBD治療薬を開発することを目的とした.【方法】1.乳酸菌SBL88の培養上清を各種カラムで分離し,各分画をヒト腸上皮由来Caco2/bbe細胞に投与して,細胞防御蛋白heat shock protein(Hsp)27の誘導能をwestern blottingで検討した.Hsp27の誘導能を持つ分画を単一物質まで繰り返して分離し菌由来活性物質を同定した.2.DSS慢性腸炎モデルおよびTNBS腸炎モデルを作成し,菌由来活性物質を5"7日間注腸投与して腸管長,組織学的変化,炎症および線維化関連メディエーターの発現を検討した.【成績】1.乳酸菌SBL88の培養上清からHsp27誘導能をもつ活性物質,長鎖ポリリン酸を同定した.2.長鎖ポリリン酸投与によりDSS慢性腸炎,TNBS腸炎による腸管短縮,組織学的な炎症および線維化が改善した.また,腸管粘膜における炎症性サイトカインIL-1β,TNFα,IFNγおよび線維化促進分子TGFβ1,SMAD4,CTGFの過剰発現が抑制された.【結論】乳酸菌由来長鎖ポリリン酸は腸炎モデルの腸管障害および線維化を改善した.長鎖ポリリン酸はIBDにおける腸管障害や線維化に対する新規治療薬として臨床応用が期待される.
著者
佐藤 一也 鳥本 悦宏 高後 裕
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.7, pp.1611-1619, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
10

末梢性T細胞リンパ腫は,リンパ腫の約10%を占める不均一な疾患単位の非Hodgkin T細胞性リンパ腫であり,病因も不明な点が多い.標準的治療法が未確立で,初回治療としてはCHOP療法等が選択されるが,治療効果は不十分で予後不良である.自家,同種造血幹細胞移植も行われるが有用性は明らかではない.生命予後の改善のためには,今後モノクローナル抗体等の新規治療法との併用治療も含めて,標準的治療法の確立が望まれる.
著者
高後 裕 加藤 淳二 越田 吉一 新津 洋司郎 茂木 良弘
出版者
札幌医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

Long-Evans Cinnamon(LEC)ラットは金属(銅および鉄)代謝異常を有し、肝炎・肝癌を自然発症することが知られている。本研究では申請当初、長期エタノール摂取の中止による肝癌発症に与える影響を検討することを目的として本ラットにエタノールを投与したが、数日以内に死亡することが判明したため、平成5年度は本ラットに存在するエタノール代謝異常について検討した。LECラットの腹腔内にエタノールを投与し(2g/kg体重),血中エタノールおよびアセトアルデヒド濃度をガスクロマトグラフィーで測定すると,両者の血中濃度は,対照に比べエタノール投与4時間後まで約2倍遅延していた。次にLECラット肝のエタノール代謝関連酵素解析を行った結果、アルコール脱水素酵素(ADH)およびアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)活性(とくにlow KmALDH活性)は,対照のWistarラットに比べ約25%低下していた。そこで両酵素の活性低下の原因を明らかにする目的で、LECラット肝のADH-1遺伝子およびALDH-2遺伝子を解析した結果、LECラット肝ADH-1遺伝子の第1イントロンに16塩基のinsertionが存在するとともに、ALDH-2遺伝子の第67codonにCAG→CGG(Gin→Arg)の点突然変異が存在することを見い出した。すなわち、LECラット肝のADH-1およびALDH-2遺伝子は異常を有しているためにこれらの2つの酵素が不活性型となっているものと考えられた。
著者
伊藤 亮 山崎 浩 中谷 和宏 高後 裕 中尾 稔 藤本 佳範 迫 康仁
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究における主要研究テーマは、現在地球規模で流行が深刻化しているエキノコックス症(多包虫症、単包虫症)に関する信頼性の高い免疫診断法(国際標準診断、早期診断、治癒判定法)の開発と実用化である。(1)現在、国際的に最も信頼性が高いと評価されている多包虫症特異診断抗原Em18を遺伝子組み換え抗原(RecEm18)として作成し、その過程でEm18の生化学的特性の解析がなされた。世界各国で別個に検索されてきた診断抗原の中でEm18のB cell epitope活性が最も高いことが判明した(Sako et al.2002.J Clin Microbiol 40,2760-2765)。(2)フランスとのブラインドテストによる共同研究から、RecEm18を用いる血清診断法はフランスにおける多包虫症と単包虫症を100%鑑別できることが判明した(Ito et al.2002.J Clin Microbiol 40,4161-4165)。現在、フランス、スイスにおいて認定された300例以上の多包虫症例の血清学的確認要請を受けている。(3)単包虫症の血清診断法についても遺伝子組み換えAntigen Bを作製した(Mamuti et al.2002.Clin Diag Lab Immunol 9,573-576;Mamuti et al.in prep.)。(4)血清診断上、最も交差反応が高い致死的寄生虫疾患、有鉤嚢虫症に関する遺伝子組み換え抗原を作製した(Sako et al.2000.J Clin Microbiol 38,4439-4444)。血清診断上鑑別を要する多包虫症、単包虫症、有鉤嚢虫症すべてに関する遺伝子組み換え抗原作製に成功し、国際的な評価を得た。現在、合成ペプチド抗原作製を試みている。(5)北海道を中心に、主治医から直接相談を受けた多包虫症疑診例において、Em18抗原を用いる血清検査で多包虫症と他の疾患を術前に100%鑑別し、術前確定血清診断法を確立した。国内での現行の血清検査が確定検査として機能していないことから、Em18を用いる血清検査の導入が望まれる。(6)ミトコンドリアDNA解析により、遺伝子診断法の開発が可能になった。遺伝子解析、遺伝子診断研究も含め、これらの研究成果は現在印刷中を含め国際誌に原著論文総説29編、国際会議録14編、著書5篇として発表した。和文総説、報告書も22編発表した。
著者
鳥本 悦宏 高後 裕
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.10, pp.2005-2009, 2006-10-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
5

鉄欠乏性貧血は最も頻度の高い貧血で, 我が国は欧米と比べてその頻度は高い. 日本人の鉄摂取量は年々減少傾向にあり, 30歳代から40歳代女性の4人に1人が貧血で3人に1人は鉄欠乏状態にある. 小球性貧血によって本症を疑い, 血清フェリチン値, 総鉄結合能により診断する. 血清鉄は本症に特異性が低い. 本症とピロリ菌の関与が注目されている. 治療の基本は経口鉄剤投与で, 非経口的鉄剤投与の場合過剰投与に気をつける.
著者
高後 裕 蘆田 知史 藤谷 幹浩 大竹 孝明 前本 篤男 上野 伸展
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

ヒトおよびマウス腸管を用いた腸内細菌叢の解析から、腸管内とバイオフィルム内の細菌ポピュレーションが異なること、健常人と炎症性腸疾患患者におけるバイオフィルム内の細菌ポピュレーションが異なることが示唆された。宿主由来および腸内細菌由来活性物質の作用解析から、プロバイオティクス由来の腸管保護活性物質が、腸炎による腸管障害を改善することが明らかになった。また、この作用は上皮細胞膜トランスポーターによる細胞内への取り込みや上皮細胞接着分子との結合により仲介されることが明らかになった。以上の研究結果から、プロバイオティクス由来の活性物質を用いた新規腸炎治療開発の基盤的成果が得られた。