著者
長谷川 千春
出版者
大東文化大学語学教育研究所
雑誌
語学教育研究論叢 (ISSN:09118128)
巻号頁・発行日
no.33, pp.91-105, 2016

魔術師マーリンにはアーサー王宮廷の騎士や王の言動にも影響を及ぼす言葉の力がある。中世ウェールズの伝説的予言者ミルズィン(Myrddin)が源泉とされているマーリンに関する伝説・文学作品は、ブリテン島内だけでなく、ヨーロッパ大陸へと広がっていき、ラテン語、フランス語、英語など、複数の言語で成文化された。このように地理的・言語的にも広範囲に発展をした中世アーサー王文学の中で、マーリンはブリテン島ケルト社会で実権を握っていたドルイド僧と同一視されることがある。その一方で、15世紀後半サー・トマス・マロリー(Sir Thomas Malory)の『アーサー王の死』(Le Morte Darthur)におけるマーリンは、魔術師、予言者、ドルイド僧の範疇を超え、軍師のような一面も見せる。本稿では、マーリン像の起源と発展を確認した上で、彼の権威ある言葉が、ケルト文化やキリスト教などに強く影響されながらも、いかに騎士社会で異彩を放っているかについて論じる。
著者
福盛 貴弘
出版者
大東文化大学語学教育研究所
雑誌
語学教育研究論叢 = The journal of Institute for Language and Education Research (ISSN:09118128)
巻号頁・発行日
no.35, pp.25-38, 2018

授受動詞のテストについて判断がゆれる例の分析を行った。「花子さんは私の妹においしいおやつを( )。」では、学生は複数の解釈に分かれる。この文法性判断について最適性理論での説明を試みた。
著者
福盛 貴弘
出版者
大東文化大学語学教育研究所
雑誌
語学教育研究論叢 = The journal of Institute for Language and Education Research (ISSN:09118128)
巻号頁・発行日
no.36, pp.305-324, 2019

上方芸能における音曲漫才のテーマソング、歌謡曲、CMソング、ドラマのナレーションなどに採用されている都都逸を紹介する
著者
鄭 新培
出版者
大東文化大学
雑誌
語学教育研究論叢 (ISSN:09118128)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.51-66, 2004-03-10

経済改革開放により、中国全国経済に発展のアンバランスが生じ、沿海部・中部と西部の経済格差が日増しに突出していった。1980年代末から、中・西部貧困地帯の農民は大量に都市へ出稼ぎに行った。現在、農村余剰労働力は1億人以上と言われ、彼らは都市へ流れて行き、"民工" (出稼ぎ労働者) として働いている。その一部は長期滞在のため子供も呼び寄せることになる。中国の現行固定戸籍制度の規定により、農村戸籍の人は都市戸籍に変更してはならず、子供たちは居住地の戸籍ではないため、当地の学校に入学できない。但し、個別のケースとして、労働者の平均年収2〜3年分の寄付金などを納めれば入学できる者もいる。しかし結局、"民工" の手により作られた非合法の "打工子弟学校" (出稼ぎ労働者の子女の学校) に入学するしかなくなる。これらの学校は空き地や荒廃した建物を借りて教育の場として使用している。彼らは政府からの援助なしに自力で学校を運営している。民工たちは経済発展に貢献し、税金を当地に納めているにもかかわらず、子女は義務教育の権利を与えられない。2001年4月から、私は北京大学で研究員として滞在した半年間、出稼ぎ労働者の子女教育問題を研究し、学校へ調査にも出かけた。出稼ぎ労働者の子女教育問題と実態をここで検証したいと思う。
著者
ケウワッタナ ピヤトーン
出版者
大東文化大学語学教育研究所
雑誌
語学教育研究論叢 (ISSN:09118128)
巻号頁・発行日
no.33, pp.19-35, 2016

