著者
森田 敏
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.1-12, 2008 (Released:2008-02-08)
参考文献数
121
被引用文献数
57 72

近年, 登熟期の高温により米の品質や玄米1粒重が低下する, いわゆる高温登熟障害が頻発していることが指摘されている. 地球的規模の温暖化の進行にともない今後の被害の拡大と甚大化が懸念される. このため高温登熟障害の克服に向けて, メカニズムの解明と対策技術の開発が喫緊の課題である. 本稿では, イネの高温登熟障害の実態, 背景を示すとともに, 主な症状である白未熟粒, 充実不足, 胴割れ粒の発生と玄米1粒重の低下, 食味の低下のメカニズム, 耐性品種など発生回避技術の開発に関する知見を整理し, 今後の研究方向を論じる.
著者
鎌倉 快之 森田 敏照
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.82-86, 2005 (Released:2007-05-15)
参考文献数
11

生物の持つ形の意味や機能の解明を試みる場合,個々の要素を個別に詳細に捉えるだけでなく,形の持つ多様性や固有性を性質,特徴,パターンなどの共通の視点から捉えなおし,形をひとつのシステムとして全体的に捉える必要がある.そのためには生物の形態の持つ情報の「デザイン」と可視化が必要であり,モデルの適用が考えられる.本稿では,形態の多様性と固有性を示す巻貝の巻殻を用い,巻殻のモデル化とモデルを用いた形態解析を通して,生物の形を捉える上での情報デザインとモデル化の意義について検討する.
著者
南波 慶己 中村 篤雄 森田 敏夫 鍋田 雅和 高須 修
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.659-664, 2020-10-31 (Released:2020-10-31)
参考文献数
18

救急救命士が血糖測定を行う基準について,われわれの地域においては低血糖を疑った場合に可能となることから,適応を判断するための身体観察がきわめて重要である。低血糖の症状は交感神経症状と中枢神経症状に大別されるが,随伴する低体温に関して診断的有用性は明らかではない。病院前救護における体温測定が,低血糖を疑う観察所見として有用かを検証した。体温測定を行った救急搬送例67,953例を対象とし,体温別に3群に分け,低血糖の割合について後方視的に検討した。体温35℃以下のL 群は他群より有意に低血糖の割合が高く,季節ごとの検討では,とくに夏季において体温測定の有用性が高い結果であった。ベイズの定理を用いた検討においても,体温35℃以下の陽性尤度比は7.1と高値であり,低血糖を疑う臨床的判断の一助となり得ると考えられた。病院前救護における体温測定は,低血糖を疑う観察所見として有用である。
著者
安田 幸子 上田 伊佐子 森田 敏子
出版者
徳島文理大学
雑誌
徳島文理大学研究紀要 (ISSN:02869829)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.15-28, 2018

<p>本研究の目的は<b>,</b>高等学校5 年一貫校専攻科で学ぶ看護学生の看護倫理に関する思考の特徴を見出し倫理教育への課題を明らかにすることである。5 年一貫校専攻科の看護学生を対象に①宗教上の理由からの輸血の拒否<b>,</b>②出生前診断による選択的人工妊娠中絶<b>,</b>③脳死者からの臓器移植<b>,</b>など6 状況を設定し<b>,</b>倫理上の諸問題の思考の特徴を見出す質問紙調査を行った。学生の価値基盤は倫理原則であったが<b>,</b>倫理的根拠ではなく自己の感情による判断の可能性があり多角的な思考ができていなかった。さらに<b>,</b>10 名を対象とした半構造的面接を行い<b>,</b>倫理的問題と認知した要因として<b>,</b>【倫理的問題の認知の基盤】<b>,</b>【認知の仕方】<b>,</b>【感情】の3 カテゴリーが形成された。学生は看護観<b>,</b>学習内容との比較<b>,</b>患者の言動<b>,</b>患者の立場の想像から倫理的問題を捉え解釈し思考していたことから<b>,</b>倫理教育に関する課題は倫理に関する知識の確実な獲得と看護観の深化<b>,</b>感受性豊かな学生に育成することが示唆された。</p>
著者
小川 フェネリーひとみ 上田 伊佐子 森田 敏子
出版者
徳島文理大学
雑誌
徳島文理大学研究紀要 (ISSN:02869829)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.73-82, 2017-09-09 (Released:2018-04-18)
参考文献数
24

