著者
原 貴洋 松井 勝弘 生駒 泰基 手塚 隆久
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.189-195, 2009-04-05
参考文献数
19
被引用文献数
1 6

西南暖地の春まき栽培向けに育成された「春のいぶき」と国内品種の収量関連形質と穂発芽の品種間差異を明らかにするために,4ヵ年にわたって熊本県合志市において4月中旬播種の作期で栽培試験を実施した.中間夏型品種の子実重は,他の生態型の品種より高かった.春のいぶきの子実重は,夏型品種や秋型品種より有意に高く,中間夏型品種と同等であった.中間夏型品種と春のいぶきは夏型品種と比べて,花房数が多く,花房当たり子実数と千粒重は同程度であった.鹿屋在来と中間秋型品種の常陸秋そばは,調査を行った7月上旬までに成熟に至らず,子実重は他の生態型の品種より低かった.鹿屋在来と常陸秋そばは他の生態型の品種と比べて,花房数は多かったが,結実率が低く花房当たり子実数が少なかった.春のいぶきの穂発芽は,全ての試験年次で,夏型品種および中間夏型品種より有意に少なかった.穂発芽と子実重の年次間相関は,千粒重や草丈の年次間相関と同程度であったため,穂発芽と子実重の品種間差異は年次の影響を受けにくいと考えられた.春のいぶきは既存品種に比べて,春まき栽培における難穂発芽性と多収性をバランスよく兼備する品種であり,実用性が高いと判断された.
著者
持田 秀之 小林 透 立石 靖 生駒 泰基
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.62, pp.71-75, 1996-05-15
被引用文献数
1

カンショの前作としては,収量面ではイタリアンとラッカセイが適していること,カンショーバレイジョ,カンショーキャベツの1年2作体系では線虫密度が高くなり,低収となることがわかった。さらに,カンショーイタリアンにおける多収は,イタリアン跡地土壌の高いカリ含量と好適な養分バランスによってもたらされていることを示唆する結果を得た。
著者
塩野 隆弘 原 貴洋 山元 伸幸 原口 暢朗 生駒 泰基
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会誌 (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.75, no.9, pp.817-820,a2, 2007-09-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
11

サトウキビ栽培圃場における労力的・経済的負担が少ない営農的赤土流出防止対策法として, 草生帯とソバ栽培導入による対策技術に着目し, これらの赤土流出に対する有効性とその負担について調査した。野外試験の結果, 設置幅0.5mの草生帯とソバ栽培導入による対策の赤土流出軽減率はそれぞれ68%と39%で, 赤土流出に対する有効性が示唆された。また, これら対策の実施による負担費用はサトウキビの粗収益の3~4%と試算された。ソバ栽培導入による対策では, ソバワラ生産量の増加によって対策効果の向上が期待でき, ソバ子実収穫量の増加により負担経費の削減が期待できることが示唆された。
著者
原 貴洋 照屋 寛由 塩野 隆弘 生駒 泰基 手塚 隆久 松井 勝弘 道山 弘康
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.151-158, 2008 (Released:2008-05-23)
参考文献数
36
被引用文献数
2 3

南西諸島に適した普通ソバ品種の導入,開発に資するために,沖縄本島の名護市において国内の普通ソバ5品種を11月上旬,12月下旬,3月上旬の3時期に播種して栽培し,成熟期に農業関連形質を調査した.いずれの作期においても,150粒 m-2 とした密播処理区の子実収量は50 粒m-2 とした粗播処理区に比べて1.3~3.4倍高かった.主茎長,初花節位,主茎花房数,花房あたり開花数は,日本の他地域での試験栽培で報告された値に比べて少なく,その一因として,栽培期間中の短日条件の影響が考えられた.主茎長,主茎花房数,花房あたり開花数,千粒重についての品種間差は,日本の他地域での試験栽培で報告された順序とほぼ一致していたため,他地域において認められる形質の品種間差は南西諸島においても類似していると考えられた.生育期間中に極度の短日条件が続く11月上旬播種,12月下旬播種の作期においては,子実収量と,主茎花房数および個体当たり花房数との間に有意な正の相関が認められた.
著者
比屋根 真一 真境名 元次 比嘉 明美 儀間 靖 新里 良章 生駒 泰基
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.74, pp.39-42, 2008-05-15

沖縄本島南部地域のサトウキビ畑における曝気処理水の散布時期と量を求めるため,ジャーガルにおいてタンクモデルを適応した.本モデルによる土壌水分量のRMSEは2.5%であり,タンクモデルによる土壌水分量や水収支量の推定は可能であると判断した.過去30年間の降水量をタンクモデルに入力し,作土層からの浸透水の発生時期を検討すると,梅雨時期の5〜6月と台風等の豪雨が認められる8〜9月に多く認められた.月あたりの浸透水量と降水量の関係を検討すると,両者の間に統計的に有意な正の相関関係が認められ,浸透水量=0.8061×降雨量-71.776の関係式が得られた.この式から浸透水が認められない降水量は89mm/月となった.日あたりの降水量と浸透水量の関係から,土壌水分の違いによる作土層から浸透水が認められない降水量は,初期しおれ点付近では27.2mm/日,圃場容水量から数日後のそれは4.5mmとなった.以上より,タンクモデルを用いてジャーガルにおける曝気処理水の散布時期と量が明らかとなった.