本稿では、「のだから」の意味・用法を中心に考察し、タイ語における表現と比較する。「のだから」は、文末表現「のだ」と原因・理由表現「から」から構成されている表現であるが、「のだから」の意味・用法は通常の原因・理由を表す「から」や「ので」とは異なっている。「のだから」は、判断系の原因・理由表現の中でも代表的なもので、原因・理由を表すほかに、判断・根拠も表す。タイ語では、このタイプの原因・理由表現に類似している表現は対応していないため、一般的にどのような表現に近いかは不明である。タイ語における因果関係を表す表現の中に、「のだから」に近い働きをするものがあるかどうかを検討する。

1 0 0 0 IR 奇数と偶数

著者
高橋 弥守彦
出版者
大東文化大学語学教育研究所
雑誌
語学教育研究論叢 = The journal of Institute for Language and Education Research (ISSN:09118128)
巻号頁・発行日
no.34, pp.1-18, 2017

中日両国は東アジアにあり、共に黄色人種であるが、中国人は偶数、日本人は奇数を好む傾向にある。中日両国の数字文化は老荘思想に基づいているが、中国人が偶数を好むのは対の文化(天と地、男と女、東西南北、春夏秋冬)、日本人が奇数を好むのは非対の文化(これ・それ・あれ、木・林・森)に由来する。これは両国の漢詩や俳句に現れている。両国は数字文化に対して異なる観点をもっているが、お互いの数字文化を理解できることを論述している。
著者
ミックメーヒル カイラン
雑誌
語学教育研究論叢 (ISSN:09118128)
巻号頁・発行日
no.20, pp.107-126, 2003-02-10

日本のマスコミや大衆文化においては、方言に対する先入観を生かし、独特の女性キャラクターを描くことが多い。本論では、下町や東北の方言のどこが、共通語の話者に、強い、暖かい、漫才的、荒っぽい、素直、あるいは女らしくない、などというイメージを与えるのかを、スタイリステックな視点から探る。演歌「麦畑」の分析で、共通語と地方語における丁寧語と性差の違いが、地方語に対するイメージの形成の、主な原因になっているのではないかと提案する。The stereotypes associated with certain dialects are used in Japanese popular culture to sketch out particular kinds of female characters. In this article, I have taken a stylistic approach to explore the question of what it is exactly about dialects such as that of Shitamachi or Tohoku that create an impression of toughness, humor, friendliness, directness, and vulgarity, as well as gender deviation, in Standard Japanese speakers. Based on a stylistic analysis of the popular song "Mugibatake", I suggest that the lack of exactly equivalent gender and register markers between Standard Japanese and rural dialects such as Tohoku's can account for the way rural dialects are popularly perceived.
著者
李 昕晧
雑誌
語学教育研究論叢 (ISSN:09118128)
巻号頁・発行日
no.36, pp.87-102, 2019-03-01

≪政事要略≫は日本平安時代の貴重な政務参考書と法制類の漢文史料著作であり、大量の漢籍が引用されている。本論文は≪政事要略≫が引用時に用いた「玉」や「野王」などを手がかりに、原本≪玉篇≫から引用した記述19項目を割り出した。引用した親字の部首から見ると衣部、田部など13部首にわたり、その引用項目から原本≪玉篇≫残巻、≪篆隷萬象名義≫、≪大廣益會玉篇≫の親字、親字の異体字、語釈内容の欠損を補充することができ、顧野王原本≪玉篇≫の復元に重要な意義をもつ。

1 0 0 0 OA 双関的翻訳

著者
陶 振孝
出版者
大東文化大学
雑誌
語学教育研究論叢 (ISSN:09118128)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.67-83, 2004-03-10

いくらベテランの翻訳者でも、原文に出てきた「掛詞」に対して、手におえない感じがするに違いないであろう。それで、「掛詞」の翻訳はずっと翻訳者を戸惑わせたり困らせたりしているところである。本論文は「掛詞」の現象から手を付け、その種類と特徴及び翻訳の難しい原因の有り方などを説明し、続いて翻訳の実例を挙げて、その訳し方を纏め上げてみた。翻訳可能の限度のなかに、即ち翻訳不可能の中から可能性を探し出して、翻訳学習者に参考を与え、サポートしようと思う。