本論は,文献に示された「よい看護師」が身に付けているものは何かを明らかにし,徳の倫理に着目した考察を加えることにより,看護基礎教育における倫理教育への示唆を得ることを目的とした。医学中央雑誌Web版で1983年~2017年2月において「よい看護師」のキーワードで検索すると,原著論文9編が抽出された。調査対象は看護師3件,看護学生2件,患者や遺族2件,看護教員1件,教科書の内容変遷1件であった。「よい看護師」が身に付けている倫理の視点として【体験の自省】,【行為と判断の倫理原則】,【徳の倫理】,【公共の善】が形成された。日本で看護教育が始まって以来,教科書には,人としての特質と専門職としての特質,徳の倫理が記されていた。「よい看護師」の育成には,徳の倫理を基礎とした専門職としての知識・技術・態度の育成と倫理原則の育成の重要性が示唆された。
著者
谷口 順彦 森田 敏夫
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.37-41, 1979
被引用文献数
1 4

Lactate dehydrogenase (LDH) and malate dehydrogenase (MDH) of three related freshwater eels, <i>Anguilla anguilla, A. rostrata</i>, and <i>A. japonica</i> were examined by starch-gel electrophoresis using a citrate-aminopropylmorpholin buffer adjusted to pH 6.0. Five equal-spaced major bands were observed in LDH zymograms of the adult muscle exudation and the whole elver homogenate through the three species. The most anodal band was identified as the homotetramer of B subunits (B<sub>4</sub>), and the most cathodal as the homotetramer of A subunit (A<sub>4</sub>), based on the specificity of tissue distribution of these isozymes. These A<sub>4</sub>, and B<sub>4</sub> bands of the Japanese eel were different from those of the European and American eels in electrophoretic mobility. In the MDH zymograms of muscle, four major bands were observed in all the three species. One of these, the activity of which was especially intense with the liver, was identified as A<sub>2</sub>. The other two equal-spaced major bands of muscle were identified as AB and B<sub>2</sub>, and the remaining most cathodal one as C<sub>2</sub>. The European eel was distinguished from the American and Japanese eels by the A<sub>2</sub> band. The Japanese eel was also distinguished from the other species by the B<sub>2</sub> band. Although some variants were found in the LDH and MDH isozyme patterns of the respective species, their incidences were very low, and any alleles of these variants were not common among the three species.
著者
森田 敏 白土 宏之 高梨 純一 藤田 耕之輔
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.102-109, 2002-03-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
29
被引用文献数
22 44

従来,水稲の高温による登熟不良現象については多くの研究が行われたが,高夜温と高昼温のどちらが主因であるかについては一定の結論が得られていない.本研究では,人工気象室を用いて,34/22℃(昼温/夜温)の高昼温区に対して,これと日平均気温が同じである22/34℃の高夜温区を設定し,22℃一定温度あるいは28/20℃(日最高気温/日最低気温)を対照区として,玄米1粒重と良質粒歩合について比較解析した.その結果,玄米1粒重は高夜温区においてのみ対照区より有意に低下した.一方,玄米の良質粒歩合は高夜温区と高昼温区の両者で低下した.したがって,高温による玄米1粒重の低下の主因は高夜温にあること,および高夜温と高昼温のいずれもが外観品質を低下させることが明らかになった.高夜温区における玄米1粒重の低下は,いずれの着粒位置でも観察されたが,試験年によっては,弱勢穎果である3次籾での低下程度が大きかった.各試験区間の玄米1粒重の違いは,玄米の3つの粒径(粒長,粒幅,粒厚)を乗じた玄米体積の指標値の違いにほぼ一致した.高夜温区では対照区に比べて主に玄米の粒幅と粒厚が減少し,高昼温区では粒幅が減少したものの粒厚は明らかに増大した.これらのことから,高夜温区では玄米の粒幅の減少を粒厚で補えずに玄米1粒重が低下するのに対し,高昼温区では玄米の粒厚の増大が粒幅の減少を補償して玄米1粒重が低下しないとみることができた.
著者
小島 慎也 佐藤 香枝 前田 亮太 呉 宏堯 矢田 拓也 森田 敏明 岩崎 博之
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2014年大会
巻号頁・発行日
2014-04-07

