著者
佐藤 博信 松浦 尚志 都築 尊 松永 興昌 片渕 三千綱 生山 隆
出版者
福岡歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

老年性骨粗鬆症モデルマウス(SAMP6)の下顎骨が骨粗鬆症様の骨の性質を有する可能性を組織学的および生化学的に検証した.コントロールマウス(SAMR1)と比べると,SAMP6の下顎骨は骨形態計測学的に骨量が少なく,骨基質の透過型電子顕微鏡像で明らかなコラーゲン線維の狭小化が認められた.両マウスの下顎骨の骨基質の生化学分析によると,その大部分はI型コラーゲンであった.SAMP6の下顎骨は,SAMR1に比べ,基質中のコラーゲン量が少なく,またコラーゲンの翻訳後修飾の一つであるハイドロキシリシンの量が多く認められた.リシンのハイドロキシル化が亢進するとコラーゲン線維の狭小化が起こることが報告されており,SAMP6の下顎骨のコラーゲンに認められるコラーゲン線維の狭小化はおそらくリシンのハイドロキシル化の亢進が関与しているものと推察された.リシンのハイドロキシル化の亢進は,同マウスおよび骨粗鬆症患者の大腿骨でも認められることが報告されており,骨粗霧症の骨質に大きく関与するコラーゲン性状に,コラーゲン翻訳後修飾の一つであるリシンのハイドロキシル化が寄与している可能性が示唆された.本研究の結果から,老年性骨粗鬆症モデルマウスの下顎骨は骨量的にも骨質的にも骨粗鬆症様の性質を有していることが明らかとなった.骨粗鬆症患者の顎骨も量的のみならず質的に低下している可能性が考えられ,今後の臨床研究により骨粗鬆症患者での傾向を明らかにしていくとともに,ゲノム解析による骨質診断法の確立とそれに対応した歯科治療の開発へと発展させていける可能性が見出せた.