著者
野並 浩
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.151-163, 2001-06-05
被引用文献数
4

作物の水分状態を計測するために使われるサイクロメーター、プレッシャーチャンバー、プレッシャープローブの計測原理に触れ、計測器相互間で計測値の比較を行い、それぞれの計測法の違いについて検討した。また、土のマトリックポテンシャルを計測するために使用されているpF値と水ポテンシャルの関係について説明し、作物を取り囲む環境の水分状態計測と作物の水分状態計測について解説した。とくに、プレッシャーチャンバーを用いての水分状態計測の意義について詳しく説明し、生長に伴った水ポテンシャル勾配がアポプラストに働く張力に関連したマトリックポテンシャルに依存していることを説明した。また、養分欠乏、塩ストレス、低温ストレス、高温ストレス、植物ホルモン添加による生長阻害下における細胞伸長速度が、生長に伴った水ポテンシャル勾配の大きさと直接比例して関連していて、いかに伸長している細胞内へ水が流入することができるかが細胞伸長の速度を決定することを述べている。
著者
森田 敏 野並 浩 和田 博史
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,日本型とインド型の多収品種の収量構成要素,乾物生産,光合成を比較解析するとともに,新たに考案した動的なメタボローム解析手法(炭素安定同位体解析とオービトラップ質量分析法とを組み合わせたブドウ糖のアイソトピック比の解析)により,茎の澱粉動態の品種間差を解析した.その結果,インド型品種の北陸193号が出穂後に茎から穂へ炭水化物が速やかに転流するのに対して,日本型品種モミロマンでは,出穂後も茎内の澱粉集積が継続しており,出穂後も茎がシンクとして機能していることが強く示唆された.以上のことから日本型多収品種では,茎での炭水化物の子実への分配遅れが収量制限要因になっている可能性が考えられた.