明星電気株式会社は、小型気象計POTEKA Sta.(ポテカ:Point Tenki Kansoku、以下POTEKA)を開発した。POTEKAは気温・湿度・気圧・感雨・日照を1分間隔で測定でき、従来気象計と比較して安価で、設置が容易なため稠密な設置及びデータ収集が可能である。そのPOTEKAを用いて、伊勢崎市内小中学校及び同市周辺のコンビニ(SAVE ON)に約1.5~4km間隔で計55ヶ所に設置した。本稿では、顕著な観測事例として8月11日に高崎市・前橋市で発生した突風現象の観測結果について紹介する。8月11日18時頃に高崎市から前橋市にかけて突風が発生し、住家の屋根の飛散などの被害がみられた。POTEKAの気温1分値を見ると、最大12分間で-13.9℃の気温低下がみられた。前橋地方気象台発表の突風経路に近いPOTEKAの海面補正した気圧の1分値時系列を下図に示す。気象台の10分値の気圧は徐々に増加していく傾向しか見られないが、POTEKAの1分値では、1~2hPa程度の一時的な上昇がみられた。これはダウンバースト発生時の下降流による一時的な気圧上昇であると示唆される。さらに詳しく見ると、気圧の上昇は2回発生している地点もあり、1回目はガストフロントによるもの、2回目はダウンバーストによる上昇と考えられる(詳細は「地上稠密観測POTEKAによるダウンバーストとガストフロントの識別」を参照のこと)。今回の稠密観測のようなダウンバースト・ガストフロント発生時の地上における気圧変化を、これほど細かい時間的・空間分解能で観測した事例はほとんど見られない。このような稠密観測をすることによって、突風の種類の判別や突風に対する事前の注意喚起が出来る可能性がある。謝辞:本プロジェクト始動にあたり、サンデン(株)殿、(株)セーブオン殿、伊勢崎市教育員会殿にはPOTEKA設置のご協力を頂きました。ここに御礼申し上げます。
著者
榮田 絹代 森田 敏子
出版者
徳島文理大学
雑誌
徳島文理大学研究紀要 (ISSN:02869829)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.53-82, 2016-09

Objective: To identify the impact that role-lettering has on promoting self-understanding and understanding of others in nursing students, and to discover the educational implications of acquiring interpersonal and communication skills. Method: The research was designed as an exploratory validation of inductive and descriptive factors of role-lettering, and for validation of clinical hypotheses. Subjects were 215 2-year course nursing students in Kyushu Prefecture. They were mailed a self-administered survey and a qualitative analysis of their responses was conducted. Results: 102 surveys were returned, with 93 valid responses (43.3%). The valid surveys contained the following responses: "dissatisfaction and anger," "complaints and predicaments," "tension and mixed feelings," "expectations for others," and "confirmation of others' feelings." The returned surveys contained the following responses: "dissatisfaction and criticism," "valid complaints and justifications," " difficulty in understanding and response," "different perspectives," and "expectations and hopes for self." Based on the feeling of good or ill will towards others, limitations for self-understanding and understanding for others were revealed. Of the seven clinical hypotheses, five were validated. Discussion: Clarifying one's emotions through role-lettering and sharing the standpoint of others aids in self-dialog, promotes empathic understanding, displays an interest in and concern for others, and deepens self-understanding and understanding of others. Five of the seven clinical hypotheses were validated, and educational implications that promote self-understanding and the understanding of others obtained.
著者
井上 加奈子 森田 敏子
出版者
徳島文理大学
雑誌
徳島文理大学研究紀要 (ISSN:02869829)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.13-36, 2016-09

Objective: This study aims to clarify the following aspects when students meet patients during their participation in nursing practicum: what they experience (their awareness) "in the here and now;" the significance they place on their own practicum experience; and how they attain, form, and deepen their clinical knowledge which consists of situational knowledge, embodied knowledge, and knowledge of relations. Methods: A semi-structured interview was conducted with seven 4th-year students who had completed their nursing practicum at a nursing university, with the interview content qualitatively analyzed. Results: The interview time was 70±31 minutes. The subjects were aged 22±1 years. Although the students had experienced feelings of perplexity and confusion concerning nursing practicum and their patients' states at the beginning of the practicum, the study found that they were ultimately able to form and deepen their clinical knowledge through their relationships with the patients. Discussion: At the beginning of the students' nursing practicum, they felt perplexed at various situations around them. Then, bolstered by their desire to become involved with the patients, they focused on their patients present with them "in the here and now." By getting closer to the patients' worlds, the students assimilated clinical knowledge. When the students were liberated from their own operative emotions in their interaction with the patients, their clinical knowledge deepened. This study suggests that students' growth can be enhanced if support is provided, allowing students to become aware of their sensation of being together with the patients "in the here and now" and to form their "clinical knowledge." This process, in turn, deepens their clinical knowledge and mode of formation and deepening.
著者
森田 敏
出版者
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
雑誌
九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
巻号頁・発行日
no.52, pp.1-78, 2009-08 (Released:2011-03-05)

