- 著者
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永戸 健
島井 誠司
- 出版者
- 大東文化大学
- 雑誌
- 大東文化大学紀要. 社会科学・自然科学 (ISSN:09122338)
- 巻号頁・発行日
- vol.45, pp.1-16, 2007
- 被引用文献数
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1.岩手県遠野市片岩石灰岩地域に群落としてのチチブミネバリの集団を新たに確認した。2.本群落の特徴は,高木層でチチブミネバリが圧倒的に優占し,低木層ではハウチワカエデ・マルバアオダモ・シナノキ・スズダケが,草本層ではゴンゲンスゲ・ヤブレガサ・ホソバヒカゲスゲなどが目立っている。3.本群落と東京都天祖山のチチブミネバリ群落とを組成的に比較した結果,両群落とも総出現数に対する共通種の割合は少なく,双方に共通して優占するのはチチブミネバリ1種のみで,それぞれの群落は独自の種構成が強い。4.本群落のチチブミネバリは,第2低木層から高木層までの全層にわたって出現しており,第1低木層以上では胸高直径15cm以上20cm未満の個体数が突出している。高木層を構成している大部分の個体がこの太さの中径木であり,胸高直径39cmに達している個体も存在していた。毎木調査をした断崖際の調査区(Q.5)は,とくに第2低木層の発達が良好で自然更新が順調であることが判明した。5.他の植物の侵入が不利で,不安定ながら環境的に微妙なバランスが保たれている岩壁の断崖際はチチブミネバリの稚樹の生育が順調で,長期的な土地的極相として群落が持続するものと考えられる。