- 著者
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道本 徹
- 出版者
- 一般社団法人 日本家政学会
- 雑誌
- 日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.6, pp.577-583, 2001-06-15 (Released:2010-03-10)
- 参考文献数
- 8
前稿の航空安全報告制度GAIN (Global Aviation Information Network) でもご紹介したように世界の商用ジェット航空機による死亡事故の発生率は, ボーイング707, ダグラスDC-8等の第一世代のジェット機が導入された1960年前後に比べ, 主として安全技術の向上により, 第二世代機 (727, DC-9), 初期ワイドボディ機 (747, DC-10, A300) が導入されるとともに事故率が大幅に下がり, 1985年頃まで順調に低下してきていた.ところが, この事故率の低下がこの10数年頭打ちになってきており, 事故率がこのまま推移すると航空需要が増加するにつれ, 死亡事故件数が増加してしまうことが懸念された.このため航空界の最大手国である米国では1997年, 当時のアル・ゴア副大統領のもとに航空の安全委員会が設けられ, 向こう10年間に事故率を80%削減する目標がたてられた.最近の航空事故の分析によると約85%は何らかの意味でヒューマン・ファクターが要因となっており, 事故率を減らすためにはこのヒューマン・ファクターの問題をよく理解し, しかも重大な事故の起こる前にプロアクティブに対策をとることが有効とされている.本稿では航空の専門家ではない利用される立場の皆様に, GAINの作成した航空安全に関するハンドブックをもとに航空界におけるヒューマン・ファクターの取り組みについてご紹介すると共に, この取り組みは航空界以外の分野においても広く応用されうるものであることをお伝えするものである.