著者
進藤 直哉 王子田 彰夫
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.939-943, 2019 (Released:2019-10-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1

標的タンパク質と特異的に反応して、その機能を阻害するコバレントドラッグ(共有結合性医薬品)は、強力で持続する薬効を発揮できる。非特異反応を起こさない安全なコバレントドラッグを生み出すためには、標的タンパク質と特異的かつ効率的に共有結合を形成するための反応化学が重要である。近年、標的タンパク質特異性の高いコバレントドラッグであるtargeted covalent inhibitor (TCI )の創出に向けた反応基(warhead)の開拓が世界中で取り組まれている。
著者
進藤 直哉 王子田 彰夫
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
MEDCHEM NEWS (ISSN:24328618)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.92-99, 2017-05-01 (Released:2019-07-30)
参考文献数
3

コバレント阻害剤は求電子的反応基で標的タンパク質と共有結合を作り、強力で持続的な薬効を示す。毒性の懸念から従来の創薬では避けられる傾向にあったが、標的選択性の高いコバレント阻害剤(TCI)の開発が近年盛んである。マイケルアクセプターはシステイン残基に対する反応基として汎用されているが、薬剤の構造や時間・濃度に依存してさまざまな非特異反応を起こすことが報告されている。筆者らはTCIの標的特異性の向上を目指して新規反応基を探索し、クロロフルオロアセトアミド(CFA)基がチオールと穏やかに反応することを見出した。CFA基を既知のEGFR阻害剤骨格に導入しSARを検討した結果、承認薬と同等のEGFRT790M阻害活性とin vivo抗腫瘍活性を示す化合物NS-062を見出した。また蛍光ラベル化解析により、CFA誘導体がマイケルアクセプターと比べ極めて高選択的にEGFRと共有結合を形成することを確認した。