著者
市川 太智 鄭 基浩
出版者
一般社団法人 日本産業技術教育学会
雑誌
日本産業技術教育学会誌 (ISSN:24346101)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.179-185, 2017-09-30 (Released:2019-12-27)
参考文献数
12

木材はストローを束ねたような多孔質の構造であり,スギのような低比重材は空隙率が高いことから,繊維飽和点から2倍以上の重量の水を保持できる。また,液体注入メカニズムにより仮道管内部への塩分の注入が簡単にでき,かつ,表面張力と毛細管現象により長期間の水の保持も可能である。この特徴に着目し,木材を化学電池の容器に用いる事で,非常用の電源として活用可能な複合型教材を提案することを本研究の最終目的とした。そこで,電極として銅板と亜鉛板を,電解液として食塩水を用いた木電池を開発し,教材化にむけて最適発電条件の究明と教材開発を行った。その結果,木電池は電圧が約770mVで20日以上も発電し6 個直列にすることでLEDの点灯も可能であった。また,教材例として提案した1石トランジスタAMラジオは長時間木電池で駆動でき,かつ良い受信性能から教材として高い可能性を示唆した。
著者
鄭 基浩 黄 権煥 小松 幸平
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.153-159, 2006 (Released:2006-05-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1 3

第1報1)に引き続き,ホゾ-込み栓接合部における接触応力を測定することによって,周期的な相対湿度(RH:Relative Humidity)変化が接合部間の接触応力に及ぼす影響について検討した。さらに,増し打ちによる接触応力の上昇効果を調べると共に,スギ圧縮木材を用いた込み栓が接合部の接触応力の緩和防止に及ぼす影響について評価した。その結果,スギ圧縮込み栓を挿入した接合部の接触応力は,RH40%からRH80%への変化によってシラカシのそれより高い40Nを示し,RH85%で56Nまで到達した。かつRH40%における接触応力は,シラカシの接合部では初期の14Nが第2周期に13Nへ減少した反面,圧縮木材の場合は初期20Nであった値が第2周期目には27Nへ上昇した。このような結果から圧縮木材の込み栓は,周期的な相対湿度変化により接合部の接触応力緩和の防止効果があることが明らかになった。一方,シラカシとスギ圧縮木材の拘束状態において,相対湿度を周期的に繰り返し変化させると(RH40%-80%),シラカシは第3周期目から最大膨潤力(σmax)が3.3MPaまで低下したが,圧縮木材は第4周期目まで低下することもなく同じ傾向を示し,4.6MPaまで到達した。これによって圧縮木材がシラカシより応力緩和防止の効果を持つことが明らかになった。
著者
鄭 基浩 北守 顕久 小松 幸平
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.306-312, 2007 (Released:2007-11-28)
参考文献数
14
被引用文献数
3 3

伝統木造構法において,継ぎ手,仕口部の長期における緩みとクリープの発生は剛性の低下などをもたらす無視できない問題である。本研究では,伝統的な金輪継ぎ手接合部のクリープ性状を把握し,向上させる事を目的として,込み栓材としてスギ圧縮木材を導入し,その変形回復特性を利用して接合部の抗クリープ性能を向上させることが可能かどうかの検証を行った。実験の結果,シラカシ込み栓挿入金輪継ぎ手の接触応力は,挿入直後から大幅に減少し,周期的湿度変化により19%まで低下しその後も減少傾向にあったが,スギ圧縮込み栓を挿入した接合部は,湿度変化を受けても59%を維持し,長期に亘り接合部の剛性を維持することが明らかとなった。一方,継ぎ手接合部のクリープ撓みは,湿度変化第3期目からシラカシ込み栓挿入型において徐々に増大したのに対し,スギ圧縮込み栓挿入型では,全周期においてクリープの増大が見られなかった。高密度に圧縮されたスギ圧縮材は横圧縮応力緩和の発生を抑えることができ,その回復特性と合わせて,大きな横圧縮応力を持続的に受ける耐圧特性に優れた接合具であることが確認された。