著者
角皆 潤 谷本 浩志 神田 譲太 野口 泉 小松 大祐
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、東アジア域では初となる一般水環境試料中に含まれるNO_3^-のΔ^<17>O組成定量を実現し、そのNO_3中に含まれる大気由来のNO_3^(NO_3^-_<atm>)の混合比のトレーサーとしてのΔ^<17>O組成の信頼性を検証するとともに、その有用性を実証することを目的としている。特に、全NO_3^-中に占めるNO_3_<atm> 混合比は、定常状態下では、総NO_3^-供給速度に対する大気からのNO_3^-_<atm>沈着速度の相対比に等しいので、これを活用する。まず北海道の利尻島において、長期に渡って湿性沈着試料を集めてNO_3_<atm>のΔ^<17>O組成の連続観測を成功させ、その年平均値(Δ^<17>O_<atm>)を見積もった。次に同島の森林域から流出する地下水試料中のNO_3について、Δ^<17>O値定量を実現し、Δ^<17>O_<atm> との比較から、大気から沈着した窒素が森林生態系によって浄化される過程を定量的に評価した。さらに摩周湖の湖水中に溶存するNO_3のΔ^<17>O組成の分布を定量し、大気から貧栄養の水環境下に沈着したNO_3^-_<atm>の挙動を定量化した。
著者
林 健太郎 野口 泉
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.279-287, 2006-09-01
被引用文献数
5

アルカリ含浸ろ紙を2段としたフィルターパック法を用いて,茨城県つくば市のシバ草地における2004年6月29日〜2005年1月11日のガス状の亜硝酸(HONO)および硝酸(HNO_3)の濃度および濃度勾配を観測した。暖候季および寒候季のHONO濃度はそれぞれ0.86および1.2ppb(v/v),HNO_3濃度はそれぞれ1.0および0.23ppbであり,HONO濃度はHNO_3濃度と同程度であった。一方,暖候季および寒候季の地上4-2m間のHONOの濃度勾配はそれぞれ-0.012および-0.027ppb m^<-1>,HNO_3の濃度勾配はそれぞれ0.10および0.008ppb m^<-1>であった。負の濃度勾配はネットフラックスが発生であることをあらわし,HONOが地表から発生していることに加えて,発生量が乾性沈着量を上回っていることが示された。地表からのHONOの発生は,気相-地表系の不均一反応による二酸化窒素からのHONOの生成によると考えられる。大気-地表間のHONOの交換はネットフラックスとして定量されるべきであり,沈着速度の推計では地表からのHONOの発生を考慮する必要がある。