著者
鈴木 祥之 鎌田 輝男 小松 幸平 林 康裕 後藤 正美 斎藤 幸雄
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、伝統構法木造建物に高い耐震性能を与える耐震設計法、耐震補強法および新しい耐震補強用の構造部材の開発を行い、また京町家や社寺建築など文化財的木造建築物の保全・補強に役立てることを目的として、以下の研究を実施した。(1)伝統構法木造建物の耐震性能評価法の開発:E-ディフェンスで実施した京町家ならびに伝統構法木造住宅の実大振動台実験で耐震性能評価法の検証を行った。また、2007年の能登半島地震、新潟県中越沖地震の被害調査を実施し、民家、社寺建築物の構造詳細により耐震性能評価を行った。(2)木材の構造的劣化診断:木造部材の構造的劣化特性を調査し、耐久性の検査方法を確立し、構造劣化の診断法を開発した。2007年能登半島地震被害調査から腐朽・蟻害などの被害が顕著であった民家を対象に構造部材の劣化程度を調べるとともに軸組の耐震性能に及ぼす影響を調べた。(3)耐震性能設計法の開発:伝統構法木造建築物の耐震性能設計法として、限界耐力計算に基づく設計法の開発を行った。また、2007年6月に建築基準法が改正され、伝統構法の設計において非常に大きな社会問題になった。これに伴い、限界耐力計算による耐震設計法の検討を行うともに、伝統構法木造建築物の設計法の課題となっていた柱脚の滑りや水平構面の変形などの研究を進め、設計法の実用化を図ってきた。(4)既存建物の耐震補強法の開発:伝統構法木造建物に適用可能な耐震補強用の構造部材として乾式土壁を用いた小壁や袖壁やはしご型フレームの開発を行った。振動台実験などで補強効果を検証するとともに、住宅用と社寺など大型木造建築物用として実用化を図った。(5)文化財・歴史的木造建築物の保全・補強への応用:実在の寺院建築物の耐震性能を評価し、耐震補強法の開発を行い、実用化した。この耐震補強法は、有用な方法であり、多くの社寺建築物などの文化財・歴史的木造建築物に応用可能である。
著者
鄭 基浩 黄 権煥 小松 幸平
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.153-159, 2006 (Released:2006-05-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1 3

第1報1)に引き続き,ホゾ-込み栓接合部における接触応力を測定することによって,周期的な相対湿度(RH:Relative Humidity)変化が接合部間の接触応力に及ぼす影響について検討した。さらに,増し打ちによる接触応力の上昇効果を調べると共に,スギ圧縮木材を用いた込み栓が接合部の接触応力の緩和防止に及ぼす影響について評価した。その結果,スギ圧縮込み栓を挿入した接合部の接触応力は,RH40%からRH80%への変化によってシラカシのそれより高い40Nを示し,RH85%で56Nまで到達した。かつRH40%における接触応力は,シラカシの接合部では初期の14Nが第2周期に13Nへ減少した反面,圧縮木材の場合は初期20Nであった値が第2周期目には27Nへ上昇した。このような結果から圧縮木材の込み栓は,周期的な相対湿度変化により接合部の接触応力緩和の防止効果があることが明らかになった。一方,シラカシとスギ圧縮木材の拘束状態において,相対湿度を周期的に繰り返し変化させると(RH40%-80%),シラカシは第3周期目から最大膨潤力(σmax)が3.3MPaまで低下したが,圧縮木材は第4周期目まで低下することもなく同じ傾向を示し,4.6MPaまで到達した。これによって圧縮木材がシラカシより応力緩和防止の効果を持つことが明らかになった。
著者
鈴木 祥之 小松 幸平 下川 雄一 中尾 方人 北守 顕久 秦 正徳 中治 弘行 森 拓郎 須田 達 松本 慎也 向坊 恭介 向井 洋一 山田 耕司 後藤 正美 斎藤 幸雄 斎藤 幸雄 棚橋 秀光
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2007

伝統構法木造建築物では、仕口・接合部や耐力壁など構造ディテールの性能評価を含めた総合的かつ合理的な構造設計法は、いまだ確立されていない。本研究では、木材のめり込みなどによる仕口・接合部の耐力発現のメカニズムおよび土塗り壁や木造軸組の力学特性や破壊性状を実験的かつ解析的に解明するとともに、構造ディテールに基づく伝統木造建築物の設計法に適用するための評価手法を開発した。
著者
鄭 基浩 北守 顕久 小松 幸平
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.306-312, 2007 (Released:2007-11-28)
参考文献数
14
被引用文献数
3 3

伝統木造構法において,継ぎ手,仕口部の長期における緩みとクリープの発生は剛性の低下などをもたらす無視できない問題である。本研究では,伝統的な金輪継ぎ手接合部のクリープ性状を把握し,向上させる事を目的として,込み栓材としてスギ圧縮木材を導入し,その変形回復特性を利用して接合部の抗クリープ性能を向上させることが可能かどうかの検証を行った。実験の結果,シラカシ込み栓挿入金輪継ぎ手の接触応力は,挿入直後から大幅に減少し,周期的湿度変化により19%まで低下しその後も減少傾向にあったが,スギ圧縮込み栓を挿入した接合部は,湿度変化を受けても59%を維持し,長期に亘り接合部の剛性を維持することが明らかとなった。一方,継ぎ手接合部のクリープ撓みは,湿度変化第3期目からシラカシ込み栓挿入型において徐々に増大したのに対し,スギ圧縮込み栓挿入型では,全周期においてクリープの増大が見られなかった。高密度に圧縮されたスギ圧縮材は横圧縮応力緩和の発生を抑えることができ,その回復特性と合わせて,大きな横圧縮応力を持続的に受ける耐圧特性に優れた接合具であることが確認された。
著者
小松 幸平 森 拓郎 北守 顕久 荒木 康弘
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

CO_2を長期間固定する方法として、戸建て住宅や大規模な公共建築物を全て木造建築とすることは有効な方法であり、既に2006年に「木造低層公共建築物を促進させる法律」が施行されている。本研究はこの法律に沿って、高強度・高剛性、そして大地震にたいしても崩壊せず地震後に現状復帰可能な木造ラーメンフレーム構造を戸建て木造軸組構造住宅から3階建て大規模集成材構造建築物に至るまで安心・安全に適用できる技術を開発したものである。