著者
武田 敏秀 島田 武彦 野村 啓一 尾崎 武 土師 岳 山口 正己 吉田 雅夫
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.21-27, 1998-01-15
参考文献数
16
被引用文献数
2 21

アンズの系統分類にRAPD分析法を適用した.DNA多型を効率的に検出するために, 5種類の代表的な品種を供試して, 225種類のオペロンプライマーについてスクリーニングを行い, 各系統間で複数のDNA多型を示す有効な18種類のプライマーを選抜した.次にこれらのプライマーを用いてアンズ33品種・系統と近縁の野生2種の分類を試み, 検出されたRAPDsをもとにクラスター分析と数量化理論第三類を用いてデータの解析を行った.その結果, 本実験で供試したアンズ(Prunus armeniaca)の品種・系統は中国西部からヨーロッパにかけて分布する"西方品種群"(A)と中国東部, 日本などに分布する"東方品種群"(B)の2群に大別された.しかしながら, 近縁野生種のP. sibiricaとP. brigantina, 中国の西部から北部に分布し, 諸特性が不明である'白杏', およびスモモとアンズの自然交雑種とされる'仁杏'はこれらの群に属さなかった.また, 中国の品種はA群およびB群の両方に属し, 遺伝的変異が大きいことから日本アンズ, ヨーロッパアンズの祖先種である可能性が高いと推察した.
著者
島田 武彦 土師 岳 山口 正己 武田 敏秀 野村 啓一 吉田 雅夫
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.543-551, 1994
被引用文献数
14 20

95種類の10m erのオペロンプライマーを用いて, RAPD分析法により59品種•系統のウメの品種分類を行った. ウメを小梅•台湾梅品種群, 中梅品種群, 大梅品種群, 杏梅品種群に分け, 各々の品種群について分類を行った. 小梅と台湾梅のグループは遺伝的変異が小さく, アンズの形質をほとんど含んでいなかった. 台湾野生梅は中梅品種群とは遠縁で, 明らかに異なっていた. '室谷'と'藤之梅', '小向'と'古城', '鈴木白'と'太平'では相互の識別ができず, これらは異名同品種である可能性が高いと考えられる'豊後'はウメとアンズの雑種であることが証明された. '高田梅'はアンズにかなり近縁であることが確かめられた.RAPD分析法は近縁な品種問でもDNA多型を十分に検出できるので, 従来の方法では識別できなかった異名同品種や同名異品種を識別することも可能であると推察される.<BR>RAPD分析の結果, 実ウメは次の7つのグループに分類できた. 1) 台湾梅品種群, 2) 小梅品種群, 3) 中梅品種群, 4) 大梅 (白花) 品種群, 5) 大梅 (桃花) 品種群, 6) 杏梅品種群, 7) 李梅品種群. 花ウメは実ウメと遺伝的特性は近いものと考えられ, 中梅品種群, 大梅品種群, 杏梅品種群のいずれかに属するものと推察される.
著者
吉田 雅夫 野村 啓一 尾崎 武 中西 テツ
出版者
神戸大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

モモ,スモモなどサクラ属果樹の類縁関係を明らかにするとともに,これらの果樹がどのように進化してきたかをRAPDマーカー法によって明らかにしようとした。本試験に供試したウメ,アンズ,スモモ,モモは農水省果樹試験場,サクラ,オウトウは山形県園芸試験場で収集,保存している品種・系統を用いた。平成4年度にはウメ,アンズ,スモモなどを供試して,この手法がサクラ属果樹の系統分類と親子鑑定に利用できることを明らかにした。平成5年度は更に品種・系統の数を増やして分析し,ウメ品種では台湾梅,小梅,中梅,大梅,杏梅,季梅の品種群に分類できること,日本のウメは中国大陸から渡来したことを明らかにした。アンズは東アジア品種群と西方品種群に大別できること,スモモは種数が多いが,ニホンスモモ品種群とヨーロッパスモモ品種群に大別できることを明らかにした。ウメ,アンズ,スモモは類縁性が高く,相互に交雑し,品種の進化に関係していることが明らかになった。モモは近縁野生種のP.miraと栽培種のP.persicaなどに分類されたが,品種・系統間の多型性は小さかった。平成6年度はサクラとオウトウの分類を試みるとともに,葉縁体DNAについても分析し,サクラ属果樹の進化について検討を加えた。サクラ属はスモモとモモの仲間,サクラとオウトウの仲間の二群に大別され,両者は古い時代に分化したものと推察された。従来よりサクラの仲間に分類されていたユスラウメとニワウメは,本試験ではスモモの仲間に属することが認められた。サクラの仲間の分類は,阪神大震災の影響で現在中断しているが,今後明らかにして行きたい。