近年、西日本を中心に多発しているイネの高温登熟障害の発生に及ぼす日射量、施肥、品種、高夜温の影響とその要因について解析した。1. 人工気象室で登熟期の気温を平年より3℃高くすると玄米1粒重と玄米外観品質が低下したが、作期移動など登熟期の気温と日射量がともに上昇する条件では玄米1粒重は低下せず、良質粒歩合の低下程度は小さかった。高温と低日射が重なると、普及品種ヒノヒカリでは高温耐性品種にこまるよりも粒重増加速度が低下し、玄米1粒重と玄米の粒張りが低下した。2. 穂肥の量を増やすと、高温年では玄米1粒重が増加し外観品質が向上した。穂肥を出穂前後の1ヶ月間に15回に分けて与える施肥法では2回与える慣行法に比べて、また、にこまるではヒノヒカリに比べて、それぞれ未熟粒歩合が低下した。これらの品質向上の要因として、穂揃い期の茎葉における貯蔵炭水化物の増加が考えられた。3. 玄米1粒重は高夜温(22/34℃)で低下し、高昼温(34/22℃)ではほとんど低下しなかった。穂と茎葉に別々に高夜温処理を与えた実験や粒重増加推移の解析、胚乳細胞の画像解析などにより、高夜温条件では粒重増加速度と玄米への乾物分配率の低下および胚乳細胞の成長抑制が玄米1粒重の低下に密接に関与していることが示された。以上、本研究では高温低日射条件でも登熟が不良になりにくい品種特性や施肥法を示したほか、高夜温が成熟期の玄米1粒重を低下させるプロセスを明らかにした。
著者
森田 敏
出版者
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
雑誌
九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
巻号頁・発行日
no.52, pp.1-78, 2009-08

近年、西日本を中心に多発しているイネの高温登熟障害の発生に及ぼす日射量、施肥、品種、高夜温の影響とその要因について解析した。1. 人工気象室で登熟期の気温を平年より3℃高くすると玄米1粒重と玄米外観品質が低下したが、作期移動など登熟期の気温と日射量がともに上昇する条件では玄米1粒重は低下せず、良質粒歩合の低下程度は小さかった。高温と低日射が重なると、普及品種ヒノヒカリでは高温耐性品種にこまるよりも粒重増加速度が低下し、玄米1粒重と玄米の粒張りが低下した。2. 穂肥の量を増やすと、高温年では玄米1粒重が増加し外観品質が向上した。穂肥を出穂前後の1ヶ月間に15回に分けて与える施肥法では2回与える慣行法に比べて、また、にこまるではヒノヒカリに比べて、それぞれ未熟粒歩合が低下した。これらの品質向上の要因として、穂揃い期の茎葉における貯蔵炭水化物の増加が考えられた。3. 玄米1粒重は高夜温(22/34℃)で低下し、高昼温(34/22℃)ではほとんど低下しなかった。穂と茎葉に別々に高夜温処理を与えた実験や粒重増加推移の解析、胚乳細胞の画像解析などにより、高夜温条件では粒重増加速度と玄米への乾物分配率の低下および胚乳細胞の成長抑制が玄米1粒重の低下に密接に関与していることが示された。以上、本研究では高温低日射条件でも登熟が不良になりにくい品種特性や施肥法を示したほか、高夜温が成熟期の玄米1粒重を低下させるプロセスを明らかにした。
著者
森田 敏彦
出版者
歴史教育者協議会
雑誌
歴史地理教育 (ISSN:02881535)
巻号頁・発行日
no.823, pp.74-79, 2014-08
著者
森田 敏
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.391-399, 2000-09-05
被引用文献数
15

