著者
清水 新二 金 東洙 川野 健治 関井 友子 服部 範子 廣田 真理
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1.アルコール関連問題の一つとして位置づけられたドメスティック・バイオレンス(DV)に関する研究は、わが国で初めての試みである。それに加え、全国データが収集されたことは今後の研究のベースラインを設定するものであり、研究成果の集合的蓄積上大きな貢献と考えられる。2.実践的な実態調査が中心であったこれまでのDV研究に対して、今回の調査研究は学術的、研究的視点から実施された。その結果、(1)特にDVと過剰飲酒の相関性が明らかになったこと、ならびに(2)全国一般住民のDVの経験率はこれまでの行政を中心にしたどの全国調査よりも低い事実が判明したこと、などは大いに論争的なものであり、今後さらに展開するDV研究の第二段階開始を刺激するインパクトをもつ。3.上記の研究上のみならず、現実の問題解決に向けた対策上の示唆が明らかな形で導き出されたことも、確実な成果といえる。具体的には、(1)DVの世代連鎖に関する分析からは、16歳前の家族暴力の目撃経験、被害経験は本人のDV被害とは無関連だが、DV加害に最も強く関与していることが判明した。DVの世代的再生産を抑止する上で、現在のDV予防、介入の重要性が示唆された。また(2)臨床調査の結果からは、アルコール依存症の場合断酒が成功するとDV行為も劇的に減少する事が確認され、DVと過剰な飲酒の関連性が浮き彫りにされたのみならず、今後アルコール臨床がDVの防止、介入に有効であることが示唆された。4.国際比較の点では、日本は米国、英国などとともに行動的というよりも言葉による暴力が比較的に多く観察された。身体的暴力の自己申告ではアフリカ諸国が目立つが、アメリカは相当に高い経験率が観察されている。日本は英国、チェコ、などとともに中位の上位国に位置づけられる。アフリカ諸国では性的虐待を含めて、多くの被害体験が報告されている。また国際共同調査の観点からは20数カ国もの多国間の共同性の確保の難しさと問題点も整理された。
著者
洪 金子 関口 恵美 金 東洙
出版者
東京福祉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

平成14年度:依存症と共依存に関する文献と共依存尺度に関する収集及び、探索に重点を置きながら、共依存症者のためのグループワークプログラムの方向性を模索するため、Meadowsのワークショップに参加した。研究としては、DVの研究に重点を置いた。依存症者の環境的要因の中で、逆機能的家族と依存症との高い相関関係は多くの研究結果で証明されている。家族の逆機能は、依存症者自身への自傷をはじめ、相手に対する暴力やDVの原因であるため、当該年度は暴力をテーマとする研究に重点をおき、論文を発表した。平成15年度:主にグループワークに関わる研究に重点を置きながら、30個に達する共依存尺度を日本語に翻訳し、アンケート調査に備えた。グループワークが自我成長に及ぼす影響については、専門的社会福祉援助技術であるグループワークを通して自我の成長を促すことができるかを解明しようとした。自我成長は防御機制の変化をもって測り、未成熟防御機制はグループワークの介入が減ることによって、成熟防御機制は増えることによってその有効性を評価した。結果、特に依存症の特徴とも言える否認が減り、依存症の介入策としてのグループワークの有効性を証明した。平成16年度:研究のまとめ作業として、共依存尺度の項目を完成させ(12の下位尺度とそれぞれの下位尺度に5つの質問項目を入れ、60個の質問項目になっている)、共依存患者グループ(91名)と健常者グループ(114名)を対象として調査を行った。本研究の結果、信頼度が非常に高い独自の共依存尺度を開発することができた(総11下位尺度に53質問項目で構成される)。(Reliability Coeffcients Alpha=.9283)なお、グループワークモデルとしては目標形成モデルに基づき、目標が社会的である場合と治療的である場合の両方の関係性に分け、共依存症者に適用するプログラムを開発した。