著者
金 玉実
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.332-345, 2009-07-01 (Released:2011-08-25)
参考文献数
18
被引用文献数
14 15

中国におけるアウトバウンド観光は,経済発展と規制緩和によって大きく発展しており,日本を訪れる中国人観光客も著しく増加している.本研究の目的は,日本における中国人旅行者の観光行動にみられる空間的特徴を明らかにすることである.中国の旅行会社が企画する訪日パッケージツアーの旅程を分析した結果,空間的には,東京と大阪を結ぶ中心軸が明らかになり,両都市における買物と名所見物が観光行動の中心となっている.これに,大都市近郊の温泉や火山,景勝地などを周遊する観光行動が付加されている.中国人の訪日観光に対しては,依然としてさまざまな制約が存在し,そのため,1回の旅行で多数の観光地訪問と観光体験が求められている.
著者
金 玉実
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.88, no.5, pp.514-530, 2015-09-01 (Released:2019-10-05)
参考文献数
32
被引用文献数
1 1

『狙った恋の落とし方』は,中国人が北海道道東の存在と魅力を認知し,ひいては中国人の北海道道東観光が成立するきっかけとなった中国の映画である.本研究は,この映画によって初めて中国人の団体パッケージツアーに含まれるようになった道東におけるロケ地観光の成立過程,観光客の行動の特徴,受入れ地の対応を分析することにより,地方におけるフィルムツーリズムとインバウンド観光振興の実態を明らかにした.ロケ地ツアー商品の分析からみれば,これら道東のロケ地は道東ツアーの重要な構成部分をなし,ツアーのセールスポイントでもある.しかし,アクセス条件の悪さや中国人観光客の目的地としては後進地であるなどの要因から,実際のツアー訪問者数は多くはない.斜里町を事例に行った地方の受け入れ態勢に関する調査により,中国人ツアーが地方にもたらす経済的利益は限られており,国と地方,ゲストとホストの思惑には温度差があることが明らかになった.