著者
河村 フジ子 松本 睦子 金 和子 小林 彰夫
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.12, pp.1051-1056, 1989-12-05 (Released:2010-03-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1

辛味大根の味覚特性として, 辛味成分と辛味以外で味覚に関与する成分を他の大根と比覚し, 官能検査を行った結果を要約すると次のようになる.(1) 辛味大根中の辛味成分である (E) -4-メチルチオ-3-ブテニルイソチオシアネートは, 73.7mg%で, 他品種の頭部の3.4~5.2倍, 尾部の2.0~2.6倍である.(2) 辛味大根は, 他品種の各部より, 水分, 還元糖量が少なく, カルシウム, マグネシウム量が多い.(3) 他品種のおろし大根の味を比較した場合, 尾部は頭部より, 辛味, 苦味が強く, うま味, 甘味が弱い。(4) おろし辛味大根の味は, 青首大根の尾部より, 辛味, 苦味が強く, うま味, 甘味が弱い.(5) おろし辛味大根を60分放置すると, 辛味は顕著に弱くなる.(6) おろし辛味大根に食塩, しょうゆ, 食塩+食酢, 天つゆ, 三杯酢を加えると辛味が弱くなる.
著者
金 和子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.413-421, 1995-05-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
5

切り干し大根の香気形成について, 生大根と切り干し大根 (生干し, ゆで干し) の各香気濃縮物を非加熱 (エーテル振とう抽出), 加熱 (SDE法) の各条件で調製し, GC, GC-MSを用いて香気成分を検索した。さらに, 生大根, 切り干し大根, 煮熟切り干し大根の香気成分を比較し, 切り干し大根の香気形成について考察した.生大根は風乾により辛味を思わせる刺激的な生大根臭からやや刺激臭の残る乾燥大根臭へと変化するが, 成分的にはMTBelの約95%以上が消失し, メタンチオール, ジメチルスルフイド, (E) -メチルチオブテニルシアニド, 酢酸等が増加した。しかしながら, 成分的にもフレーバー的にも生大根と大差なく, また, 生干し, ゆで干し問においても差はなかった.ところが, 切り干し大根を水と共に加熱すると特有なフレーバーを生じ, 生干しと切り干しでは匂いも異なった.切り干し大根の香気成分は160以上の成分からなり, 炭化水素 (3), アルコール (14), アルデヒド (18), ケトン (10), ケトアルコール (2), エステル (2), 脂肪酸 (5), フラン (2), ピリジン (1), ピラジン (2), ピロール (1), チオフェン (4), ニトリル (9), イソチオシアナート (13), 含硫アルデヒド (5), その他の含硫化合物 (11) を同定したが, 主要成分は生大根と同様含硫化合物であった.切り干し大根臭から煮熟切り干し大根臭への香気成分の消長は, 特に含硫化合物にみられ, 生大根香気成分中95%以上を占めていたMTBelの分解生成物と思われるメタンチオールやスルフィド類, アルキルニトリル類, 熱的にやや安定な (Z, E) -MTBeNやMTBI, CH3S基の付加化合物であるメチルチオ誘導体等が煮熟切り干し大根臭の主要香気成分であった.
著者
金 和子 小林 彰夫 河村 フジ子 松本 睦子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.603-608, 1989-07-05 (Released:2010-03-10)
参考文献数
8

辛味大根と青首大根の辛味臭成分をエーテル振とう抽出により分離し, GCおよびGC-MSにより分析し, 比較した.辛味大根の香気成分は99.5%以上が含硫化合物であり, 5種のメチルチオイソチオシアネートが主要成分として同定された.なかでも, (E) -4-メチルチオ-3-ブテニルイソチオシアネートは香気中96.5% (62.7mg%) を占め, かつこの化合物は1.3ppm以上あると単独でも生大根辛味臭を呈し, 濃度の増加につれ香辛性が強化される.実際の辛味大根中における存在量は627ppmであることから, 辛味大根の辛味臭は主としてこの物質であることが明らかとなった.