著者
野地 恒有
出版者
愛知教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

近代以降に移住者の開拓によってその集落が形成された島において、定住化のための「持続する生業体系」 の特徴について調査研究した。その結果、周辺社会との間に張りめぐらされた海縁ネットワークにより定住生活は持続され安定されること、移住先の定住生活を成立させる生業体系とは外部との海縁ネットワークの体系であること、その海縁ネットワークを作り出すその島独自の(ほかの地域に依存しない)生業手段・技術が必要であること、などを明らかにした。
著者
野地 恒有
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.105, pp.195-213, 2003-03-31

本稿は,金魚観賞における選評基準を題材とした動植物観賞の文化の比較民俗学的研究である。選評基準とは,金魚観賞において,金魚を選定・評価する基準のことである。本稿では,第1に,現代の日本金魚の選評基準として蘭鋳(らんちゅう),土佐金(とさきん),地金(じきん)の3品種の金魚を取り上げることによってその選評基準と観賞の志向をとらえ,第2に,18世紀の中頃に著された金魚飼育書『金魚養玩草(きんぎょそだてくさ)』を用いて江戸時代の金魚の選評基準を検証し,第3に,中国金魚の選評基準との比較を行った。その結果,日本金魚の選評基準は,1品種に完結した理想形として提示されており,その基準への嵌合という飼育形態がみられた。そして,その観賞の志向は,一定の理想形への深化とまとめられた。『金魚養玩草』からも,ほぼ同様な金魚観賞の志向を見出すことができたが,『金魚養玩草』には,1品種の枠を越えて新品種を評価する態度がみられ,現代における日本金魚と異なる観賞の志向もとらえられた。中国金魚の選評基準は多品種を包括した実体に即した等級分類として提示されており,定形の基準外の品種作出という飼育形態がみられた。そして,その観賞の志向は,多様姓への拡大とまとめられた。金魚の観賞における選評基準は伝承文化を背景としている。金魚飼育とは選評基準に合致した金魚を作り出す技術のことであり,選評基準とは金魚の飼育技術と密接に関係している知識体系のことである。金魚の飼育をはじめ,花卉・草木や盆景・盆栽の栽培などは〈改造された自然〉を対象とする技術であるとともに,〈改造された自然〉の観賞でもある。それは,動植物観賞の文化ということができる。〈改造された自然〉を観賞する文化において,日本では定形へ深化し,中国では変形に拡大すると予想される。その志向の差は自然観の質的な相違を表出するものである。