著者
清水 新二 吉原 千賀
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.92-102, 2007-02-28 (Released:2010-02-04)
参考文献数
33

本論では全国無作為抽出代表サンプル調査によって得られた調査研究結果の分析を通じて, 家族社会学的研究からDV議論になにがフィードバックできるかを論ずる。問題解決志向性という観点からは一種の臨床家族社会学的研究ともみなせるが, より一般的には運動論や政策論と学術研究の関連性を問う性質をあわせもつ。暴力被害・加害経験の分析結果は非対称性仮説を支持せず, 世代間連鎖仮説をほぼ支持するものであった。これらの結果について, 暴力の深刻性, DV定義の外延的拡大パラドクス, 対称サンプルの差異などの観点から考察が加えられ, 学術研究および対策・政策論の双方において「市民的暴力」と「家父長支配的暴力」の類型区分の重要性が指摘された。
著者
清水 新二
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.10-1, pp.31-83,154, 1998-03-25 (Released:2010-02-04)
参考文献数
6
被引用文献数
6 5

Research on family problems in Japan during the last 25 years is thoroughly reviewed in this paper. Each decade has been characterised as follows : in the 1970s as the golden age of family pathology research, in the 1980s as the age of Maxist family problem research, and in the first half decade of the 1990s as a transitional age of family problem research.Several topics discussed in this paper include internationalization of research, the family crisis debate, problem-solving orientation, and family policy. Finally, it is concluded that the transition of research trends during the last 25 years can be phrased as from pathological and Marxist prespectives to the normalization perspective of family problem research.
著者
清水 新二 金 東洙 川野 健治 関井 友子 服部 範子 廣田 真理
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1.アルコール関連問題の一つとして位置づけられたドメスティック・バイオレンス(DV)に関する研究は、わが国で初めての試みである。それに加え、全国データが収集されたことは今後の研究のベースラインを設定するものであり、研究成果の集合的蓄積上大きな貢献と考えられる。2.実践的な実態調査が中心であったこれまでのDV研究に対して、今回の調査研究は学術的、研究的視点から実施された。その結果、(1)特にDVと過剰飲酒の相関性が明らかになったこと、ならびに(2)全国一般住民のDVの経験率はこれまでの行政を中心にしたどの全国調査よりも低い事実が判明したこと、などは大いに論争的なものであり、今後さらに展開するDV研究の第二段階開始を刺激するインパクトをもつ。3.上記の研究上のみならず、現実の問題解決に向けた対策上の示唆が明らかな形で導き出されたことも、確実な成果といえる。具体的には、(1)DVの世代連鎖に関する分析からは、16歳前の家族暴力の目撃経験、被害経験は本人のDV被害とは無関連だが、DV加害に最も強く関与していることが判明した。DVの世代的再生産を抑止する上で、現在のDV予防、介入の重要性が示唆された。また(2)臨床調査の結果からは、アルコール依存症の場合断酒が成功するとDV行為も劇的に減少する事が確認され、DVと過剰な飲酒の関連性が浮き彫りにされたのみならず、今後アルコール臨床がDVの防止、介入に有効であることが示唆された。4.国際比較の点では、日本は米国、英国などとともに行動的というよりも言葉による暴力が比較的に多く観察された。身体的暴力の自己申告ではアフリカ諸国が目立つが、アメリカは相当に高い経験率が観察されている。日本は英国、チェコ、などとともに中位の上位国に位置づけられる。アフリカ諸国では性的虐待を含めて、多くの被害体験が報告されている。また国際共同調査の観点からは20数カ国もの多国間の共同性の確保の難しさと問題点も整理された。
著者
清水 新二
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.368-370, 2001-09-30 (Released:2009-10-19)
著者
清水 新二
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.47-60, 2005-02-28 (Released:2009-08-04)
参考文献数
31

家族の多面的リアリティに即して, 「ストレス発生の場」としての “おそろしい家族”の側面と, 「ストレス緩和の場」としての家族保健機能の両面から, さらに自分物語を構築するという上での関係性の観点から, 現代家族の意義と意味を検討した。具体的データを参照しつつこの検討を通じて, なぜ夫婦/パートナー, 家族関係が人々の間で「一番大切なもの」と意識されるのかを実利的ならびに意味的観点から論じた。私事化, 高齢社会という社会的背景を考慮すると, 夫婦/パートナー, 家族がコンボイとしてなおしばらくは中核を占めることが考察された。
著者
清水 新二
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.97-104, 2001
被引用文献数
3

家族の私事化, 個別化, 個人化, 脱私事化に関する議論は, それぞれの概念を歴史的文脈に位置づける理解なしには, 混乱と不適切な使用をはびこらせ, 時に的外れな批判をもたらす。本論は日本の家族変化の歴史的流れのなかで家族の私事化の進行がもたらしたパラドキシカルな状況に注目しつつ, これらの概念を再検討し整理するものである。家族の個別化概念は日本家族の具体的な現状分析にとってより威力をもち, 家族の個人化概念はこれからの家族のありようを示し志向する概念としての重要性を増している。これらの概念の使い分けと適切な使用は, 議論の整理と生産的展開を促すことになるだろう。また実態確認的な研究をいっそうあと押しし, わが国における家族の変化を具体的に跡づけるうえで有力な手がかりとなる。