著者
小宮(大屋) 浩美 鈴木 啓子 石野(横井) 麗子 石村 佳代子 金城 祥教
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.21-31, 2005-05
被引用文献数
7

本研究は、精神科看護者が体験している患者による暴力的行為の種類や影響と看護者の対処について詳細に説明する質的記述的研究である。先行研究から暴力を看護者に身体的・心理的影響を与える患者による身体的・言語的・性的な行為と定義した。A精神科病院の看護師18名を対象に、患者による暴力の体験についての半構造的面接を行い、その結果を暴力の定義に基づいて分類した。対象者は、「拳骨で殴る、平手で殴る」等の身体的暴力、「脅迫、誹謗・中傷」等の言語的暴力、「抱きつく、キスしようとする」等の性的暴力を受けていた。暴力により身体的傷害を負っても、周囲にはあまり大げさに振る舞わない傾向があった。また、対象者は「患者への恐怖や怒り、ケアへの自信喪失、自己嫌悪」等の心理的影響も受けていた。これらに対し、直後は暴力被害の事実を考えないようにしたり、暴力を振るった患者に共感的に関わらないなどの回避的な対処を行っていた。暴力被害看護師へのサポートとして、感情を表出させるデイブリーフイングが有効だと言われている。しかし、今回の結果では、あえて暴力を受けた看護者の感情にふれずに見守るという周囲のサポートが行われていることが明らかになった。現状では、暴力被害を乗り越えることが被害を受けた看護者自身に任されており、教育と支援のためのシステムを検討する必要性が示唆された。
著者
金城 祥教 仲栄 真由香 Kinjo Yoshinori Nakaema Yuka 名桜大学人間健康学部看護学科
出版者
名桜大学
雑誌
名桜大学紀要 (ISSN:18824412)
巻号頁・発行日
no.19, pp.165-171, 2014

文部科学省によると,看護系大学(看護師養成課程のある学部・学科を持つ4年制大学)はここ数年,年毎に10校以上のペースで増加し1991年度には11校だった看護系大学が2012年度には203校を数えるまでになっている。一方,短大や専門学校など大学以外の養成機関は減少傾向で,短大の看護学科(3年制)を募集停止して4年制大学に看護学部を開設するところも増えている。今後,少子高齢化,情報化,医療の高度化といった社会変化の中,病院や福祉,介護現場など看護職の需要がますます高まることは確実で,看護学部・学科の新設は来年度以降も続くと言われている。一方で,教員の教育力の向上や看護師の高離職率等を改善することや,豊かな心を持った専門性の高い看護師を育成することは,看護系大学の緊急かつ重要な共通課題となってきている。文部科学省の平成21年度「大学教育充実のための戦略的大学連携支援プログラム」の公募にあたり,福岡県立大学が主幹となる『看護系大学から発信するケアリング・アイランド九州沖縄構想』が先見的広域連携の取組として評価を受けて採択された。3年間の本事業において取り組まれたプログラムを通して名桜大学における成果として一知見が得られたので報告する。
著者
鈴木 啓子 大屋 浩美 石村 佳代子 金城 祥教 吉浜 文洋
出版者
静岡県立大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的はわが国の精神科における危険防止のための看護技術を明らかにし、より安全な技術を開発することである。平成15年度の研究成果は下記のとおりである。1.わが国の護身術(柔道および空手)および取り押さえ術(刑務官による)の研修を受け、その内容について精神科看護のエキスパートと検討した。これらは日本の伝統的な武術の技が使用されているが、基本的には関節技を中心に対象者に痛みを与えることにより、行動を封じ込めるものが中心になっていた。その基本には対象者を「正常な判断能力を有しているが故意に問題を起こした者」とする見方があり、一般精神科病棟において精神的健康問題をもち危機状況にある患者に対する看護技術としては適切性が低いといえ、刑法上合法となる緊急避難の場合以外は使用すべきでないと考えられた。また、これらの技術は訓練しなければ誰でも身につけられるものではないことからも、これら攻撃型の技術を習得するよりは、緊急時に身を守る技、逃げる技などの防御型の技術を看護師は習得するほうが合理的であると考えられた。2.平成14年度に引き続き、先進的な精神科医療を提供している8施設において急性期看護経験のある看護師85人を対象としグループインタビューおよび危機状況にある患者モデルを設定した実演によるデータ収集を計12回実施した。継続的比較分析を行った結果、言語的な介入が可能な段階では看護師は患者のもてる力に働きかける言語的介入を積極的に行い、また危機がエスカレートする段階では暗黙の了解により互いの役割を引き受け隔離・拘束にあたる点が、海外の危機介入では見られない特徴だった。また強制的な治療後にも患者の側にいて寄り添い患者をねぎらうなど海外の技術に近い実践があることも明らかになった。抽出された看護技術について、より安全な危険防止のための方法を明らかにすることが、今後の課題である。