ポット栽培水稲を用いて人工気象室による温度処理実験を行い, 中国地方平坦部の福山市のおける平均的な8月の気温が登熟に及ぼす影響を解析した.人工気象室で登熟期に福山平年区(32°C/23°C;最高/最低気温), 低温区(28°C/19°C)および高温区(35°C/26°C)の3区を設けた.玄米1粒重と良質粒歩合は低温区に比べて福山平年区で有意に低下し, 高温区ではさらに低下した.高温による玄米1粒重の低下は粒厚の減少を伴った.また, 高温による玄米1粒重の低下は全ての節位の1次枝梗で生じた.福山平年区では低温区より発育停止籾歩合が高く, 高温区では不稔歩合が著しく高かった.高温による玄米1粒重の低下程度には品種間差異が認められ, 高温区の粒重が低温区のそれより10%以上低下した品種は, 森田早生, 大粒のジャワ型品種のArborio, 極穂重型で登熟不良となりやすい日本型品種アケノホシなどであった.高温区での粒重低下程度が5%未満であった品種は, 環境による品質の振れが小さいと言われるコガネマサリ, 小粒のジャワ型品種のLakhi Jhota, アケノホシと兄弟であり極穂重型で登熟が良いインド型品種のホシユタカであった.
著者
森田 敏 野並 浩 和田 博史
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,日本型とインド型の多収品種の収量構成要素,乾物生産,光合成を比較解析するとともに,新たに考案した動的なメタボローム解析手法(炭素安定同位体解析とオービトラップ質量分析法とを組み合わせたブドウ糖のアイソトピック比の解析)により,茎の澱粉動態の品種間差を解析した.その結果,インド型品種の北陸193号が出穂後に茎から穂へ炭水化物が速やかに転流するのに対して,日本型品種モミロマンでは,出穂後も茎内の澱粉集積が継続しており,出穂後も茎がシンクとして機能していることが強く示唆された.以上のことから日本型多収品種では,茎での炭水化物の子実への分配遅れが収量制限要因になっている可能性が考えられた.
著者
松本 裕治 浅原 正幸 岩立 将和 森田 敏生
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:18840930)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.18, pp.1-6, 2010-11-11
被引用文献数
1

科研費領域研究研究 「日本語コーパス」 の一環として開発してきたコーパス管理ツール 「茶器」 の機能と現状について報告する.茶器は,形態素解析 (品詞情報),係り受け解析のアノテーション (注釈) が付与されたコーパスを格納し,様々な検索,検索結果や統計情報の表示,注釈誤りの修正などの機能をもつツールであり,注釈付きコーパスの格納,検索,作成,修正のための環境を提供する.主な機能は,文字列,形態素列,文節係り受け構造などを指定したコーパスの検索と,検索結果の KWIC 表示と係り受け木の表示,種々の統計情報の表示,注釈付けエラーの修正などである.現在は,茶筌/ MeCab による形態素解析,南瓜による係り受け解析結果をデータベースに取り込む機能を提供するが,特に言語には依存せず,任意の言語の品詞/依存構造注釈付きコーパスを扱うことができる.This paper introduces a annotated corpus management system ChaKi that has been developed under the auspices of the Japanese Corpus Project (Grantin-Aid for Scientific Research in Priority Areas). The system handles morphologican and dependency structure annotated corpora and facilitates various functions such as storing, retrieving, creating and error-correcting annotated corpora. String, word and dependency structure based corpus retrievals are possible, and the results are shown as KWIC format or as dependency trees. While the current system transfers corpora with the ChaSen/MeCab or CaboCha output format into databases, it is language independent and can be applied flexibly to any POS/dependency structure annotated corpora.
著者
亀山 剛 森田 敏弘 岡田 純 内藤 順一 宇都宮 妙子
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.158-166, 2006-12-05

山陽地方に生息するダルマガエルRana porosa brevipoda岡山種族は、現在日本で最も絶滅が危倶されているカエル類の地域個体群のひとつである。その中で、土地区画整理事業によって2003年11月に生息地が消滅した広島県神辺町産の個体群を飼育下に緊急避難させ、新たな生息地へ試験的に再導入をおこなった。ダルマガエルの生息には水田環境が絶対条件で、なおかつ、生活史に合わせた人為的な水管理が重要であった。したがって、導入場所の選定にあたっては、地権者である農家の理解と協力が得られるかどうかに重点を置いた。その結果、広島県世羅郡の水田地帯にある休耕地を試験湿地に設定し、2004年5月-6月にかけて幼体117個体、幼生2,947個体の導入を行った。その後のモニタリングでは、2004年10月には、成体18個体、幼体248個体、合計266個体のダルマガエルが確認された。翌2005年6月には少なくとも3クラッチ分の自然産卵が確認され、同年10月には、成体15個体、幼体60個体、合計75個体のダルマガエルが確認された。以上により、飼育集団をある程度残した上で、自立した野外集団の創出に成功した。この結果を受けて、2005年には新たな導入地を設定し、幼生の導入を始めている。今後は追加導入およびモニタリングを実施し、定着へ向けての活動を継続する予定である。