- 著者
-
原 千恵子
- 出版者
- 東京福祉大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2005
高齢者のための心理療法の開発とその実際的展開-包括的セラピーを中心として-本研究以前に4年間にわたり、高齢者施設で認知症・高齢者を対象にして包括的セラピーを実施してきた。包括セラピーは、心身にはたらきかけ、体験したものの再生や得意なことを取り入れることにより達成感、やる気をひきだし、自己効力感を得られるもので構成され、セラピストの受容的、支持的な対応の中で実施された。研究期間内にさらにセラピーの充実にむけ、実践を続けた。実施内容自体は既存の心理療法を使ったが、方法において認知症・高齢者に受け入れやすく、情緒安定、認知能力の維持、向上に貢献できるものとした。動作法、自律訓練法、芸術療法が中心であるが、対象者にあわせ工夫がなされた。動作法は、車椅子に座っていてもできるように動作を工夫し、6動作とした。自律訓練法は第2公式までとし、長期間実施した。芸術療法では、たとえばコラージュでは、会話を多く交えながら、ナラティヴメソッドによるものとした。箱庭療法では、箱庭の大きさを個別にし、ミニチュアは種類別に分類し、スタッフが運んだ。音楽療法では、高齢者にクラシック音楽鑑賞を行い、感動を色で表現してもらった。認知訓練では、百人一首を用いて「読み、書き、描く、ゲームをする」などにより脳の機能訓練を行った。結果、これまで話さなかった人が自分の思いを述べて明るくなったり、昔の思い出を箱庭に表現したり、「読み、書き、描く」に進歩が見られたなどの効果を得た。介護予防として「ケアを学び予防に生かす-元気をつらぬく」のテーマでシンポジュームを開催した。他者を援助することにより、自らの心身の健康を維持、増進することができる、という結論にいたり、6ヶ月間にわたり「傾聴ボランティア育成」を実施した。この結果については後日、まとめる予定である。