- 著者
-
里村 憲一
- 出版者
- 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
- 雑誌
- 日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.2, pp.250-255, 2014 (Released:2014-06-14)
- 参考文献数
- 41
成人期発症の非感染性慢性疾患の発症リスクは,遺伝的素因や成人における生活習慣だけでなく,胎児期や乳児期の環境に影響されるというDevelopmental Origins of Health and Disease(DOHaD)仮説は,多くの疫学調査や動物実験で支持されている。慢性腎臓病発症の危険性もまた,胎児期や乳児期の成育環境に影響される。胎児期・乳児期の成育環境が悪いとネフロン数が減少し,糸球体の高血圧や過ろ過が起こり,全身の高血圧,蛋白尿や腎機能障害を来すと考えられている。これまで,DOHaD仮説に関連する慢性腎臓病は成人期に発症すると考えられていた。しかし,我々は極~超低出生体重で出生した児では,小児期からDOHaD 仮説に基づく慢性腎臓病発症リスクが高いことを報告した。小児の慢性腎臓病においても,正確な診断や早期治療のために,胎児・乳幼時期の生育環境を詳しく聴取することが必要である。本邦での平均出生体重は減少を続け,2.5 kg 未満の低出生体重児が増加している。DOHaD 仮説に関連する疾患の増加が予想され,そのことは医学的のみならず,社会経済的にも大きな問題が近い将来起こることを意味している。国民に対してライフサイクルの視点を踏まえた健康教育を行うことが重要と思われる。