著者
中道 園子 高田 幸治 福光 一夫 木内 恵子 北村 征治 山本 勝輔 里村 憲一 澤竹 正浩
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.141-148, 1998-04-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
18

1996年7月の大阪府堺市における大腸菌O-157感染症症例のうち,重症脳症を伴う多臓器不全症例を経験した。症例は7歳,女児。発熱・腹痛・血便を認めO-157感染症と診断された。第5病日より溶血性尿毒症症候群の発症と同時に急性脳症を合併し,意識レベルが低下した。2,3日で多発性脳梗塞が急激に悪化,また,血管透過性の亢進した活動性病変が長期にわたって持続し,経過中,心筋炎・血管透過性肺水腫などを合併した。血液透析・血漿交換・エンドトキシン吸着などの治療にもかかわらず,救命不可能であった。他臓器に比べ脳障害はとくに不可逆性で,進行が急速かつ重篤なためその早期診断と治療が最優先されるべきである。
著者
福光 一夫 北村 征治 木内 恵子 谷口 晃啓 宮本 善一 平尾 収
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.99-103, 2003-04-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
9

1997年1月1日から1999年12月31日の3年間に当センター小児集中治療室(PICU)に入室した545例の年齢別,疾患別在室日数を調べた。平均年齢は2.3歳,平均PICU在室日数は10.6日であった。年齢別では新生児症例が全体の19.6%を占め,在室延日数の45.1%を占めた。新生児症例のうち27.1%は入院期間内にPICUに再入室していた。疾患別では左心低形成症候群,先天性横隔膜ヘルニァ,臍帯ヘルニアなどの先天性疾患で新生児手術症例のPICU在室期間が長かった。PICUに占める新生児症例の割合は,我が国での周産期医療の進歩とともにさらに増加すると推察された。診療報酬の試算結果では特定集中治療室管理料加算日数を現状の14日から21日に延長し新生児症例については60日にすることで,PICU在室延日数の88%が加算対象となった。PICU不足問題に対して医療経済面からも効果を期待するためには,加算日数を大幅に増やした小児集中治療室算定基準を設ける必要がある。
著者
木内 恵子 中川 美里 香河 清和 松浪 薫 清水 智明
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.576-582, 2006 (Released:2006-10-25)
参考文献数
13

著者の所属する施設では予定帝王切開術の96%を脊髄くも膜下麻酔で行っている.0.5%高比重ブピバカイン2.5mLにモルヒネ0.1mgを添加して使用している. ブピバカインはテトラカインと比較して術中鎮痛補助薬の使用が少なく優れた鎮痛効果を示す. またモルヒネを添加することにより術中術後の鎮痛作用を増強させる. 脊髄くも膜下麻酔は手技が容易かつ効果が確実で運動神経遮断効果が高く, 3種類の区域麻酔法のなかで, 効果発現が最も早い麻酔法である. 欠点としては, 低血圧の頻度が他の区域麻酔法に比べて多いことがあげられる.
著者
春名 純一 山中 寛男 宮下 和久 香河 清和 橘 一也 秋田 剛 木内 恵子
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.175-180, 2009-04-01 (Released:2009-10-15)
参考文献数
14

【目的】病院における騒音は,以前から指摘されてきたにもかかわらず,十分な対策は立てられておらず,また現状評価もなされていない。そこで,最も騒音レベルが高い小児集中治療室(pediatric ICU, PICU)において,騒音の音響学的測定と分析を試みた。【方法】大阪府立母子保健総合医療センターPICUにおいて,連続7日間および24時間の5分間等価騒音レベル,ピークサウンドプレッシャーレベル,1/3オクターブバンド等価音圧レベルを測定した。【結果】連続7日間の同時刻の等価騒音レベルは平均約60 dBA,ピークサウンドプレッシャーレベルは平均約90 dBAで,他の報告と同じく高いレベルであった。1日の8時点における測定では,日内差はあまり見られなかった。1/3オクターブバンド等価音圧レベルは全周波数帯でほぼ同じレベルで,低周波領域の音圧レベルが高かった。【結論】PICU騒音はWHOの院内騒音基準を大きく超えるレベルにあり,患者および医療スタッフの健康被害をもたらす可能性がある。周波数分析からは低周波音の関与が示唆された。
著者
小野 理恵 橘 一也 松浪 薫 木内 恵子 宮川 慈子 香河 清和 渡辺 高士 奥山 宏臣
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.213-218, 2008-04-01 (Released:2008-11-01)
参考文献数
7

気管無形成は予後不良の先天性疾患で,長期生存例の報告はほとんどない。今回,退院に至った気管無形成患児の集中治療管理について報告する。患児は出生直後よりチアノーゼを呈し,食道挿管によって換気可能となった。気管無形成と診断し,出生当日に食道皮膚瘻造設術,食道絞扼術,胃瘻造設術を行った。術後,気道として利用している食道と気管食道瘻が容易に閉塞し,換気不全を繰り返した。鎮静や高いPEEPにより気道の開存維持を図ったが著効せず,呼吸管理に難渋した。生後52日目,人工心肺下に食道気管吻合と食道外ステント術を施行し,術後呼吸状態が安定した。2回目の術後34日目に人工呼吸からの離脱が可能となり,生後10ヶ月で退院となった。気管無形成では,出生直後の適切な蘇生処置とそれに続く姑息的手術により生存可能であるが,呼吸管理が困難であり,気道の開存を維持するために更なる外科的治療を考慮する必要がある。