著者
髙江洲 雄 谷口 祐介 平川 智裕 一志 恒太 城戸 寛史 佐藤 博信 松浦 尚志
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.230-236, 2021 (Released:2021-07-30)
参考文献数
22

目的:コンポジットレジンブロックによる小臼歯CAD/CAM冠(以下,CAD/CAM冠)の短期間の臨床報告はあるものの,接着処理などの条件が統一されていないため永続性には不明確な部分が多い.本研究では,接着処理を一定の条件下で装着した小臼歯CAD/CAM冠の予後評価を行う事を目的とした.方法:2014年4月1日から2020年3月31日までの6年間に福岡歯科大学医科歯科総合病院補綴科・インプラント科の歯科医師16名が装着した小臼歯CAD/CAM冠の装着数,性別,装着時年齢,支台歯および対合歯の状態,残存歯数,歯種,アルミナサンドブラスト処理,リン酸処理,シラン処理の接着処理をすべて行った群(ガイドライン順守群)と接着処理のいずれか一つを行わなかった群(ガイドライン不順守群)に分け調査した.また.生存期間とそれに関連する因子をKaplan-Meier法とCox比例ハザード分析を用いて検討した.結果:6年累積生存率は93.6%,成功率は88.8%であった.ガイドライン順守群とガイドライン不順守群の6年累積成功率はガイドライン順守群が92.7%,ガイドライン不順守群が79.5%であり,統計学的な有意差を認めた.Cox比例ハザード分析を用いた結果,接着処理の有無で生存期間と有意な関連を認めた.結論:接着処理の手順を遵守することが,長期予後を得るために重要である可能性が示唆された.
著者
山本 司将 中村 健太郎 山口 雄一郎 松浦 尚志
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.135-142, 2019 (Released:2019-05-02)
参考文献数
11

目的:本研究の目的は超高速MRI装置を用いて咀嚼運動時における顎関節部の撮像を行い,咀嚼運動時における下顎頭と関節円板の動態を読影するとともに,下顎頭および関節円板が移動した距離を測定できるかどうかを分析することである.材料と方法:被験者は健常有歯顎者の成人男性歯科医師1名とし,高速撮像が可能なMRI装置を用いて,顎関節部の習慣性開閉口運動ならびに被験食品(ガムとカマボコ)の咀嚼運動について撮像を行った.撮像によって得られたDICOMデータからDICOMビューア上で顎関節部の動態を読影し,下顎頭と関節円板の移動距離を計測した.考察:顎関節部を超高速MRI装置で撮像を行うことで,従来行われてきた顎関節の形態や開閉口運動の読影のみではなく,咀嚼運動時における下顎頭と関節円板の運動(顎関節部の動態)を読影することができた.結果として咀嚼運動時における下顎頭と関節円板の移動距離を計測することが可能であり,その移動距離がわずかであることがわかった.結論:咀嚼運動時の顎関節を超高速MRI装置で連続撮像することで下顎頭と関節円板の運動(顎関節部の動態)を読影することができ,同時に下顎頭と関節円板の移動距離を計測することが可能となった.
著者
佐藤 博信 松浦 尚志 都築 尊 松永 興昌 片渕 三千綱 生山 隆
出版者
福岡歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

老年性骨粗鬆症モデルマウス(SAMP6)の下顎骨が骨粗鬆症様の骨の性質を有する可能性を組織学的および生化学的に検証した.コントロールマウス(SAMR1)と比べると,SAMP6の下顎骨は骨形態計測学的に骨量が少なく,骨基質の透過型電子顕微鏡像で明らかなコラーゲン線維の狭小化が認められた.両マウスの下顎骨の骨基質の生化学分析によると,その大部分はI型コラーゲンであった.SAMP6の下顎骨は,SAMR1に比べ,基質中のコラーゲン量が少なく,またコラーゲンの翻訳後修飾の一つであるハイドロキシリシンの量が多く認められた.リシンのハイドロキシル化が亢進するとコラーゲン線維の狭小化が起こることが報告されており,SAMP6の下顎骨のコラーゲンに認められるコラーゲン線維の狭小化はおそらくリシンのハイドロキシル化の亢進が関与しているものと推察された.リシンのハイドロキシル化の亢進は,同マウスおよび骨粗鬆症患者の大腿骨でも認められることが報告されており,骨粗霧症の骨質に大きく関与するコラーゲン性状に,コラーゲン翻訳後修飾の一つであるリシンのハイドロキシル化が寄与している可能性が示唆された.本研究の結果から,老年性骨粗鬆症モデルマウスの下顎骨は骨量的にも骨質的にも骨粗鬆症様の性質を有していることが明らかとなった.骨粗鬆症患者の顎骨も量的のみならず質的に低下している可能性が考えられ,今後の臨床研究により骨粗鬆症患者での傾向を明らかにしていくとともに,ゲノム解析による骨質診断法の確立とそれに対応した歯科治療の開発へと発展させていける可能性が見出せた.