著者
遠藤 勝久 清田 浩 小野寺 昭一
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.522-528, 1992-04-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
16

本研究は尿を培地とした場合の抗菌剤の抗菌力測定が, 日本化学療法学会の定めたMueller-Hinton brothを用いた標準法とどのように異なるかを比較し, 標準法における問題点を検討したものである.さらに尿培地の物理化学的条件として, pH, マグネシウム濃度およびカルシウム濃度が尿中抗菌力測定に及ぼす影響についても検討した.尿培地は腎機能正常な健康成人男子より採取した尿を使用し, chelatingresinにより2価陽イオンを除去した.この尿をもとに, 尿のpH, マグネシウム濃度およびカルシウム濃度を変化させ抗菌力の変化を観察した.被験菌株は大腸菌を使用し, 抗菌剤はニューキノロン剤を採用した.試験管内抗菌力は日本化学療法学会の定めた標準法を用いさらに尿中での抗菌力測定も行った.その結果, Mueller-Hintonbrothを用いた試験管内抗菌力と異なる成績が得られ, 尿培地がアルカリ性に傾く程, また尿中マグネシウム濃度が低い程, 抗菌力は優れていた.尿培地中カルシウム濃度は影響を示さなかった.以上より, 尿路感染症における菌の感受性試験において, 尿中での抗菌力を正当に評価するためにはMueller-Hintonbrothでの抗菌力測定の代わりに, 尿または尿類似の培地で測定し抗菌化学療法を進めることが理想的であり, 培地のpHおよびマグネシウム濃度の影響を考慮し培地の一定化を図ることが重要であると考えられた.