著者
鄭 新培
出版者
大東文化大学
雑誌
語学教育研究論叢 (ISSN:09118128)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.51-66, 2004-03-10

経済改革開放により、中国全国経済に発展のアンバランスが生じ、沿海部・中部と西部の経済格差が日増しに突出していった。1980年代末から、中・西部貧困地帯の農民は大量に都市へ出稼ぎに行った。現在、農村余剰労働力は1億人以上と言われ、彼らは都市へ流れて行き、"民工" (出稼ぎ労働者) として働いている。その一部は長期滞在のため子供も呼び寄せることになる。中国の現行固定戸籍制度の規定により、農村戸籍の人は都市戸籍に変更してはならず、子供たちは居住地の戸籍ではないため、当地の学校に入学できない。但し、個別のケースとして、労働者の平均年収2〜3年分の寄付金などを納めれば入学できる者もいる。しかし結局、"民工" の手により作られた非合法の "打工子弟学校" (出稼ぎ労働者の子女の学校) に入学するしかなくなる。これらの学校は空き地や荒廃した建物を借りて教育の場として使用している。彼らは政府からの援助なしに自力で学校を運営している。民工たちは経済発展に貢献し、税金を当地に納めているにもかかわらず、子女は義務教育の権利を与えられない。2001年4月から、私は北京大学で研究員として滞在した半年間、出稼ぎ労働者の子女教育問題を研究し、学校へ調査にも出かけた。出稼ぎ労働者の子女教育問題と実態をここで検証したいと思う。
著者
鄭 新培
出版者
大東文化大学
雑誌
大東文化大学紀要. 社会科学 (ISSN:09122338)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.171-176, 2003-03-31

中国社会はこの二十年間大きく変化した。80年代から改革開放政策を押し進め、自由経済体制への転換をはかったことによって高度成長が続き、国際間の経済、文化、人的な交流が盛んになり、かつての中国社会の面影も見えなくなるほど大きく変わり、かつ新しい社会が完成しつつある。これには、香港、台湾、マカオ、東南アジアを中心とする華人経済が大きな役割を果たした。それと同時に新しい社会に対応するための華人は、海外での独有の文化、言語も中国に伝入した。中国の社会変化に大いに影響を与えた。勿論、世界各国、とくにアメリカや日本の影響も大きかった。たとえば、生活様式、服装、居住、生活用品、芸術文化、音楽とくにロック、流行歌などがある。その上言葉も影響を与えた。たとえば、日本語の「人气」、「料理」、「〓拉OK」、「写真」、「独身貴族」、英語の「媽〓」、「OK」、拜拜」、香港、台湾などの華人圏の「超級市場」、「發廊」、「巴士」、「的士」、「買単」などがある。これらの新しい社会現象の変化につれて、中国自身も沢山の新しい言葉が生れた。例えば、「小皇帝」(わがまま甘い子)、「灰色收入」(不正収入)。さらに解放後、使われなくなった言葉が復活した。例えば、「老板」(オーナー、主人)、「小姐」(お嬢さん)。ある意味で、中国は今新しい文化と言語の開花の時代を迎えているどころだ。ここでは近年来、社会現象を反映する新しい語言についていくつか代表的なものを挙げて中国の社会問題の一端を見ることにする。言語と社会生活の密切な関係を検証しようと思う。