著者
石水 毅 乗岡 茂巳 中西 テツ 崎山 文夫
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.35-38, 1998-01-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
14
被引用文献数
4 5

ニホンナシの優れた栽培品種の一つである'豊水'のS遺伝子型は, 長年の交配実験によっても決定されていない.ニホンナシ花柱由来の7種類のS遺伝子産物(S1-RNaseからS7-RNase)を二次元電気泳動により分離・同定する系をすでに確立したので, この系を用いて'豊水'のS遺伝子型の決定を試みた.花柱タンパク質抽出液を一次元目が非平衡等電点電気泳動(NEPHGE), 二次元目がSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)からなる二次元電気泳動に供したところ, S3a, S3b, S5a, S5b-RNase(aとbは糖鎖の不均一性により分離したと考えられている)と同じ位置にそれぞれタンパク質スポットが検出された.これらのタンパク質をPVDF膜に電気転写し, 気相シーケンサーにより分析したところ, 4種類のタンパク質のN末端アミノ酸配列はすべて同じ(YDYFQFTQQY)で, S3-およびS5-RNaseのN末端アミノ酸配列と一致した(S3-RNaseとS5-RNaseのN末端アミノ酸配列は同じである).以上の結果より, '豊水'のS遺伝子型はS3S5であると推測した.
著者
守谷 友紀 高井 良裕 岡田 和馬 伊藤 大雄 塩崎 雄之輔 中西 テツ 高崎 剛志
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.424-430, 2005-11-15
参考文献数
20
被引用文献数
1

セイヨウナシ(Pyrus communis L.)の自家および交雑不和合性は結実率や種子数により判定されてきたが, それらの評価は明確ではない.本研究では交雑による不和合・和合の判定方法を確立するため, セイヨウナシ10品種を用いて1花そう1花の除雄無受粉, 自家受粉および他家受粉を行い, 各品種の単為結果性, 自家不和合性および品種間の交雑不和合性を調査した.ほぼすべての品種が単為結果性を有し, 結実率による不和合・和合の識別はできなかった.しかし, 新たに提案したself-incompatibility (SI) index((評価対象の交配における交配花数当たりの充実種子数)/(和合交配における交配花数当たりの充実種子数)×100)により不和合・和合の判定が可能になった.その結果, 'グランド・チャンピオン'は部分的自家和合性であり, 他の品種は自家不和合性であることが明らかになった.有種子果実の品質は単為結果果実よりも優れており, 単為結果性を有するセイヨウナシでも安定的な良質果実の生産には和合花粉の受粉が必要でることが明らかになった.'フレミッシュ・ビューティー'と'スタークリムソン'および'バートレット'と'セニョール・デスペラン'の二つの組み合わせが交雑不和合を示した.
著者
吉田 雅夫 野村 啓一 尾崎 武 中西 テツ
出版者
神戸大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

モモ,スモモなどサクラ属果樹の類縁関係を明らかにするとともに,これらの果樹がどのように進化してきたかをRAPDマーカー法によって明らかにしようとした。本試験に供試したウメ,アンズ,スモモ,モモは農水省果樹試験場,サクラ,オウトウは山形県園芸試験場で収集,保存している品種・系統を用いた。平成4年度にはウメ,アンズ,スモモなどを供試して,この手法がサクラ属果樹の系統分類と親子鑑定に利用できることを明らかにした。平成5年度は更に品種・系統の数を増やして分析し,ウメ品種では台湾梅,小梅,中梅,大梅,杏梅,季梅の品種群に分類できること,日本のウメは中国大陸から渡来したことを明らかにした。アンズは東アジア品種群と西方品種群に大別できること,スモモは種数が多いが,ニホンスモモ品種群とヨーロッパスモモ品種群に大別できることを明らかにした。ウメ,アンズ,スモモは類縁性が高く,相互に交雑し,品種の進化に関係していることが明らかになった。モモは近縁野生種のP.miraと栽培種のP.persicaなどに分類されたが,品種・系統間の多型性は小さかった。平成6年度はサクラとオウトウの分類を試みるとともに,葉縁体DNAについても分析し,サクラ属果樹の進化について検討を加えた。サクラ属はスモモとモモの仲間,サクラとオウトウの仲間の二群に大別され,両者は古い時代に分化したものと推察された。従来よりサクラの仲間に分類されていたユスラウメとニワウメは,本試験ではスモモの仲間に属することが認められた。サクラの仲間の分類は,阪神大震災の影響で現在中断しているが,今後明らかにして行きたい。