著者
鬼頭 誠 山城 美代 道山 弘康
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.89, no.2, pp.87-97, 2020

<p>本研究は,ソバのリン吸収特性を明らかにし,沖縄の国頭マージにおいてソバの子実収量が黒ボク土より低かった原因を探ることを目的とした.リン無施肥区において,赤玉土およびバーミキュライトで栽培したソバは,前報のリン無施肥の黒ボク土で栽培した場合と同様に植物体乾物重および子実重ともに著しく減少することが明らかになった.低リン環境では開花から収穫までの根の乾物重増加が大きくなるために収穫期の根の乾物重が高リン環境より重くなることが明らかになった.この根の生長の促進は生育後期の養分の吸収を促進するものと考えられた.また,子実のリン含有率は概ね2.5 g/kg以上に保たれるように吸収されていることに対して,葉と茎ではリン含有率だけでなくリン含有量も開花期から収穫期にかけて減少し,葉と茎からは子実へリンが再移行していることが考えられた.以上の2つのソバのリン吸収の特性から,ソバの低リン抵抗性が獲得されていることが考えられた.Al型難溶性リン施肥では生育および収量の抑制が小さかったが,Fe型難溶性リン施肥では生育および収量が著しく抑制された.よって,ソバはAl型難溶性リンをある程度吸収できるが,Fe型難溶性リンの吸収は困難であるために,根系発達とリンの再移行性はあるものの国頭マージにおいて黒ボク土より収量が低かったことが示唆された.</p>
著者
山城 美代 鬼頭 誠 道山 弘康
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.161-167, 2019

<p>近年,沖縄島北部と宮古島でソバ栽培が始まっている.両地域にはそれぞれ酸性の国頭マージ(赤色土)と概ね中性の島尻マージ(暗赤色土)が分布している.これら土壌は日本のソバ栽培地の多くに分布する黒ボク土とは土壌有機物量やリンの存在形態など,土壌の理化学性に大きな違いがある.本試験では,国頭マージと島尻マージおよび黒ボク土を用いてソバを栽培し,生育量,収量および各種養分吸収量を比較した.ソバの生育量と収量は黒ボク土に比べて島尻マージより国頭マージで低下し,側枝花房数の減少と結実率の低下が主因と考えられた.窒素含有率は茎と子実において国頭マージで低かった.リン含有率は子実では国頭マージが黒ボク土よりわずかに低かったが,茎では有意に高かった.カリウム含有率は全ての器官で黒ボク土が著しく高く,国頭マージ,島尻マージの順に有意に低下していた.施肥を行っていないカルシウム含有率は子実では土壌間に顕著な違いがなかったが,茎では土壌の交換性カルシウム含有率を反映して国頭マージは黒ボク土と同程度であり,島尻マージでは高かった.マグネシウム含有率は全ての器官とも黒ボク土で最も低く,島尻マージ,国頭マージの順に高くなった.子実重,茎重,側枝花房数は土壌の窒素含有率とAl型リン含有率と高い正の相関が認められたが,Fe型リンや可給態リンとは有意な相関がなく,施肥リンがFe型で固定される沖縄の土壌とは異なり, Al型で固定される黒ボク土ではリン吸収が高まることで生育量と収量が増加したと考えられる.</p>
著者
原 貴洋 照屋 寛由 塩野 隆弘 生駒 泰基 手塚 隆久 松井 勝弘 道山 弘康
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.151-158, 2008 (Released:2008-05-23)
参考文献数
36
被引用文献数
2 3

南西諸島に適した普通ソバ品種の導入,開発に資するために,沖縄本島の名護市において国内の普通ソバ5品種を11月上旬,12月下旬,3月上旬の3時期に播種して栽培し,成熟期に農業関連形質を調査した.いずれの作期においても,150粒 m-2 とした密播処理区の子実収量は50 粒m-2 とした粗播処理区に比べて1.3~3.4倍高かった.主茎長,初花節位,主茎花房数,花房あたり開花数は,日本の他地域での試験栽培で報告された値に比べて少なく,その一因として,栽培期間中の短日条件の影響が考えられた.主茎長,主茎花房数,花房あたり開花数,千粒重についての品種間差は,日本の他地域での試験栽培で報告された順序とほぼ一致していたため,他地域において認められる形質の品種間差は南西諸島においても類似していると考えられた.生育期間中に極度の短日条件が続く11月上旬播種,12月下旬播種の作期においては,子実収量と,主茎花房数および個体当たり花房数との間に有意な正の相関が認められた.
著者
道山 弘康 松岡 篤司
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会東海支部会報
巻号頁・発行日
no.122, pp.11-18, 1996-12-10

1) 分げつの節位によるマコモタケ肥大の差異および1株植え付け苗数の違いがマコモタケの肥大に及ぼす影響を明らかにした.2) マコモの場合, 主茎第n葉が抽出するときに分げつ第1葉の抽出する節位は第(n-4)節であり, 分げつ節位が1節下位になると葉数が1枚増加し, イネの様な規則性があることが推定された.3) マコモタケが肥大する茎は基本的には肥大終了期に葉数8枚以上になる茎であることが示された.本実験では最終主茎葉数19.3枚のとき第8節以下の分げつであった.このような茎では伸長節間数がイネと同様4〜5節あり, マコモタケ内には最上位抽出葉まで2〜3節, その先に2〜3節あった.4) 葉数が8枚未満のものはイネでいう「遅れ穂」的なものであり, 肥大開始が遅れることがわかった.5) 第3節以上の分げつでは上位節分げつほどマコモタケが小さかった.これは, マコモタケ肥大茎の伸長茎部の節間数が4〜5節で一定であることから, 上位節分げつほど根の発生する不伸長茎部の節数が少なくなり, 地中からの養分吸収量が少なくなることによると思われた.6) 1株苗数1本〜5本植えの範囲では苗数が多いとマコモタケ数が多くなるが, 30g以上の大きなマコモタケの比率が小さくなった.7) 3本植えまでは全マコモタケ数が多いため, 大きなマコモタケ数も多くなった.しかし, 5本植えになると大きなマコモタケの比率の減少を全マコモタケ数の増加が補えなくなることによって, 大きなマコモタケ数および重さが減少した.これは, マコモ栽培上好ましくないと思われた.