著者
野本 茂
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.101-118, 2000

IT革命は、新機軸の情報通信ネットワーク (インターネット : コンピュータ・ネットワークのネットワークをインフラとする。) のオープン性・汎用性・情報共有性・ユーザ主導性がもたらす、経済社会を根本から変革する事象である。流通経済情報論としても、流通がIT革命下、どのように変わってきているのかをみなければならない。結論は、IT革命によって、流通セクターにおいては、「第二次流通革命」というべき変革が進行していること、生産者による「eマーケティング」の流通が登場していること、および「eマーチャント」による新たな流通経路あるいは流通機構の変革が進行していることが確認できるという点である。なお、本題の考察は「生産者セクター」「流通業者セクター」「消費者セクター」の分析フレームで行ったが、他の分析フレームで行い、分析を深めること、および各事象の内実をさらに考察し、豊富なものにすることが今後の課題となる。
著者
野本 茂
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.59, pp.123-126, 2009-06-26

1978年の中国の改革・開放政策への転換、さらに1989年の「ベルリンの壁崩壊」によって、真義のグローバリゼーションが進展した。1980年代、日本企業も急激に進む円高に対応するため、海外進出を加速させた。アメリカへは貿易摩擦解消の意図もあって現地化した。対中国ビジネスについては、欧米企業が製造コストの比較優位からバリューチェーンの一環として重視し、先行した。欧米企業に遅れたが、中国に進出する日本企業の数は年々増え、その規模も拡大している。ただ、中国ビジネスはリスクが高い。海外企業の中国進出の各種データをみると、まず各国とも撤退率が高い。しかし各国比較では、日系企業のそれは相対的に低い。また、日中企業のアライアンス形態をみると、「合弁」から「独資」への転換傾向がみられる。そもそも「国営」を前身とする中国企業の利益率は低く、アライアンス先中国企業の経営体質は脆い。さらに、現地経営における採用難、早期退職、知的所有権の侵害、代金回収の困難性、アライアンス先とのトラブル等の問題指摘は枚挙にいとまがない。日本企業は中国進出に不安を抱きながらも、短期的利益を追わず、長期的な発展を志向して進出している。総経理の現地化には消極的であるが、地方政府とのコミュニケーションを円滑に行いながら、従業員教育や福利厚生の施策をきめ細かく実施し、いわゆる日式経営文化により異文化経営摩擦を克服している。