著者
藤田 由起 遠矢 浩一
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.223-234, 2022-02-28 (Released:2022-08-31)
参考文献数
21
被引用文献数
1

本研究の目的は、わが国においてヤングケアラー(YC)的役割を担いつつ幼少期を過ごした人々のケア役割や家族関係についての認識の違いが、精神的健康に及ぼす影響について検討することであった。18歳以上の男女にWEB質問紙調査を実施し、障害・疾患を有する家族と暮らした経験のある79名、経験のない100名から有効回答を得た。その結果、YC的役割を担う子どもが経験しうる心理的負担は、単にケア役割の量的程度に左右されるのではなく、ケア役割への主観的評価や母親・きょうだいとの関係性といった複層的な家族構造によって影響を受けることが示唆された。特に、母親のYC的役割を担う子どもに対する配慮性や、きょうだいとの親密な関わりが、そのような子どもの精神的健康に関連することが推察された。このことから、子どものケア役割への心理的負担の度合いや、個々の子どもの家庭環境について、十分に考慮し支援することが必要と考えられた。
著者
岩男 芙美 遠矢 浩一
出版者
日本リハビリテイション心理学会
雑誌
リハビリテイション心理学研究 (ISSN:03895599)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.63-74, 2021-01-14 (Released:2022-02-17)
参考文献数
12

援助者の言語的介入および被援助者の不安特性と不安へのコーピングスタイルが援助場面評価へ与える影響を検討した。大学生に対し,相談内容(生活・友人の2種)及び援助者の言語的介入(承認・解決・整理の3種)が異なる援助場面の文章を提示し,場面想定法によって援助場面への評価を測定した。不安へのコーピングスタイルの分類では,対処多様型,問題焦点対処型,葛藤型の3タイプが抽出された。これらと援助場面評価の関連を検討したところ,スタイルによって異なる関連の仕方が示された。友人に関する援助場面において,対処多様型は承認されることで肯定的に援助場面を評価する一方,解決策の提示には否定的であった。葛藤型は,生活に関する援助場面自体を否定的に評価した。自身の問題への被援助者なりの対処の仕方に着目し,被援助者のコーピングスタイルを考慮しながら,援助者の介入を調整する必要があることが考察された。